「推し活」に興味はおありだろうか。自分にとってイチオシの人やキャラクターを応援する活動「推し活」、対象はアイドルや俳優、アニメのキャラクターなど様々だ。若い人がするというイメージがあるかもしれない「推し活」、高齢の人でも楽しむ人が増えているようだ。専門家も年齢を重ねた心や体を活性化すると話す。

グッズに傷がつくのもNG 推しがいて「本当に幸せ」

2021年新語・流行語大賞にノミネートされ、広く認識されてきた「推し活」。鹿児島の街頭で「推し活」をしているか聞いてみた。

制服を着た女子生徒は「二次元のHoneyWorksのLIP×LIPの染谷勇次郎さん」推しなのだとか。「グッズは傷つけたくないから、持ち歩けなくて。飾れもしなくて、大切にしまってます」と笑う。

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別の若い男性に聞くと、推しは「仮面ライダー」で、「過去が壮絶なのと、変身シーンがかっこよかった」と好きになったきっかけを話してくれた。変身アイテムなどを集めているそうだ。

「Stray Kidsっていうグループを推している」と言う若い女性は、「推し活で、本当に幸せを感じる」と目を輝かせた。

「推し活」中の高齢者が身近にいると6人に1人が回答

若者中心の活動のような印象があるが、最近「推し活」にハマる高齢者が増えていると耳にした。

そこで鹿児島テレビでは2024年11月、自社のKTSアプリを使って「推し活」に関するアンケートを行った。回答があったのは、645人。

その中で、周りに「推し活」をしている高齢者はいるか?という質問に、「はい」と答えたのは、114人だった。つまり、6人に1人が、「推し活」をする高齢者が、近くにいると回答したことになる。

プロバレーボールの試合に高齢者のファンが集合

さっそく、実態を調査してみた。やってきたのはいちき串木野市。

地元のVリーグチーム・フラーゴラッド鹿児島のホーム戦の会場だ。フラーゴラッド鹿児島は、鹿児島市に隣接する日置市がホームタウンで、地域密着を掲げ活動するプロの男子バレーボールチーム。

2023-2024シーズン、当時V3リーグ参入1年目でいきなり優勝し、現在は「Vリーグ」に参戦している。地元の高齢者の口コミが仲間を呼び、今では観戦者の約3割が65歳以上の高齢者だという。

「応援に来るのはこれで6回目!」という83歳の女性は、同世代の3人で観戦に来ていた。館内は、うちわやスティックバルーンなどを手にしたファンの姿が目立つ。

試合中の会場は熱気を帯びていた。選手の一挙手一投足が注目される。展開が変わるたびに、歓声が上がり、拍手が起こる。会場は、えも言われぬ一体感に包まれていた。観戦に訪れた人たちは、声を出して選手を鼓舞したり、大きなため息をついたり、手をたたいて喜んだり。心の底から試合を楽しんでいる様子だった。

好きなグループとの出合い 今までとは違う自分

アイドルグループのメンバーにハマっているという薩摩川内市の69歳の女性を訪ねた。二木和子さんは2020年1月にデビューした「Snow Man」のファンだ。

部屋にはグッズがいっぱい!推し活を始めたきっかけは、コロナ禍で見た「Snow Man」の番組だった。「この人たち、いい!」と感じた二木さん、2日目には9人のメンバーを覚えていて、自分で驚いたそう。「私、興味あるじゃん!」と少女のような屈託ない笑顔で語った。

そんな母の姿を見た息子たちの勧めで戸惑いながらもファンクラブに入った二木さん、一番の「推し」は、ファンの間で舘様(だてさま)と呼ばれている、宮舘涼太さん。過去のライブ映像で、“編み編み”のタンクトップに厚い胸板の姿を見て「私、こういう人がいい!って思った。」と頬を赤らめた。

二木さんがここまでアーティストにハマるのは初めて。11月には福岡で行われたドームツアーに1人で出かけた。服装はもちろん、宮舘さんのメンバーカラーの赤!

応援のペンライトはリーダーの岩本照さんのメンバーカラーである黄色用、宮舘さんの赤用に2本、そしてうちわを2つ購入。両手で持ちきれないが「よく考えたら(一度に全部は)持てないのに、おバカやん!?」と、はしゃいだ様子。Snow Man愛いっぱいのトークは止まらなかった。

さらに「いろんな情報を集めたいから、インスタグラムやXを覚えました」表情からは、毎日が楽しく充実している様子がうかがえる。

「推し活」で人とつながり 高齢者の身体や心が満たされる

「高齢者の推し活と幸福度の関係性」を研究するサントリーウエルネス生命科学研究所・森田賢研究員に、「推し活」が高齢者にもたらす効果について聞いた。

「推し活」が高齢者の行動を活性化してくれると考えているという森田さん。「人とつながる量が増える。つながりの質も高まっていく。その中で自分の役割ができたりする。」とその効果を語る。

そして、「心がワクワクする楽しい時間によって、高齢者が身体も心も満たされる状態」を「推し活」が提供してくれるのではと、期待を口にした。

人生100年といわれる現代。日常の中で幸福だと思える時間は、できるだけ多い方がよい。自分以外のモノや人を応援することが与えてくれる幸せ。そんな価値観で残りの人生を楽しむのも、なかなか良いのではないか。

推し活は、高齢者にとっても、生きがいや生活にハリをもたらす、魔法のような存在なのかもしれない。

(鹿児島テレビ)

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