2021年11月に新潟市の自宅で妻と娘を殺害した罪などに問われている男の裁判が新潟地裁で開かれている。10月30日は証人尋問が行われ、事件前の2021年2月に男の妻を診察した医師や妻が交通事故を起こした際に事故を目撃した警察官など3人が証言台に立った。
証人尋問①妻・春香さんの診察時に“違和感を感じた”男性医師
殺人と殺人未遂・殺人予備・窃盗の4つの罪に問われている新潟市南区の元看護師・渡辺健被告(31)。
この記事の画像(8枚)起訴状などによると、渡辺被告は2021年11月、新潟市南区の自宅で、妻・春香さん(29)と娘・純ちゃん(1)の首をロープで締め付け、自殺を装い殺害した罪のほか、2021年3月に睡眠薬の入った飲料を春香さんに飲ませて、車を運転させ、事故を起こして殺害しようとした罪にも問われている。
10月30日の証人尋問で証言台に立ったのは、2021年2月24日に春香さんを診察した新潟市急患診療センターの医師の男性だ。
検察側は2021年2月にも渡辺被告が春香さんに睡眠薬を飲ませていたと指摘。
男性医師によると、春香さんは当時「頭が痛い、吐き気がする」と訴え、渡辺被告とともに午前1時半過ぎ病院を受診したが、診察時にはすでにその症状は治まっていたという。
一方で、男性医師はある違和感を感じていた。
検察側:
春香さんは当時どんな様子だったか?
男性医師:
意識はあまりはっきりとはしていなかった。目は開いているが非常に眠そうで、問いかけに対してもスラスラと言葉が出て来ず、ゆっくり話していた。呂律も回っていなかった
男性医師は春香さんが訴えていたという頭痛や吐き気・強い眠気のほか、尿失禁の症状もあったことから“てんかん発作”を疑った。
検察側:
なぜ、てんかん発作を疑ったのか?
男性医師:
てんかん発作でエネルギーを消費してしまったため、尿失禁をしてしまうほどの強い眠気があったと推測した
検察側:
睡眠薬を飲んだ可能性は考えなかったか?
男性医師:
睡眠薬を服用した可能性は考えなかった。授乳中の人が薬を飲むことは考えなかった
一方で、男性医師は当時を振り返り、春香さんの症状と睡眠薬の薬効に“矛盾はない”とも話した。
証人尋問②交通事故を目撃していた警察官
2021年3月、春香さんは渡辺被告が自宅で提供してきた睡眠薬入りの飲料を飲み、その後、新潟市南区の広域農道で娘の純ちゃんを乗せて2人で車を走らせていた際に道路脇のポールに衝突する交通事故を起こしている。
証人尋問で次に証言台に立ったのは当時、春香さんが運転する車のすぐ後ろを走っていた男性警察官だ。
男性警察官は当時、新潟市中央区の新潟警察署に勤務していて、事故現場に遭遇した時は勤務を終えて帰宅途中であった。
検察側:
事故現場はどんな場所か?
男性警察官:
両側が田んぼで見通しの良い直線道路
検察側:
車通りは多いか?
男性警察官:
当時は対向車はなく、私の車も事故を起こした車両も法定速度である60kmを守って走っていた
検察側:
事故車両はどんな様子だった?
男性警察官:
道路の左側にそれるような挙動を10回程度していて、設置されていたガードレールにぶつかりそうになりながら、また走行車線に戻ってきていた。居眠り運転だと思って、事故に巻き込まれるのが怖くなり、車間距離を空けて走っていた
検察側:
春香さんの車はその後どうなった?
男性警察官:
土でできたのり面に突っ込んだ。私はすぐに救助に向かって、運転席側のドアを開け、小さい子どもと渡辺さんを引っ張り出した
検察側:
渡辺さんは救出時どんな様子だった?
男性警察官:
「ケガはありませんか?」と2~3回聞いたあと、やっと「大丈夫です」と返答があった。その後も「救急車を呼びますか?」など問いかけたが、2~3回同じことを聞いてやっと答える感じ。反応は鈍く、痛さと眠気が混ざったような表情をしていた
検察側:
消防や警察に通報はしなかったか?
男性警察官:
春香さんに目立った外傷はなく、救助後も自力で立てていて、本人も「ケガはありません。救急車はいりません」と話していたため消防には通報しなかった。110番通報は春香さん自ら行ったが、場所の説明を上手くできていない様子だったので、私が代わりに説明した
証人尋問③事故後にやりとりした警察官
続いて証言台に立ったのは、その110番通報を受け現場に臨場した、当時新潟市南区にある新潟南警察署に勤務していた男性警察官だ。
この男性警察官も他の証人と同様、渡辺被告の妻・春香さんの言動に違和感を覚えていた。
検察側:
あなたは現場に着いて何をしたか?
男性警察官:
春香さんに事故の当事者かどうか確認した。その後、事故を起こした原因を5~6回聞いたが、「どうなんですかね」「わからない」といったことを繰り返していて、話す速度も遅かった
検察側:
春香さんの様子を見てどう思ったか?
男性警察官:
一緒に現場の状況も確認したが、自分で起こした事故なのに終始「わからない」や「どうなんですかね」という発言を繰り返していて、おかしいと思ったし、イライラもした。一方で、“どん”という音を聞いて自分が事故を起こしたことに気が付いたとも話していたので、居眠り運転だと思った
検察側:
なぜ、春香さんは現場を走っていたのか?
男性警察官:
十日町あたりにある実家に帰るところだったと言っていた。ただ、通常であれば高速道路を使うか、8号線をずっと南下するはずなのでおかしいと感じた。また、事故を起こしたことを認識できておらず、目もうつろだったため、春香さんには運転は無理だと判断し、「レッカーを呼んでください」と伝え、その場を離れた
一方、弁護側は「借金返済のための金を無断で妻の口座から流用していて、妻が銀行などに行けないよう、睡眠薬入りの飲料を提供した」などと主張している。
3人の証人尋問を、終始まっすぐ見つめ聞いていた渡辺被告。裁判は11月12日に結審し、11月22日に判決が言い渡される。
(NST新潟総合テレビ)