長野県佐久市に住む青木恭子さん(60)は、4年前に若年性認知症と診断された夫・修さん(66)を介護しながら、2024年10月に家族会「たんぽぽの会」を設立した。若年性認知症特有の不安や悩みを共有し、同じ境遇の人々が前を向いて歩んでいけるよう支援する活動を始めている。恭子さんは「認知症とともに生きることができるんだと、皆さんに知っていただきたい」と語る。
10年ほど前から異変
青木夫妻は歯科医で、共に医院を営んできた。
料理好きだった修さんだが、10年ほど前から異変が見られるようになった。

恭子さんは「料理の大好きな夫が、いつも作ってくれるものを『作ったことない』とか『食べたことない』とか言ったことが一番のきっかけでした」と振り返る。
62歳で前頭側頭葉変性症
4年前、脳ドックを受けた修さんは前頭側頭葉変性症と診断された。当時62歳で、65歳未満は若年性認知症に分類される。

恭子さんは「まったく知らない病気だったのでびっくりしました。『治りません、治療も薬もありません』と言われました」と当時の衝撃を語る。
「みんなそうだよ」の言葉
不安を募らせた恭子さんは、東京の家族会の活動にオンラインで参加するようになった。

「ちょっと良くなったかなって思った時に、次の日また忘れていると、すごくがっかりしちゃって。でも家族会の方たちには『みんなそうだよ』って言っていただいて、全くの暗闇が、少しは見えるようになって」と、同じ経験を持つ人々との交流が支えになったと話す。
2025年夏、横岳登山が目標
修さんは現在、介護認定は「1」。恭子さんの仕事中は警備会社の見守りサービスを受け、できることをして過ごしている。
ピアノや登山、サイクリングなど、好きなことの一部は覚えている。

恭子さんは「2025年夏、修さんが大好きな横岳に一緒に登るのが目標です」と語る。
できることを喜ぶように
「できなくなっちゃったことを悲しく思う時期もあったんですけど、できていることをうんと喜んだり、お礼を言ったりするように変わりました」と恭子さん。

この前向きな姿勢は、同じ経験を持つ家族との交流があったからこそ得られたものだという。
若年性特有の悩み共有
若年性認知症の家族は、介護の長期化や仕事との両立など、高齢者の場合とは異なる悩みがある。

恭子さんは「経済的な問題が大きくのしかかってきたり、この先、いつでもそばについていなければならないのか、そういう心配はあります」と話す。
「葛藤を話せた」
家族会が開く「たんぽぽカフェ」には、当事者やその家族、サポーター、保健師なども参加する。

ある参加者は「自分の心の葛藤を話せたのは初めて。自分の気持ちはしっかり持たなきゃいけないんだけど、気を抜いてやってもいいかなって思えた」と語った。
「たんぽぽ」のように
恭子さんは会の名前に「たんぽぽ」を選んだ理由について「どんな状況でも咲きますし、固い地面とかでも根付くし、広がりを持つ。私たちの草の根の活動が広がってほしいと願いを込めた」と説明する。

青木さんは悩みを抱え込まず、気軽に参加してほしいと呼びかけている。
(長野放送)