野田佳彦元首相が立憲民主党の代表選に立候補した。「BSフジLIVEプライムニュース」では野田氏をスタジオに迎え、出馬の動機、重点政策、さらに自民党総裁選の焦点となっている裏金問題について、橋下徹氏とともに聞いた。

代表戦は“準決勝”。目指すは党代表ではなく首相の座

竹俣紅キャスター:
野田さんは8月29日、代表選への出馬表明で「政権を取りに行く時には刷新感も必要だが、一定の経験値に基づく安定感、国内外の大きな重要課題を解決し国家を背負う覚悟と力量が問われている」と発言。以前は「昔の名前で出ています」はダメだと刷新感を重視するような発言もされていたが、今回は安定感を重視。

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野田佳彦 元首相:
私の場合は「昔の名前で出ています」もいいところ。ずっと慎重な立場でいたが、次々と名乗りを上げる自民党の総裁候補は、本当に刷新できるメンバーではない。表紙だけ変えて中身は変わらないと感じた。政治とカネの問題についての深い反省もない疑似政権交代ではいけない。
本当に政治を変えていくためには裏金のような問題を許さず、世襲議員が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する古い政治と決別すること。そこには一定の経験に基づく安定感も必要だと思い至った。代表戦は準決勝。決勝の政権取りをかけた戦いをにらんでチームを作っていこうと決断した。

反町理キャスター:
党代表ではなく、総理を目指すために出馬する。

野田佳彦 元首相:
そう。政権交代のチャンスはめったにない。絶対に逃してはいけない。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
国家戦略や国家観はもちろん重要だが、どれだけ立派な政策を掲げても金に汚い人間はしっかりできない。自民党は政治とカネの問題を甘く見て、国民をなめている。ただ、維新もそうだが立憲もやはり人材不足と思う。自民では40代の小泉進次郎さん、小林鷹之さんが出てくる。立憲も戦略的に次世代の若手を候補者とするべき。

野田佳彦 元首相:
今からルールを変えるのは難しいが平時に考えておき、出馬の条件を20人の推薦人ではなく「推薦人数が議席数の何%に達すれば出馬できる」とすべき。今回は(立候補に意欲を見せる)吉田晴美さんにもっと人が集まれば可能性がある。

反町理キャスター:
野田さんが代表になれば執行部の布陣はどうなるか。吉田さんのような方を入れる思い切った人選をするか、経験ある手練れを重用するか。

野田佳彦 元首相:
一つは政権を取りに行くチームにすること。一方で若い有為な人材にしかるべきポジションを与え、チャンスを作っていくことは私の役割だと思う。

 “偏ったイメージ”の立憲は保守層の心をつかめるか

竹俣紅キャスター:
野田さんは出馬表明で「本来は自民支持だが失望した保守層の心をつかむことが政権交代に必要」と発言。どのような政策を打ち出すか。

野田佳彦 元首相:
まずは、政治とカネの問題をしっかり解明し、けじめをつけること。政策を遂行する前提である政治に対する信頼が失われている。我々ならこういう政治改革をやると打ち出すことで、本来は自民党支持層だった人たちに訴える。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
政治とカネの問題にイデオロギーは関係ない。無党派層を含め全国民嫌気がさしている。ただ野田さんが「保守」を言うのはわかるが、立憲全体が本当にそうなのか。平和安全法制、集団的自衛権の限定行使に対して立憲のメンバーは全否定だった。保守層の心をつかめるのか。

野田佳彦 元首相:
中道と言っていても、よりリベラルな方向と仲が良すぎる偏ったイメージが出来上がっている。それを崩さないと政権は取れない。無党派含め、中道から穏健な保守にまで手を伸ばさなければ政権を取るリアリティがない。平和安全法制の話も、政権を取って180度の政策転換などということをやれば、国際社会から相手にされない。現実的には、今の状況を継続させながら2015年以降の検証を丁寧にやっていくこと。

反町理キャスター:
これまでの衆参両院における憲法論議に対して、立憲は非常に慎重。野田さん個人は、例えば自衛隊の明記について改正すべきだと言ってきた。代表になればその考えは封印するか、それとも主導権を握って党の論議を引っ張っていくのか。

野田佳彦 元首相:
憲法改正をタブー視せず、立憲主義的な「論憲」として大いに議論をしていく。審査会が開かれるときは出席し、党内でも丁寧な議論をする中で、一定の時期に結論を出して進んでいきたい。

竹俣紅キャスター:
経済政策に関して「一番やりたいのは分厚い中間層の復活だ。中間層からこぼれ落ちてきている人たちがたくさんいるという状況に光を当てていく経済・財政政策を」と発言。どのような経済政策が必要か。

野田佳彦 元首相:
こぼれ落ちそうな人たちをセーフティーネット的に支えることが大事。例えば消費税については還付法案を党で出している。また若年層に光を当てた対策。あらゆる世代に医療・介護・子育てなどの心配がない世の中にすべきだが、その中でもまず若者に対するベーシックサービスを重点的にやっていくことが大事。自治体間の競争にさせず国が責任を持って、将来世代への投資に繋がる中間層の復活策を探りたい。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
予算規模はどの程度だと考えるか。政治家は皆その手の政策を言うが、財源の問題にぶつかる。

野田佳彦 元首相:
今、どの分野にどれぐらいの金額が必要になるかカウントしている。財源の議論なくして語る政策は空論。今の野党のレベルでは正確に出せないものもあるかもしれないが、なるべくそれをきちっと打ち出しながら議論を進めていきたい。

野田氏「自民を単独過半数割れに」「世襲はやめる」

竹俣紅キャスター:
自民党総裁選の論戦で焦点になるとみられる、いわゆる裏金問題について。総裁選に出馬表明した河野太郎デジタル相は、「不記載と同じ金額を返還してけじめとするのがいい」「安倍派議員が安倍派に返還し、派閥が正式に解散届を出す時に資産を国庫へ戻す。方法はいろいろある」と発言。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
法的な問題を乗り越えて返納はしてもらいたいし、河野さんには返納しなかった議員は公認しないぐらいのところまで踏み込んでもらいたい。ただ裏金はもちろん問題だが、根本の部分で例えば旧文通費(調査研究広報題材費)の領収書はまだ自民も立憲も公開していない。また岡田幹事長が廃止と言っている政策活動費は完全廃止にするのか。一番重要なのは第三者機関のチェック。立憲は自民党を追及すると同時に、自分たちで先取りをして領収書は全部出し第三者機関を設けてチェックするなど行動で示せば、もう少し信用力が高まると思うが。

野田佳彦 元首相:
自分たちも率先してやるという政治文化を作っていきたいと思う。企業・団体献金の廃止の問題も、パーティーの問題もそう。政策活動費は廃止すると明確にしている。これらは野党間で合意できるのではないか。一緒に次の臨時国会で法案を出し自民党に迫る。加えて政治資金規正法は全部見直すべきだと思っている。自民党と公明党だけで決めたものは認めない。自民党総裁選では、あの政治資金規正法を見直す気があるのかないのか、そこを聞きたい。

反町理キャスター:
出した法案が未成立の時点でも、立憲はそれに則っていくのか。

野田佳彦 元首相:
その方針を示してご賛同いただく代表選挙にしたい。他の代表候補の方の主張はわからないが、私は政治改革とは覚悟だと思う。それを示せるものを打ち出したい。

反町理キャスター:
自民党の自浄能力について。本当に危機感を持ったときには、裏金問題のあった議員を非公認にするとか、その上で対立候補を刺客として立てるところまで踏み込む政党だとも感じる。どう見るか。

野田佳彦 元首相:
衆議院では裏金に関係する人の選挙区が50ほどある。そこで同士討ちのようにぶつけるのはかなりリスキーでは。公認しないから勝ち上がってこい、それで禊が済んだことにするというのはあるかも。そこは自民党の出方。我々はとにかく政治とカネの問題を忘れるな、許すなと食いついていく。批判だけではなく共同で法案を提出する。そして世襲はやめていくことで覚悟を示す。

反町理キャスター:
世襲はダメなんですか。先日の補選、立憲でも世襲の議員が2人当選している。

野田佳彦 元首相:
自民党は多すぎる。憲法の論争になるかもしれないが、例えば政治資金を世襲で相続できないようにすることは法案として出せる。調べたところ、少ない人でも数千万単位で引き継いでいる。知名度のある人が金まで持っていては有為な人材が勝てない。それでいいのか。これからは同一選挙区から三親等以内の人物が連続して立候補できないルールを作るつもり。これは公職選挙法改正ではなく、党の内規として。

竹俣紅キャスター:
野田さんは次期衆院選の目標を「自民党を単独過半数割れに追い込む」と述べた。「与党」ではなく自民の過半数割れ。選挙後の公明党との連携も視野に入れているか。また枝野前代表は、前回の総選挙で共産党との関係を重視しすぎた点を反省する旨発言したが。

野田佳彦 元首相:
過半数割れに追い込んだ後に、野党でどうチームを作るか。過半数割れならば公明党さんも厳しい状況で、ギクシャク感が出るのでは。政権変容でも政権交代でも、どちらにせよ参議院では与党が多いのでねじれ国会になる。そこまで考えれば野党で連携できるテーマは限られてくる。その中で追い込みをしていき、自民が乗ってこないなら勝負をかけていく。そのためにはあらゆる党ときちっと対話をしておくこと。自民の「一強」を作った原因は、野党がバラバラの「多弱」であること。野党をまとめ大きな塊を作っていくきっかけとなる総選挙にしていきたい。

「BSフジLIVEプライムニュース」9月2日放送