泊まり込みの取り調べ

あっという間に日が沈んで夜になり、夜もふけた。

気がついたら深夜になり、Xの寮は歩いてすぐのところにあったが、4人一緒に泊まり込む日が数日続く。

この数日の経緯について、栢木らは取り調べが夜遅くなって、帰宅するための終電もなくなり、Xも反対しなかったことから自然に一緒に泊まるようになってしまったと振り返る。

供述調書には「Xの承諾の下に捜査員と生活を共にし」との記述が
供述調書には「Xの承諾の下に捜査員と生活を共にし」との記述が

こうした泊まり込みが後々、大問題になるとは3人は不覚にも想像していなかった。

「X巡査長を軟禁状態にして半ば強制的に供述を引き出した違法捜査である」と指弾されることになるのだ。

客観的に任意に見えない環境で、かつ「一切の供述の裏付けを取らせない」という異常なやり方で、Xの取り調べは際限なく続いていくのである。

【秘録】警察庁長官銃撃事件16に続く

1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。

上法玄
上法玄

フジテレビ解説委員。
ワシントン特派員、警視庁キャップを歴任。警視庁、警察庁など警察を通算14年担当。その他、宮内庁、厚生労働省、政治部デスク、防衛省を担当し、皇室、新型インフルエンザ感染拡大や医療問題、東日本大震災、安全保障問題を取材。 2011年から2015年までワシントン特派員。米大統領選、議会、国務省、国防総省を取材。