イベントや役職が面倒などと、近年、全国的に加入者が減少しています。こうした中、自治会が管理する「ごみ集積所」を非加入者が利用するのは「不公平だ」という声も上がるなど一部でトラブルになるケースも出てきています。そもそも自治会は必要なのか。今後の地域コミュニティーの在り方は?取材しました。

■自治会への加入者は年々減少

「自治会」どう思いますか?

加入者(80代):
「地域のイベントもあるし、決まり事も、お手伝いすることもあるから、入っていないとまずい」

加入者(70代):
「地域の中の区長とか公民館長とか役員やってる。一人住まいのじいちゃん、ばあちゃんがいるし、必要だと思います」

非加入者(20代):
「(自治会入っている?)入っていないです。面倒、入るメリットもあまりわからない、やることが増えるだけな感じがして」

非加入者(20代):
「(自治会の)仕事が多そうで、仕事と両立するのが難しそうってイメージ。(入れとなったら)僕は『めんどくさい』が勝っちゃいます」

「自治会」(町内会)は地域住民が自主的に作る組織。2021年時点で、全国に約29万あり、回覧板での情報共有、ごみ集積所の管理・清掃、地域のイベントなどを担っています。運営のため加入者は「会費」を払います。

ただ、加入者は年々減少しています。世帯加入率は2010年、78%でしたが、2021年には71.8%まで低下しました。

■「面倒くさい」「忙しい」などが理由

地方自治の専門家はー

長野県立大グローバルマネジメント学部・田村秀教授:
「強制ということではないものですから、面倒くさいとか、町内会費が取られることに対する抵抗感とか、なかなか平日にいない、忙しいとかさまざまな理由」

地方自治などが専門の長野県立大の田村教授は働き方の多様化やシニア世代も働く人が増えたことなども要因の一つとしています。

田村秀教授:
「普段のつながりというのが、いざという時に非常に有効になりますし、お祭りですとかさまざまな住民の連携とか、そういうものも希薄になっていく。自治会の関係者の方々は非常に危惧されている」

■若い世代が入らないケースが多く

長野県内も―。

岡谷市も加入者は減少傾向。特に若い世代が入らないケースが多いということです。
そこで、市は2025年、加入を促すパンフレットを新たに作りました。自治会関係者が市に要望したということです。

岡谷市区長会・横内由和会長:
「単刀直入に言うと、区費の減収。区費がそれだけ入らない。財源がなくなれば、出せるお金が少なくなる。いろんなやっていることを縮小しなければいけない」

これまでもパンフレットはありましたが、具体的な活動内容などは載っていませんでした。そこで、今回は自治会費の用途や、防災や防犯の面で助け合いにつながることなど加入のメリットについて詳しく記載しました。

転入してきた世帯へ直接配布しているほか、回覧板でも回し、加入者からも声かけをしてほしいと呼びかけています。

岡谷市区長会・横内由和会長:
「何かあった場合、隣同士がうまく密接にいないと、『あの家には確かお年寄りがいた』とか、そういうことができなくなっちゃう。私はそういうこところに危機感を持っています」

■「ごみ集積所」の利用を巡り…

近年、全国的にも課題となっているのが「ごみ集積所」です。

基本的に地域のごみ集積所は自治会が管理。加入者が「当番」などを担当しています。設置費用を負担している場合もあります。負担しない「非加入者」が利用することに「加入者」から不公平との声があがっているのです。

実際、利用をめぐり各地で裁判にも発展しています。

街の声は―。

加入者(30代):
「自治会に入っている人はお金を払って、さらに当番でごみ捨て場を守る役割をしているので、そこにお世話になる以上はルールにのっとるべきだと」

加入者(40代):
「よくないですよね。(ごみ問題は)ありますからね、自分の隣組でも。不法投棄もすごいし、無責任じゃないですか」

自治会非加入者は―。

非加入者(20代):
「しっかりやっている人からすると(不公平だと)思われてしまうのも仕方がないのかなと思いつつ、そこを意識できていなかったなと」

非加入者(20代):
「不公平って言うのはわかるんですけど、入っていない人が捨てなかったら、その人の家にごみがたまって、周りにも迷惑がかかるって部分も考えると、それは不公平じゃないのかなって思う。(ごみ袋代として)お金を出しているんだから、捨てるのは普通じゃないかと思う」

■非加入者の利用は「不公平だ」

上田市では―。

上田市では10月、この問題について市と自治会連合会が議論しました。

上田市環境部・若林昭さん:
「集積所の設置にあたり設置費用を負担していない非加入者が利用することに関して、不公平感があるとご意見をいただきました」

加入者から費用を集め約40万円かけて「集積所」を設置した自治会や分別のルールを守らない非加入者がいる自治会から特に強い不満があがったということです。


■非加入者の利用の拒否は難しい…

では、自治会側が非加入者の利用を拒否する権利はあるのでしょうか?

市などによりますと、基本的に「ごみの処理」は行政サービスの一環で、税金を払っている以上、なかなか難しいということです。

長野県立大の田村教授は自治会ごとにルールを設けることも解決策の一つだと言います。

長野県立大グローバルマネジメント学部・田村秀教授:
「(使用を)拒否するということ自体、非常に問題がある。(一方、自治会に)入ってないけど自分は捨てたいっていうのはある意味『タダ乗り』『フリーライダー』みたいなところになるので、(非加入者も)何らかの費用は払うというのが本来、現実的。管理する人たちの手間、コストとのバランスが必要」


■「非加入者用の集積所」検討方針

一方、上田市と自治会連合会の議論の中では「行政が管理すれば」という意見も出たということです。ただ、現在の職員数では市内に約4000カ所あるすべてを管理するのは難しいということです。

議論の結果、市は「非加入者用の集積所」を試験的に設けることを検討する方針を自治会側に伝えました。

上田市環境部・若林昭さん:
「非加入者が出されていた自治会内の集積所から非加入者専用の集積所への利用が促されることが考えられます」

ただ、この方法で「不公平感」が拭えるかは分かりません。また、さらなる問題も懸念されます。

若林さん:
「非加入者専用の集積所を設置することにより自治会を脱会される方も発生するのではないかという可能性も懸念される。まずはスモールスタート、試験ですので、ごく少数で始めて効果を検証」

上田市は今後、実態把握のためアンケート調査を行い対応を検討していくことにしています。

■時代や地域にあった「自治会」を

住民自らが地域を守る協同組織「自治会」。加入は強制ではありません。生活スタイルや考え方の変化。田村教授は時代や地域の実態に沿った「在り方」をアップデートしていくことが必要だと話します。

長野県立大グローバルマネジメント学部・田村秀教授:
「長い目で見て防災とか防犯とか地域の人たちがつながっているということは、決して悪いことじゃないと、多くの人が考えてくれるといいんじゃないか。各地域によって状況違いますから、地域にあったものを自治会の関係者、住民の皆さん、そしてそれぞれ市町村が考えてくしかない」

長野放送
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