食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「ポークピカタ」。
中央区・京橋にある洋食店「京橋モルチェ」を訪れ、イタリア発祥と言われる卵の味をしっかり感じる豚肉料理を紹介。
日本の西洋料理の草分けと言われる洋食店の経営危機を救った舞台裏にも迫る。
京橋にある明治屋の直営店
「京橋モルチェ」があるのは、東京中央区・京橋。
「日本橋と銀座の間、東海道を京へ上る最初の橋があったことから、“京の橋”京橋と言われたとされる説があります」と植野さん。
東京の中心部に位置する京橋は、江戸時代から続く歴史ある街。戦後、多くの企業が進出し、ビジネス街として発展してきた。
この記事の画像(7枚)そんな中、「京橋モルチェ」とも関係が深いのが、「明治屋 京橋ストアー」。
1933年建造のルネサンス様式の美しい建物の中には、高品質食材や明治屋オリジナル商品など常時、約4000品目も取り扱っている。
中でも、果実のおいしさを生かしたオリジナルのジャムが有名だ。
バーカウンターや会食にも便利な個室も
そんな明治屋ストアーの地下にあるのが、明治屋の直営店「京橋モルチェ」。銀座線の京橋駅に直結し、長きにわたり愛されている洋食レストランだ。
シックで落ち着いた雰囲気の店内で、バーカウンターや会食にも便利な個室も備え、座席は130席あるが、ランチタイムは案内が追いつかないほど大盛況となる。
出迎えてくれたのがホールを長年担当している、支配人の小玉勲さんと、キッチンで腕を振るう若き料理長、齋藤隆弘さん。
キッチンで働くスタッフは少数精鋭の7人。夜は立食パーティも多く、ランチもディナーも同時に準備するため厨房は常に大忙し。
経営危機に陥った中央亭と明治屋が提携
「京橋モルチェ」は、日本の洋食文化の礎を築いた「中央亭」の歴史を受け継ぐ店。
1907(明治40)年東京・丸の内に開店した「中央亭」。精養軒や東洋軒と並ぶ、洋食レストランとして、多くの名コックを輩出する名店だった。
ところが2代目の時代、本場に限りなく近い料理を目指すあまり、材料費をかけ過ぎたことで、中央亭は経営危機に。そこで手を差し伸べたのが、中央亭に食材を納品していた明治屋だった。
明治屋は中央亭と提携し、1933年、明治屋京橋ビルに「京橋モルチェ」の前身となる「レストラン中央亭」を開店。
当時、ビルの高層階レストランは珍しがられ、格調高いクラシックな雰囲気が、銀座界隈で話題になった。
その後、1971(昭和46)年に明治屋が輸入していたフランスワインの名称「モルチェ」にちなんで、中央亭から現在の店名に変更したという。
そんな京橋モルチェは、2013年に再開発で、約3年間、閉店する。しかし、再オープンすると、なんとのべ3000人以上が予約した。本当に、多くの常連客に愛されている洋食店だ。
本日のお目当て、京橋モルチェの「ポークピカタ」。
一口食べた植野さんは「卵でしっとり包み焼きすると豚肉がおいしく仕上がる」と絶賛した。
京橋モルチェ「ポークピカタ」のレシピも紹介する。