目撃者の男性は署長公舎の近くに住んでおり、その家が署長公舎であり、日々、異常がないか警察官が巡回に来ることも子供の時から知っていた。

そのため、腰をかがめるようにして公舎を中腰でのぞき込んでいた見知らぬ男に、「おかしなことをしているな」とすぐに不審に思ったという。

男性は公舎をのぞき込んでいる男と10メートルくらいの距離まで近づくと、男は顔を背けるようにして体を回し、路地の方へと歩いて行った。

男性は男の後をつけた。

男はゆっくりとした足取りで日光街道の方に歩いて行った。男性は男をつけて数10メートル歩いたところで、男との距離50センチくらいで右側から追い抜きざまに男の顔を見ようとした。

すると男は左側に顔を向け、横を向いてしまった。

端本悟元死刑囚
端本悟元死刑囚

男は元来た道の方へ引き返すように歩いて行ったという。

この男について目撃者の男性は、オウム真理教の信者で、後に死刑判決を受け執行された端本悟であると証言した。

【秘録】警察庁長官銃撃事件7に続く

【編集部注】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。

上法玄
上法玄

フジテレビ解説委員。
ワシントン特派員、警視庁キャップを歴任。警視庁、警察庁など警察を通算14年担当。その他、宮内庁、厚生労働省、政治部デスク、防衛省を担当し、皇室、新型インフルエンザ感染拡大や医療問題、東日本大震災、安全保障問題を取材。 2011年から2015年までワシントン特派員。米大統領選、議会、国務省、国防総省を取材。