「暑すぎて何も食べたくない…」「冷たいものが食べたい」「子供が食欲ないと言っている」
夏のそんな日こそ「カレーがおすすめ」だというのは、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の赤石定典さんだ。
連日の暑さで食欲が落ち気味になるこの季節。カレーを食べることが“胃を復活”させるという。
カレーの辛さが“胃を復活”させる
「熱中症による脱水」「室内と屋外の温度変化による自律神経の乱れでだるさを覚える」、そして「食事の乱れによる体の不調」、この3つが夏バテの要因として考えられると赤石さんは話す。
特に冷たい食べ物や飲み物を摂取する機会が多いことで、夏バテならぬ“胃バテ”を引き起こしてしまうそうだ。
「冷たいものや水分をたくさんとることで胃酸が薄くなり、胃の働きが落ちます。すると、消化不良になるため、『食べやすいものが食べたい』ということになる。それが夏バテの悪循環です」
つまり、つるっといきたいなど食べやすさを求め始めると、すでに“胃バテ”を起こしているかもしれない。
この記事の画像(6枚)そんな胃の状態のときこそ、赤石さんが勧めるのが「カレー」だ。
「激辛ではなく、ほどよい辛さのカレーは胃を刺激して、胃酸の分泌を促します。カレー粉などに含まれているカプサイシンによるもので、食欲増進にもつながります。市販のカレー粉でも十分です。よく夏は“ピリ辛”がいいと言いますが、こうした理由からです」
胃が不調のときに香辛料などの刺激物は問題ないのかと思うかもしれない。しかし、赤石さんは「香辛料は胃の働きを良くして胃酸を分泌させ、胃を復活させてくれます。辛すぎなければ問題ないです」と話す。
水代わりにトマト缶を入れてみよう
カレーも食卓には頻度高く並ぶだろうが、夏バテ予防のためにもう一工夫するのであれば、赤石さんは「トマト缶(トマトパック)」を推す。
「ニンジン・タマネギ・ジャガイモ・豚肉といった定番カレーはよく考えられていて、野菜もあり、たんぱく質もあります」
しかし、それでも野菜が足りないと感じたら、さらに足してもいい。おすすめが「トマト缶」だ。
夏は紫外線からのダメージもあり、その紫外線を浴びて増えた活性酸素を退治するのに、抗酸化作用が高いリコピンを多く含んだトマトは最適だという。
「トマト缶(パック)を水の代わりに入れると良いでしょう。抗酸化作用のあるリコピンもありますし、トマトが苦手なお子さんでもカレーの味を大きく変えることなく、トマトの栄養もとることができます」
また、トマトジュースを入れても、カットトマトを入れた時と栄養価に大きな差はないため、好みのものを使って良いという。
一方、ひき肉を使うキーマカレーの場合、豚肉を使う方が夏バテ予防につながるという。キーマカレー自体でたんぱく質がとれているため、野菜を加えてみると良いそうだ。
逆に野菜中心のカレーでたんぱく質が少ないと感じたら副菜として豆腐や卵を加えると良いという。
水の代わりに牛乳や豆乳を加えるとたんぱく質を足すことができ、「少しクリーミーになりますが、カレー粉は意外としっかりしているもので、大きく味が変化することはありません」と赤石さん。
さらに、赤石さんいち押しカレーメニューは「トマト×ナス×ひき肉カレー」だ。
「ひき肉に豚肉を使うとなお良いです。みじん切りしたタマネギや水代わりのトマト缶を入れれば、見た目として野菜の少なさを感じるかもしれませんが夏バテ予防としてはベストです」
つるっといきたいときは坦々風で
子供から「食欲がない」と言われたとき、赤石さんは「熱中症の可能性もあるため、なぜそう言うのか」を確かめることがまず大切だという。
「熱中症ではなかったことがわかったあと、お子さんが食欲はないけどアイスや甘いものだったら食べられるということもあるでしょう。
しかし、そればかりを与えていては夏バテを助長させてしまいます。『これだったら食べられる』ものだけを出すのでは回復が遅れるため、アイスなどを食べて少し元気になったところで、食事をさせてください」
先に述べたカレーであれば子供も食べることができる。また、カレー以外にも「辛くなくていいので、トウガラシや豆板醤を入れると少し胃に刺激を与えることができます」と話す。
香辛料以外にも夏野菜のひとつ、ピーマンやパプリカはトウガラシの一種のためカプサイシンが含まれている。
ピーマンが苦手な子供も多いかもしれないが、辛みのある香辛料を避けたい場合はピーマンやパプリカを使うことで胃を刺激してくれるそうだ。
また、ピリ辛でつるっといきたいときは坦々風の麺メニューがおすすめだと赤石さんは言う。
そうめんや中華麺、うどんなど、どんな麺でもアレンジも可能。糖質をエネルギーに変えるビタミンB1を含む豚肉(ひき肉)と豆板醤を和えて、ピリ辛味噌だれを使った担々麺風メニューは、だるさなどを覚えがちな夏の疲労回復を望める。
そこにアリシンが含まれたネギを加えると、ビタミンB1の吸収率がアップする。
「特に坦々風の麺メニューは、胃が不調の時に胃を刺激してくれて、食欲を増進させてくれるピリ辛、ビタミンB1を含む豚肉、吸収率を上げるネギといった、すべてが組み合わさっているメニューです」
秋に向けて腸内環境を整えよう
こうして夏を乗り切っても、最近の秋はまだまだ暑い。「秋にバテてしまう人は夏バテが尾を引いているのです」と赤石さん。
そんな秋に向けて準備を進めたいのが、腸内環境を整えることだという。
「最近はまたコロナが流行りつつありますし、秋から冬にかけては他の感染症に感染する確率も上がります。そこで大切なのが乳酸菌で腸内環境を整えること。それが、夏バテしないことと、感染症予防などにつながります」
ヨーグルトや味噌といった発酵食品をうまく日常の食事に取り入れることが大切だと赤石先生は話す。
「腸内環境は2~3週間で改善すると言われています。そして人によって合う乳酸菌も異なるため、キムチや味噌、ぬか漬けなどこまめに、さまざまな乳酸菌を食べると夏バテ、そして以降の季節も乗り切れるでしょう」
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赤石定典
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に勤務。管理栄養士として、患者への栄養管理や栄養の重要性を広く伝えるために書籍監修、メディア出演にも関わる。