能登半島地震以降、地元能登町の住民を勇気づけてきた能登高校書道部。しかし今、部は存続の危機を迎えている。唯一の部員となった生徒の思いを取材した。

憧れの書道パフォーマンスができない

広い武道場で1人筆を取る生徒がいる。能登高校書道部の太田結葉さん、2年生。彼女は書道部唯一の部員だ。結葉さんが入部した昨年、部には6人が所属しており、全国の強豪校が競う書道パフォーマンス甲子園にも出場していた。

太田結葉さん
太田結葉さん
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能登町役場のロビーには「共生」と「復興」の文字が掲げられている。これは地震後に当時の書道部が書いた大きな書で、復興に向かう住民たちの背中を押してきた作品だ。住民は「自分たちも元気にならなきゃと思うし勇気づけられる」「元気もらえますね。楽しんで見せてもらっています」と話す。

結葉さんは書道部に入った理由をこう語る。「パフォーマンスを中学校の時から見とって、その時からかっこいいなと思ってて入ろうと思いました」しかし今年8月、3年生が引退し部員は結葉さん1人になった。部員1人だけでは書道パフォーマンスはできない。前身の宇出津高校などの時代を含め約70年の歴史がある書道部は、存続の危機に直面している。

存続に向けたパフォーマンス

顧問の府玻美智子先生は「今後どうしようかなということももちろんあるんですが、結葉を大事にしよう、1人の生徒を大事にしていくことが存続につながっていくんじゃないかなと思います」と話す。先月12日、金沢市内で行われたイベントに結葉さんの姿があった。顧問の府玻先生の呼びかけで、書道部のOG5人が協力し、書道パフォーマンスを披露することになったのだ。

結葉さんは「来年新入生が入らないとずっと1人。書道部も継続できるか分からないので、中学生の人とかに、書道パフォーマンスの良さが伝わればいいなと思います」と話し、書道部存続に向けても一縷の望みをかけていた。

能登の未来の扉を開く

これが最後になるかもしれない書道パフォーマンス。最後は、結葉さんが大筆で仕上げる。パフォーマンス後、結葉さんは観客に向かって力強く語った。「震災から1年10か月が経ちました。共に能登の未来の扉を開き、その先には希望や夢が叶えられる明日があることを信じて、今書道パフォーマンスを通した活動をしています。ありがとうございました!」

イベントの後、結葉さんは「先輩たちも存続してほしいという思いがあるんだなというのを知って、私が絶対存続させなければならないという思いもありますし、これからも書道パフォーマンスで自分の思いを届けることができたらいいなと思います」と話した。

「一緒に頑張ろう」住民への思い

大会への出場は叶わないが、書道部には地元の人たちから作品制作の依頼が届いている。この日は地元の飲食店が並ぶイベント会場に結葉さんの書が掲示された。住民はこの活動についてこう話す。「段々さみしくなっていくから近所にも誰もおらんくなるし、そういう輝いている子どもたちが近くにおれば年よりも元気が出てくると思う」

結葉さんは能登町の住民への思いを「すぐに復興はできないと思うので、被害のあった能登町の人たちに『一緒にがんばろう』という思いが伝われればいいなと思います」と話した。

(石川テレビ)