旧統一教会の元信者が「賠償請求を行わない」と署名した念書について、最高裁は11日、女性が認知症と診断されたことなどを理由に、「合理的判断が困難で不利益を与えるものだった」として、念書を無効とした。今回の最高裁の判断は、同じように念書が作成されたケースにも大きな影響を与えることになりそうだ。

「約1億円を違法に献金」と訴える

旧統一教会の高額献金を巡り、元信者が「賠償請求を行わない」と署名した念書について、最高裁は「無効」との判断を示した。

旧統一教会の高額献金を巡る訴訟判決のため、最高裁に向かう原告団
旧統一教会の高額献金を巡る訴訟判決のため、最高裁に向かう原告団
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旧統一教会の元信者だった高齢女性は、約1億円を違法に献金させられたと訴え、教団側に賠償を求めている。

一審と二審は、女性が「賠償請求を行わない」とする念書に署名していたことから、訴えを退けた。しかし、最高裁は11日の判決で、女性が念書を書いた半年後に認知症と診断されたことなどをあげ、「合理的判断が困難であることを利用し、大きな不利益を与えるものだった」と述べ、「念書は公序良俗に反し無効である」との判断を示した。

11日に行われた旧統一教会の高額献金を巡る裁判の最高裁
11日に行われた旧統一教会の高額献金を巡る裁判の最高裁

旧統一教会の献金を巡る念書の有効性について、最高裁が判断を示したのは初めてだ。

一方、信者による勧誘行為の違法性や教団の責任については、改めて検討する必要があるとし、教団側が勝訴した二審の判決を取り消し、高裁で裁判をやり直すよう命じた。

「念書の有効性」が論点に

ここからは、フジテレビ社会部・知野雄介デスクが解説する。

青井実キャスター:
なぜ、最高裁で判決が覆ったのでしょうか?

知野雄介デスク:
最大の理由は、裁判の根幹である念書自体が「無効」だと判断がされたからです。今後、女性側が勝訴する可能性が十分に出てくる、画期的な判決と言えます。

青井キャスター:
改めて、裁判のポイントを見ていきましょう。

宮司愛海キャスター:
裁判の争点は2つあります。1つ目は、「賠償請求を行わない」とする念書の有効性。2つ目は、信者による献金勧誘の違法性です。今回は、1つ目の「念書の有効性」に絞って見ていきます。

一審と二審は、女性が署名していたことなどから、「念書は有効」と判断されました。その後、安倍元総理が殺害された銃撃事件をきっかけに、旧統一教会の献金が社会問題になりました。

女性は裁判中に亡くなりましたが、遺族が「認知症だった可能性があり、念書は無効だ」と主張し、上告しました。一方、教団側は「念書は有効だ」と反論していました。

11日の最高裁での判決では、「高齢の単身者で、半年後に認知症と診断されていて、冷静に判断することが困難な状態にあった」と指摘し、「念書は無効」との判断を示しました。

青井キャスター:
判決に安倍元総理の事件は、影響しているのでしょうか?

知野デスク:
裁判は、法律と証拠に基づくので、事件は関係していなはずです。ただし、これまでも最高裁は、社会情勢や時代の変化に応じて、柔軟に判断してきたと言える。

青井キャスター:
旧統一教会に念書を書かされた人は、他にもいるのでしょうか?

知野デスク:
他にも、念書を書いたケースはあったということです。今回と同じようなケースが裁判であるかどうかがカギになってくる。

勧誘活動、他の裁判などにも影響か

宮司キャスター:
今後、高額献金をさせられた信者の裁判は、増えていくのでしょうか。また、この最高裁の判決がそういった裁判へ与える影響は、どういったものがありますか?

知野デスク:
裁判自体が、増えるかどうかは分かりませんが、法律の世界では、最高裁の判決はその名の通り、「最高」の影響力を持ちます。そのため、他の裁判にも大きな影響が出るはずです。

SPキャスター・パックン:
旧統一教会とは別にも、一般的に、高齢で十分な判断ができない中、念書を書いたケースもあると思います。そのような裁判への影響はありますか?

知野デスク:
あると思います。今回の判決で、念書を無効とする条件を、「冷静に判断することが困難」など複数示しているので、条件に該当すれば、そういった影響もあり得ると思います。

青井キャスター:
この判決が、今後の旧統一教会問題に与える影響はありますか?

知野デスク:
裁判のみならず、現在行なっている勧誘活動や、他の宗教でもどこまでが違法かということに関わってくるので、大きな影響があると言えます。
(「イット!」 7月11日放送より)

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