神々の国と呼ばれる島根県出雲市。その象徴としてそびえ立つ出雲大社から、車を走らせること5分。神がかり的な旋風を巻き起こし、甲子園を沸かせた公立高校を訪ねた。

大社高校は初戦から強豪校を次々と撃破。ベスト8をかけた伝説の早稲田実業戦、激闘を繰り広げ勝利した。

手に汗を握る展開で、日本中を沸かせた試合となり、大社旋風を巻き起こした。

激闘のウラ側を語る大社ナイン
激闘のウラ側を語る大社ナイン
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激闘の真実を監督、選手たちが証言した。

甲子園の“魔物”現る

試合は、迎えた9回ウラの攻撃、大社高校の1点ビハインド。先頭打者は7番、ここまで投げ抜いたエース馬庭優太(3年)。

馬庭:
正直、自分、ちょっと諦めたとこがあって。

9回ウラ1点ビハインドからドラマは始まる
9回ウラ1点ビハインドからドラマは始まる

諦めかけた、この打席。打球はセカンドに転がったが暴投となり、馬庭は二塁へ。

馬庭:
なんか起きるなっていうのは、自分は思いました。2塁に行けてやっぱなんか大社はもってるなっていうのを自分はそこで感じました。

同じく3年の藤江龍之介はこの状況に。

藤江:
本当にああいう場面で魔物が住んでるなって思いました。

甲子園に住む魔物は、大社高校の背中を押す。続く8番、園山純正(3年)のバントはなんと内野安打に。さらに9番、髙橋翔和(3年)がスクイズを決め、土壇場で同点に追いついた。

奇策『内野5人シフト』

9回ウラ、1アウトランナー2塁3塁、1点入れば試合終了の場面。

スクイズ対策で早稲田実業が仕掛けたのは、レフトがピッチャーの横に来る奇策、『内野5人シフト』。

その時、大社高校・石飛文太監督(42)は、

石飛監督:
僕、最初気づいてなくて、普段見えない光景があって。ベンチの選手に「あの子誰だ」というふうに聞いて、そしたら「あの外野が一人来ました」って。

大社高校・石飛文太監督
大社高校・石飛文太監督

レフトの選手が、ピッチャーとサードの間に入り、外野は3人から2人になる変則シフト。

打席に立った2番・藤江は、

藤江:
冷静さをずっと保って打席に入ろうと思ったんですけど、やっぱりその雰囲気だったりとかで、自分が冷静さを保てませんでした。

打球はくしくも内野の守備に加わったレフトの元へ飛んだ。

藤江:
引っ張ってゴロ転がせば3塁ランナーの園山が帰ってくれるっていう気持ちで打席に入ったんですけど、声援だったりとかに押されて、あそこに飛んだかなと思います。

内野5人シフトにはまり、この回は1点に抑えられ延長戦へ。

奇策がはまった早稲田実業。

早稲田実業キャプテン宇野真仁朗(3年)はこの作戦について、

宇野:
夏の大会前に2、3回くらいですけど一応練習はしていました。正直あんなに綺麗にハマるとは思っていなかったです。

魔物は気まぐれ、今度は早稲田実業高校の味方となった。

3塁ライン上への神業バントのウラ側で

同点のまま迎えた延長11回ウラ。タイブレークでノーアウト1塁2塁からの攻撃。

実はこの時、大社ベンチでは、

石飛監督:
正直、監督としての采配だとか、そういったものに自信がないっていうのが一番なんで、そこは相談しました。代打を出すんだったらバンドだというふうに決めてて「どうする?」と言った時に「自信あるもの」って、言った時に安松が手を挙げたので。

安松大希(2年)がこの状況で名乗りを上げた。

安松:
自分しか決められないという気持ちがあったんで、立候補しました。

立候補で決まった代打・安松の絶妙バント
立候補で決まった代打・安松の絶妙バント

代打はなんと、立候補。選手一人一人が自主性を持ってプレーする大社。この夏、一度も出場がなかった2年生の安松が自ら手を上げた。

こうなれば自信満々のはず、だったが監督が異変に気づいた。

石飛監督:
顔色が悪かったので、何が不安なのかなって言ったら「僕、3塁側にしかできないんですけど」って言ってきたんですけど、「今、3塁側にバントして欲しいのよ」「あ、いいんですか」って。

ノーアウト1塁2塁のこの場面、バントを警戒している早稲田実業はファーストが前に出てきている。サードは2塁ランナーをアウトにするためベースから動けない。そのため3塁側にバントするのがセオリーとなる。

さらにエース馬庭も安松に声をかけた。

安松:
馬庭さんに「ここは落ち着いて次、俺が決めてやるけん落ち着いてやれよ」と言われました。優しくチームみんなが声かけてくれたからこそリラックス出来ました。

これが大社流コミュニケーション。打席に立った安松に迷いはなかった。

安松は見事3塁線上への神業バントを決め、結果は3塁への内野安打となった。

「出雲の神」が「甲子園の魔物」をはねのけた瞬間

これでノーアウト満塁の一打サヨナラの場面。打席には、先ほどバントを決めた安松に声をかけたエース馬庭が立つ。

馬庭が強打した打球はピッチャーの足元を抜けセンターへ。

馬庭:
魔物っていうのは周りの観客の方々が作り出す空気っていうものだと思うので、自分が打ったんじゃなくて、やっぱスタンドの皆さんとか、応援団の皆さんがいたからこそ、そこで自分がバットを振って、しっかりセンターに打つことができたなって思います。

3塁ランナーがホームを踏み、サヨナラ勝ちとなった。

延長11回激闘を制し、93年ぶりベスト8を決めた大社高校。

次戦の神村学園に敗れ、ベスト4には届かなかったが、世間に大きな感動を与え大社旋風を巻き起こした。

園山:
甲子園という場は本当に成長をさせてくれる場ってみんなから言われるんですけど、本当に成長させてくれて、本当にこの経験っていうのは一生の宝物です。

馬庭:
1試合1試合で自分の人生が変わるっていうか、その立っているだけで幸せを感じる場所でした。

戦いを終え、出雲市に帰ると地元の方々が大社ナインの健闘を称えた。来年の夏も数々のドラマが巻き起こる甲子園に注目していきたい。

『すぽると!』9月7日(土)24時35分 9月8日(日)23時15分フジテレビ系列で放送中