2021年11月に新潟市の自宅で妻と娘を殺害した罪などに問われている男の裁判が新潟地裁で開かれている。10月31日には2回目の証人尋問が行われ、殺害された妻の母親が証言台に立ち、春香さんが睡眠薬が入った飲料を飲まされて事故を起こした時の「違和感」について語った。

殺害された妻・春香さんの母親が出廷

殺人と殺人未遂・殺人予備・窃盗の4つの罪に問われている新潟市南区の元看護師・渡辺健被告(31)。

渡辺健 被告(インスタグラムより)
渡辺健 被告(インスタグラムより)
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起訴状などによると、渡辺被告は2021年11月、新潟市南区の自宅で、妻・春香さん(29)と娘・純ちゃん(1)の首をロープで締め付け、自殺を装い殺害した罪のほか、2021年3月に睡眠薬の入った飲料を春香さんに飲ませて、車を運転させ、事故を起こして殺害しようとした罪にも問われている。

31日の裁判には、春香さんの母親が証人として出廷した。

母親が最初に春香さんに違和感を感じたのが、2021年2月24日。春香さん本人から電話で「夜に布団で気絶し、入院した。病院に健さん(渡辺被告)が運んでくれたが、覚えていない」と伝えられた。

母親は当時、日々の育児疲れやストレスによる症状だと考え、心配はしたものの、大事とは思っていなかったという。

そして、その約1カ月後の3月29日、母親のもとに春香さんから1通のメッセージが届く。

検察側:
どのようなメッセージだったか?

母親:
春香から「自分の口座からお金が無くなっているが、何か知らないか?」と聞かれた

メッセージを見て、母親はすぐに春香さんに電話をかけて経緯を確認。銀行に行くようにアドバイスした。

母親:
春香からは「銀行に行ってみる」との返答があった

検察側:
そのあとはどうしたか?

母親:
銀行でのやり取りがとにかく気になって、2時間後くらいに電話をかけた

検察側:
春香さんは何と言っていた?

母親:
「銀行の人が防犯カメラの映像を見て、“旦那さん(渡辺被告)に似た人がお金を引き出している”と伝えられた」と言っていた。ただ、春香自身は防犯カメラの映像を見せてもらうことができす、渡辺被告がやったと確信できなかったようだ

春香さんは銀行を出て、渡辺被告に直接電話をかけたというが、渡辺被告は現金を引き出したことを否定。しかし、その後…

母親:
健さん(渡辺被告)との詳細なやり取りまではわからないが、春香から「健さんが犯人だった」、「支度をして魚沼の実家に帰ろうかな」というメッセージが来た

検察側:
それを聞いてあなたはどうしたか?

母親:
電話をかけて「帰ってきてもいいが、運転には気を付けて」と言った

検察側:
春香さんの話し方に変化はあったか?

母親:
怒ってはいたが、話し方は変わらない

「実家に帰る」と伝えた後に交通事故

母親によると、この電話の後、春香さんへのLINEや電話がつながらなくなったという。この間に春香さんは新潟市南区引越の広域農道でポールに衝突する事故を起こす。

春香さんが交通事故を起こした現場(新潟市南区 ・2022年)
春香さんが交通事故を起こした現場(新潟市南区 ・2022年)

母親:
やっと電話がつながった時、春香は「新潟市内で事故を起したが、通りがかった人が助けてくれた」、「純(娘)も乗っていたが、チャイルドシートのおかげで無傷だった」と話していた

検察側:
その時の春香さんの様子は?

母親:
何か考えて話している感じではあったが、普段と比べて特に変わった様子はなかった

そして午後10時ごろ、母親のもとに春香さんから「警察の事故処理が全部終わった」との連絡が届く。

母親:
私はこの時間から実家のある魚沼に向かうと、夜遅くに到着することになり、心配だったため、きょうは新潟市内の自宅に戻りなさいと伝えた

検察側:
それを聞いた春香さんの反応は?

母親:
どうしても魚沼の実家に帰りたいと泣きながら訴えてきた。春香は小さいときから泣きながら何かを伝えることはなかったので、びっくりした。一人では危ないと感じたので、健さん(渡辺被告)に連絡して一緒に来なさいと伝えた

検察側:
春香さんはその後どうしたか?

母親:
翌日の午前0時ごろ、魚沼の実家に来た。健さんに抱えられていて、1人では立てない状態、汗もびっしょりとかいていた。靴を履かせたまま布団まで運び、着替えさせると、春香は朝まで寝ていた

検察側:
朝起きた時の春香さんの様子に変化は?

母親:
普段と変わった様子はなかったが、「また、てんかん発作が出たのかもしれない」と言っていた

母親が感じた娘の“違和感”

2月にてんかん発作の疑いで入院していた春香さん。

母親は、そのわずか1カ月後に交通事故を起こし、事故の処理が終わった直後の電話で取り乱したり、実家に到着した際も体調が悪そうにするなど、春香さんに対して、これまでにない“違和感”を抱いていたという。

その違和感は春香さんが交通事故を起こした直後、110番通報した際の警察官とのやり取りを録音したデータにも残されていた。

検察側:
110番通報を聞いたときはどういう印象だったか?

母親:
フワフワした感じで質問も耳に入っていないようだった。春香が運転する車が突っ込んで壊したポールの反射板についても、意味が分かっておらず、それについて聞かれても「反射板?」と聞き返していて、話がかみ合っていなかった。へらへらして半笑いで、ふざけているようだった

検察側:
普段とは違う?

母親:
普段は比較的早口で、面白おかしく話す子だった

一方、弁護側は「借金返済のための金を無断で妻の口座から流用していて、妻が銀行などに行けないよう、睡眠薬入りの飲料を提供した」などと主張している。

母親の言葉一つ一つをまっすぐ前を見つめ聞いていた渡辺被告。証人尋問は11月8日まで続く予定だ。

(NST新潟総合テレビ)

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