「軽い気持ちで入信しました」
「なんでオウムに入信したんだ?」
「子どもの頃から神秘的な現象や超能力現象に興味を持っていました。
気功や座禅を習いたいと思っていたところ、警察官になって体調がすぐれず、ヨーガでもやろうかと思っていました。そんな時にオウムの存在を知ったんです」

「巡査拝命直後の1988年4月に世田谷道場に行き面接を受け、その日のうちに軽い気持ちで入信しました。修行の指導者は島田理恵子(仮名)さん、井上嘉浩さんと平岩聡(仮名)さんで、休みには道場に通い、説法会には積極的に参加しました」
「軽い気持ちで?そういうものか。危険な団体だという気持ちにはならなかったの?」と石室は不思議がった。
「指導してくれた島田さんがヨーガをやっているので、彼女に会うのが楽しみで行っていました」。Xは少しはにかむ。
島田理恵子は教団内の階級が「正悟師」で幹部である。
前にも触れたが、島田は長官事件直前の3月27日、六本木のホテル「アイビス」を実名で予約していた人物だ。
入信間もないX巡査長の指導を教団幹部の島田が担当していた。X巡査長は、この島田への思慕から教団への帰依を深めていったとみられている。

案外単純な理由だ。石室は思った。教団内での男女の交わりは「破戒」とされ、本来ご法度である。そんな浮ついた気持ちで入っていった奴が長官銃撃事件に関与するまでになったというのか。