「事件当日の30日朝、平岩と2人で本郷郵便局前から白い車で現場に向かいました。アクロシティ周辺に着き、車の中にいると自転車に乗った若い制服の警察官が私に声をかけてきました。私は『本富士署の者です』と言って警察手帳と築地署特捜本部と書かれた名刺を渡しました」

まだこうした話が捜査線上に上がらず眠っているのか。
この新しい話に石室らの心は揺れた。
裏付けさえ取れれば、Xと教団の関与を物語る秘密の暴露に準ずる話に思えた。
しかし翌5月3日、Xはこの話にも微修正をかけてくる。この件は犯行当日のことではなく27日の下見の時のことであると話を変え、以下の様に供述した。
「仕事で張込みをしています」
「長官事件の数日前、27日の朝方に平岩聡(オウム信者・仮名)の運転で、井上嘉浩が助手席に乗って犯行現場の下見をした時です。朝モヤがかかった午前6時すぎ、クリスマスツリーに似た木があるところで車を右側駐車で停めて待機していると、前の方(アクロシティの方)から自転車に乗った警察官が来て『何をしているのですか?』と職務質問を受けたんです。
私は『仕事で張り込みをしています』と答えて、その際に警察手帳と本富士署所属の自分の名刺を出したんです。警察官は『わかりました』と言ってその場を去って行きました」
名刺を出した?石室は胡散臭さを感じる。