“お肌の天敵”の紫外線。多くの人が外出時には日焼け止めを塗るなどの対策をしているだろうが、大人でもクラッとしてしまう暑さの中、子供たちの肌もしっかり守りたい。
ドラッグストアで販売されている日焼け止めには「大人用」「子供用」があるけれど、どんな違いがあるのだろうか。そして“うっかり日焼け”してしまった時は、どんなケアをしたらいいのだろうか?「巣鴨千石皮ふ科」の小西真絢院長に話を聞いた。
「子供用=絶対に安全」ではない?
この記事の画像(5枚)「日焼けの対策は、とにかく『紫外線を直接皮膚に当てない』ということしかありません。日焼け止めを塗ったり、アームカバーやラッシュガードで肌を覆う、日傘や帽子を使うなどです」
一口に日焼けと言っても、シミ・そばかす・しわ・たるみなどの原因になったり、重症になると水ぶくれや、皮膚が剥けて火傷のようになったりと、様々な症状がある。
日焼け止めには「PA」「SPF」の記載があるが、 「PA」はしわやたるみの原因になる「UV-A(紫外線A波)」を防止する程度の指数で、PA+(プラス)、PA++ 、PA+++、PA++++の4段階で表される。
また、「SPF」はしみやそばかすの原因になる「UV-B(紫外線B波)」を防止する程度の指数で、2~50+までの数値で表される。
「PA」「SPF」は数値が大きいほど日焼けの予防効果が高くなるが、子供には「大人用の日焼け止めを使ったら刺激が強すぎるのでは?」「子供用は肌に優しい成分が入っているのでは?」と思い「子供用」と明記されたものを買っている人もいるかもしれない。
しかし、小西院長は大人用と子供用の日焼け止めの成分に大きな差はないという。
「“子供用”の日焼け止めは使いやすさや肌への優しさが考慮されているということはあるかと思いますが、大人用とそこまでの差はないと思います。『子供に使うのは絶対に“子供用”でなくてはいけない』『子供用だったら絶対に安全』ということではありません」
小西院長によると、子供用に選びたい日焼け止めは、SPF20~30かつ「ノンケミカル」のもの。
日焼け止めには紫外線を吸収して肌に届かないようにする「紫外線吸収剤」が入っているものと、紫外線を反射させる「紫外線散乱剤」が入っているもの(ノンケミカル)の2種類がある。
この「紫外線吸収剤」は“子供用”として販売されている日焼け止めにも入っている場合があるそうだが、紫外線を吸収した際の化学反応によって肌がかぶれてしまう人もいるため、なるべく「紫外線吸収剤不使用/ノンケミカル」と書かれたものを選んでほしいという。
また、現代の厳しい暑さ・紫外線の中では、大人も子供もPA+++以上のものを使うのがおすすめ。
子供が大きな肌トラブルを抱えている場合を除き、「PA+++以上、SPF20~30」「ノンケミカル」のものであれば、“大人用”の日焼け止めも親子でシェアして問題ないという。
シーンによって使い分けが必要
子供たちのための日焼け止め選びと同様に、自分たちのためにも、できれば肌に優しいものを選びたいところ。
小西院長は、日常やレジャーなど、シーンによって日焼け止めの“使い分け”をしてほしいと話す。
「PAとSPF、両方とも入っている方が日焼けはしっかりと抑えられますが、数値が高いものは肌への負担も増えるので、シーンによって強いもの・優しいものを使い分けるのが良いと思います」
小西院長によると、近所への買い物などちょっとした外出の際に使う日焼け止めはPA+++~PA++++、SPFは20~30のもの、丸一日の外出や海でのレジャーなど、強い紫外線を受けることがわかっている場合は、PA++++・SPF50以上のものを使うのが良いそうだ。
うっかり日焼けには体外・体内からケアを!
あれこれ対策をしていても、汗で日焼け止めが流れ落ちてしまったり、短時間の外出だからと日焼け対策を怠った結果、“うっかり日焼け”をしてしまうこともあるはず。
そんな時、すばやく日焼けを鎮静させるためには「冷やして、保湿」が肝心だと小西院長は話す。
「日焼けした皮膚はかなり乾燥してしまうので、赤くなっているだけの時は、とにかく冷やすというのが大事です。痛いくらいの症状が出てしまったら、病院を受診しステロイドを塗るという方法もあります」
水ぶくれや激しい痛みが起きていない軽度の日焼けの場合、まずは肌をしっかりと冷やすこと。日焼けした肌はデリケートなので、直接氷を当てたりはせず、冷やしたタオルなどを使い、赤みがひいたら化粧水やクリームなどで保湿するのが良いそうだ。
他にも、“体内から”日焼けをケアする場合は、ビタミンC・ビタミンEの摂取が望ましいという。
日焼けでダメージを受けた肌は修復のためにこれらのビタミンを使ってしまうので、ビタミン剤やサプリでの摂取のほか、たとえばレモンなどのビタミンCが多く含まれるフルーツ、アーモンドや豆類などのビタミンEを多く含んだ食品を積極的に食べるのが良い。
また、日焼けのケアとして「きゅうりをパック代わりに顔に乗せる」「アロエを塗る」「オリーブオイルを塗る」などの方法を聞いたことはないだろうか。
きゅうりやアロエを肌に塗る方法は、肌をひんやりとさせてくれそうだが、小西院長によると、人によってはかぶれなどを引き起こすこともあるため、あまりおすすめはできないそう。
また、オリーブオイルを塗る方法も、肌の保湿という点では効果があるが、オイルには食用・美用(化粧品用)と種類があり、それぞれ加工の仕方などが違うため、どんなものを使うかについては注意してほしい。
厳しい暑さが続く中、しっかりと行いたい日焼け予防とケア。夏を思い切り楽しむためにも、親子で使える日焼け止めや対策グッズを探してみてはいかがだろうか。
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小西 真絢
日本皮膚科学会認定専門医。杏林大学医学部医学科を卒業後、東京医科歯科大学皮膚科、総合病院等の勤務を経て、現在は「巣鴨千石皮ふ科」の院長を務める。「目に見える異変は何でも相談できるホームドクター」として、プライマリケアを重視した診療を行う。