2025年春に卒業する高校生の就職活動が真っ只中だが、広島県の求人倍率は4.65倍と全国平均の3.7倍を大きく上回っている。企業は人手不足で高卒の採用にも力を入れるが、その反面で、就職後3年間の離職率が4割近くとミスマッチが多いことが課題となっている。そんなミスマッチを防ごうという就職イベントを取材した。
高卒生の就職は短期決戦
高卒生の採用選考は9月16日からとなっており、大卒に比べ短期決戦となっている。高校の進路指導の先生からは、複数の会社を調べる時間的な余裕がなく、求人票を見るだけだとどんな会社なのかイメージがわきにくいという声がかねてからあった。

そんな事情もあり、全国の高卒生の就職後3年間の離職率は37%と10人に4人近くが最初の職場を離れてしまう。そんな就職のミスマッチを減らそうと、仕事内容をあらかじめ体験してもらう、ユニークな企業紹介イベントが開かれた。

広島市内で開かれた高校生を対象にした合同就職説明会には、様々な業種、17の企業がブースを出展した。70歳代の従業員が大半で新しい人材が入ってこないという「左官業」の会社は、実際に壁を塗ってもらう仕事の体験コーナーを準備。

中野工業所・中野盛治社長:
体験に来てもらった生徒さんに実際に壁を塗ってもらう。1人でも興味をもってもらって弊社に入ってくれたらうれしいです。

瓦の会社のブースでは、屋根に瓦を止める屋根職人の釘打ち体験が行われていた。
サービス業は、仕事を体験してもらうことが難しいが、こんなアピール方法で学生にアプローチ。

フレッシュ青果 人事部採用課・長祐介さん:
新しくお好み焼きの店を出すので、看板メニューを考えている。お好み焼きの上にかけるもので何かおすすめみたいなものはない?
高校生:
キュウリ。
長祐介さん:
キュウリをどうかけますか?
高校生:
スライスして、シャキシャキ食感で。
長祐介さん:
斬新ですね。
営業担当者のセールスの場面を再現して体験してもらうという趣向だ。
求人票だけで就職先を決める
このように就活生の「体験」を重視するのは、会社や仕事の内容を知ってもらいたいという企業サイドの思いのほかに、学校や生徒側にも大きな理由がある。

日本ウェルネス高校・広島キャンパス・細田丈博教諭:
ある程度こちらでピックアップした求人票を生徒たちに見せるという形でやっています。

高校生の就職活動は、夏休みが終わってから始まる期間の短さに加えて、大学生の就活と大きく違って、求人票の段階で絞り込んで行うため、学校にも生徒にも、企業との出会いの機会が少ないことが、大きな課題だった。

舟入商業高等専門学校・新納優子先生:
何社も見学に行く時間的な余裕はないので、1社見学して、その会社を受けたらおしまいという生徒も多い。
つまり、時間的にも、求人票の数的にも、多くの企業の中から選ぶ余裕がないということだ。
3年間で10人に4人近くがやめる

厚生労働省が発表したデータによると、2020年3月に卒業、就職した高校生の離職率は、1年目が15.1%。その後、毎年約10%、3年間では37%、10人に4人近くが辞めている。

舟入商業高等専門学校・新納優子先生:
やっぱり、働いてみて思っていたのと違う、こんな仕事だと思わなかったということはよくあります。
体験型就活イベントには、このミスマッチを解決しようという狙いがある。

イベントを企画したジンジブ・岡村大河広島支店長:
今まで多くの企業を比較できず、求人票だけでしか就職先を見つけることができなかった生徒からすると、より企業や仕事の内容がわかった上で入社を決めることで、定着率が高くなることにつながっていくと思う。
より多くの企業が仕事内容をリアルに紹介し、生徒が求人票には書かれていない情報を知ることが、就職のミスマッチを防ぐことになる。

舟入商業高等専門学校・新納優子先生:
こういうイベントが増えてくれれば、よいと思う。学校ができないことをしてくれるので、とてもありがたい。

参加した生徒:
地域に関われる仕事がいいかなと思う。細かいところまでは分からないのですけど。
人手不足を背景に、今、高校生の就活が、徐々に変わり始めている。大学生と全く同じでなくても、高校生が時間的に余裕をもって、多くの企業や団体の中から就職先を選べる体制やシステムの構築が求められている。
(テレビ新広島)