トランプ氏が暗殺未遂事件後、初めて公の場に現れた。
共和党大会でのスピーチは控えたものの、副大統領候補に元反トランプ派のバンス上院議員を指名し、かつてトランプ氏を批判していたキーパーソン2人を取り込むなど、戦況が変化している。

トランプ氏を"英雄視”か

14日の銃撃後、初めて公の場に現れたトランプ氏の様子について、フジテレビ・立石修解説委員室長が解説する。

青井 実 キャスター:
トランプ氏が暗殺未遂事件後、初めて公の場に姿を見せました。

共和党大会に姿を見せたトランプ氏
共和党大会に姿を見せたトランプ氏
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立石 修 解説委員室長:
スピーチはもともと、18日の最終日の予定だったため、16日は何も発言していません。それでもトランプ氏が姿を見せると、会場にいた息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏が目に涙を浮かべた様子も見られるなど、会場内は興奮状態でした。

生中継をしていたCNNの解説者は、これまでと雰囲気が変わり、トランプ氏が「救世主のような存在」になっていると伝えていました。

今、あえてパフォーマンスや発言を控えることで、かえって支持者はトランプ氏を英雄視している印象もあります。

キーマンとして挙げられる元・反トランプの3人
キーマンとして挙げられる元・反トランプの3人

青井 キャスター:
ーートランプ氏は何も話しませんでしたが、党大会そのものから、新たな戦略のようなものを感じましたか?

立石 解説委員室長:
今回の党大会の会場には、3人のキーパーソンが現れました。3者とも、かつては「反トランプ」の立場をとっていた人物で、中でも注目は、副大統領候補に選ばれたJ.D.バンス上院議員(39)です。

宮司 愛海 キャスター:
バンス氏は39歳、オハイオ州出身で、白人の貧困層を描いた「ヒルビリー・エレジー」という本を出版したベストセラー作家です。

バンス氏は当初、トランプ氏を「完全な詐欺師」、「アメリカのヒトラー」と激しく批判していましたが、その後「トランプ氏の大統領としての実績を見ると自分は間違っていた」と立場を一転、トランプ氏の忠実な支持者になり、2022年に上院議員に当選しました。

副大統領候補に選出されたバンス氏
副大統領候補に選出されたバンス氏

青井 キャスター:
ーー政治家としての実績はほぼないわけで、なぜトランプ氏はこの人を選んだのでしょうか?

立石 解説委員室長:
1つは39歳という若さが理由に挙げられます。現在の選挙戦に対する「高齢批判」へのトランプ氏の1つの回答だと思います。

もう1つは先ほどの本の出版で、バンス氏の故郷オハイオ州は、白人貧困層が多いのと同時に、“スイングステート”と呼ばれる激戦州です。こうした白人貧困層を取り込む狙いだと思われます。バンス氏に対しては、ポピュリストとの批判もあり、「劇薬」と言っているメディアもあります。

青井 キャスター:
ーートランプ氏は、事件前からバンス氏を副大統領候補にしていたのですか?

立石 解説委員室長:
段取りを見ていると、おそらくシナリオは描かれていたのだと思います。

青井 キャスター:
ーー山口さんは、“スイングステート”を狙った見方、どのように思いますか?

スペシャルキャスター 山口真由さん:
大統領候補の中には穏健な候補もいましたが、自身の支持層と重なるバンス氏を副大統領候補に指名しました。これは穏健な層の票を伸ばさなくても勝てると考えたと思います。

青井 キャスター:
ーーほかのキーパーソン2人も反トランプだったといいますが、どんな人物なのでしょうか?

立石 解説委員室長:
トランプ氏登場の直後にゲストスピーカーとしてステージに立ったのが、キーパーソンの2人です。

宮司 キャスター:
額にタトゥーのある黒人女性は、ラッパーやモデルとして活躍するアンバー・ローズ氏です。もう1人はトラック運転手による労働組合大手「チームスターズ」の代表・ショーン・オブライエン氏です。

トランプ氏の支持者の様子
トランプ氏の支持者の様子

立石 解説委員室長:
ラッパーのアンバーさんは、かつてはトランプ氏批判を繰り返してきましたが、トランプ氏の経済政策を経て、「子どもたちに豊かな食事を与えるには、トランプ氏しかいない」と投票を呼びかけました。

トラック運転手による労働組合は前回、バイデン氏に投票していました。トランプ陣営は労組や黒人の人々など、バイデン氏の支持が多かった層の切り崩しを着々と行っています。

バイデン大統領が発言を謝罪

青井 キャスター:
ーーバイデン大統領は、厳しい状況ではないでしょうか?

立石 解説委員室長:
バイデン大統領は、これまで支持者らに対して、「トランプ氏を標的(Bullseye)にするべきだ」と発言してきたのですが、昨夜アメリカNBCニュースのインタビューで「(標的という)言葉を使ったのは間違っていた」と話しています。

これまでのような人格に対しての個人攻撃は難しく、民主党は打つ手がないというのが現時点の状況と言えると思います。

青井 キャスター:
ーー大統領選の状況も変化しそうですか?

宮司 キャスター:
実はトランプ氏は、銃撃事件のあと、スピーチ内容を書き換えたということです。

立石 解説委員室長:
当初はバイデン大統領とその政策を批判するものでしたが、「国全体、ひいては世界全体を1つにする」というような内容に変更したと、アメリカメディアに語っています。銃撃後に自身に変化が起きたことも、アピールしていると思われます。
(「イット!」 7月16日放送より)

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