“過去最強クラス”の台風

気象庁は、28日午後に台風10号を起因として、奄美地方を除く鹿児島県に、暴風と波浪および高潮の特別警報を発表した。

台風を起因とした特別警報は、「伊勢湾台風」級(中心気圧930ヘクトパスカル以下または最大風速50メートル以上)の台風が来襲する場合に、その12時間前を目途に発表する。

これまでに経験したことが無いような暴風や高波、高潮に見舞われるので、厳重な警戒が必要だ。

台風10号は過去最強クラスで九州に接近しており、予想される最大瞬間風速は70メートル、これは家が倒壊するほどの暴風である。

時速に換算すると、250キロと新幹線並みのスピードなので、もしも傘が飛んできた場合はその傘が凶器になる。

窓ガラスが割れる場合もあるので、養生テープで保護して、カーテンを閉めた上で、風上側に窓がある部屋には居ない方が良い。

気象庁が特別警報を12時間前に発表したのには、猶予時間内に避難行動を取ってほしいという意図がある。

米国であれば、非常事態宣言が出されて、車で遠くのエリアに退避する事態だ。
気象庁は今後、大雨特別警報の発表も示唆している。

台風が接近してからの避難は、かえって危険な状況で、避難が命がけになってしまうので、早めの避難が家族を守る事になる。

台風10号の予想進路図
台風10号の予想進路図
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台風10号は29日から30日にかけて九州に上陸する見込みである。

西日本で迷走の可能性

28日午後4時前に気象庁が発表した進路予想で、台風が週末に西日本で迷走する可能性を表している。

注目して頂きたいのは、31日(土)以降の予報円が大きいのと、それぞれの予報円が重なっている点だ。

これは偏西風など台風の背中を押す風が日本付近に無いためである。

このため、進行速度は時速10キロに行くか、行かないかという程度で、自転車よりも遅いスピードで日本列島を進む。

西日本での停滞やUターンを予想する海外の気象予報機関もある。

いずれにしても、台風が長時間同じエリアに暴風や大雨などをもたらすのは間違いない。

関東でも警報級の大雨

九州から東海にかけては、24時間で300ミリから600ミリという大雨が、2日から3日続くため、記録的な大雨となるところがある。

31日18時までの予想72時間積算雨量
31日18時までの予想72時間積算雨量

さらに、台風に近い奄美・九州・四国は線状降水帯が発生して、大雨災害の危険性が急激に高まるおそれがある。

また、関東など台風10号から遠く離れた地域でも大雨となる。
関東や東海では、台風が引き込む暖かく湿った南風と、太平洋高気圧の縁を回る南東風がぶつかった場合は雨雲が急発達する。

特に、29日午後にその可能性が高まる。気象庁も28日午後4時過ぎに関東甲信地方に対して大雨と雷及び降ひょうに関する気象情報を発表した。

29日午後19時の予想降水量
29日午後19時の予想降水量

それによると、予想される降水量は、関東甲信地方の多いところで、29日午後6時までの24時間に60ミリから80ミリ、その後の24時間で120ミリから150ミリである。

最近、気象庁の予想降水量を上回る大雨が多くなっているため、台風から離れている関東も十分に警戒してほしい。

三井良浩(フジテレビ気象センター・気象予報士)

三井良浩
三井良浩

気象キャスター、プロデューサーを経て、2024年にフジテレビを定年退職。現在、フジテレビ気象センターでシニアエキスパート勤務。モットーは、災害から国民の生命と財産を守るための情報を届ける。気象予報士。