清水エスパルスは第16節の敗戦を引きずることなく第17節の水戸戦を2対1で勝ち切り、勝ち点は早くも40に達した。

横浜FC戦は指揮官の選手起用がズバリ

完敗を喫した横浜FC戦から先発を2人入れ替えて水戸戦に臨んだ清水エスパルス。1人は8試合ぶりの先発となった白崎で、もう1人が今季初先発となる大卒ルーキーの高木だ。

昨季は中心選手の1人として活躍していた白崎だが、今季は序盤からリザーブに回る場面が多く、第10節から16節までは出場無し。それでも、メンバー選出に忖度や妥協は一切しないという秋葉監督の方針と自身が置かれた現状を飲み込み、己の力を信じてパフォーマンスを磨き続けてきた。

一方、昨季は特別指定選手だった高木は大学卒業を経て今季から正式にチームに加入。身長は173cmとセンターバックとしては決して十分な高さがあるわけではないが、その運動能力と危機を察知する能力が魅力のルーキーだ。

そして、2人の起用は狙い通りの結果をもたらした。

後半8分。白崎は原が右サイドからあげたクロスに完璧に反応し、勝ち越しゴールを挙げた。白崎はこのゴール以外にも、中村とのコンビネーションを活かした守備への対応やチャンスメイクで力を発揮。

高木もまた、身長差がある相手フォワードを危険なエリアで自由にさせないよう、高橋との連動を含めて細心の注意を払ったポジショニングで対応した。

ともに細かい部分での反省を口にしたが、持ち味を存分に出したことで、今後のポジション争いはさらに激化するだろう。そして、それは結果として長いリーグ戦を勝ち抜く上で大きな武器となる。

2人について「迷いなく自信を持ってピッチに送り出した」と話す指揮官は、水戸戦での活躍について「結果は2人の努力の賜物」と喜んだ。

また、水戸戦は矢島がフリーキックで得点を挙げたシーンも印象的だ。

今季、フリーキックで直接ゴールを決めたのはチーム初で、山原以外にキッカーの選択肢が生まれたのは大きい。

さらに、ベテラン・乾が完調に近づいていることも朗報と言えよう。

次節に対戦する山口は、昨季は大勝しているものの今季は6位に位置している。この点について秋葉監督は、指揮官の交代により“野心的な戦略”で戦えていることが変貌の理由と分析。

その上で「相手に合わせるのではなく、自分たちでどうこじ開けるか、どうボールを奪いに行くのかに集中する」と話した。

当週の練習では、攻撃において第3の動きで相手を崩すことに注力。チームが目指す人とボールが動くサッカーを改めて意識付け、守備ではロングボールへの対応術を磨くなど準備に余念がない。

秋葉監督「うれしい悩みは大歓迎」

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-水戸戦の振り返り
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
負けた後の試合は簡単ではないが、サポーター・ファミリーが一緒に戦ってくれるアイスタは、ホーム・聖地・負けない場所、1万7500人あまりの今季最高の観客が集まってくれた。

選手が苦しい中でも我慢強く戦いながら、勝ち点3を獲れた。試合前に「我々には敗戦の後の姿勢やメンタリティが問われている」と話した。その答えを示すことができてよかった。

-先制した後に失点したものの、追加点を獲って勝利した展開をどう考えるか
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
得点の2分後に失点をするのはどうしたものか。得失点後にパワーを使うということや得点は獲るが獲られないということは常日頃から選手に言っている。試合が動いた後の失点はよくないこと。反省点なので、もう一回見直したい。

ただ、その後、悪い流れで上手くいかない時間があったにも関わらず無失点で前半を終えられたし、ハーフタイムに口頭での修正指示をして、選手が体現してくれた。口で言われたことを実際にやるのは非常に難しいこと。出来るのは選手の能力やインテリジェンスの高さだと思う。それでも今後は、ハーフタイムを待たずにピッチ内で修正できるよう目指したい。

-白崎・高木の両選手を先発で起用した理由は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
1週間とか短期間ではなく、これまでの練習・テストマッチを見ていて、トレーニングに対する姿勢やメンタリティなど、いろんなものをトータルして、みんながいい中でさらにいい選手が出てきていた。

間違いなく正しいハイレベルな競争ができている。監督として一番うれしい状態で、彼らは調子がいいし充実していると判断した。迷いなく自信を持ってピッチに送り出した。それは2人の努力の賜物。

-選手の選択肢が広がることで「うれしい悲鳴」とのコメントもあった 
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
うれしい悩みや悲鳴は大歓迎。ただ、前にも言ったが自分は生半可な気持ちで選手を選んでいない。、1試合ごとの出場権を得られるかどうかが選手の人生を変えるので、自分には選ぶ責任があるし、毎週そんな重たい選択をしている。

そのためにしっかりと見て、コーチやメディカル、強化部のスタッフと状況を共有してトータルで判断することが大事。今はクラブを挙げてそうした体制が出来て精度が高まっている。最後の決断は自分だが、様々な角度からのいろんな意見を取り入れて判断ができることがいいところで、とてもありがたいこと。

-次節対戦する山口の印象は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
現在は6位と好調で、去年と違ってボールに圧力が強いチーム。これに屈してボールを奪われてしまうとショートカウンターを簡単に食らってしまう。

また、守備がとても良いチームだとも思うし、11人全員でハードワークするという印象が強い。点を獲らせない、ボールを奪いに行くという守備をするので、そこを我々がどうこじ開けるか、奪われてもどれだけ早く切り替えられるかがポイント。

若い監督で、ボールを速く動かし可変システムも使ってくる。そうした野心的な戦略に対して、それに合わせるのではなく、我々が自分たちでどうこじ開けるか、どうボールを奪いに行くのか、精度を高められるように連動・連携して行きたい。

-アウェイは芝の状態が気になるか
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
これは自分たちにはどうしようもないことだが、選手にはそれをすでに伝えてある。やれる技術や判断力、条件は敵とも同じなので、その中でどんなフットボールができるか、状況に合ったフットボールができることも大事。あまりにも悪いグラウンドなら、それに合わせた戦法もあるので、臨機応変に対応したいと思う。

矢島選手「勝った後をどうするか」

-水戸戦は会心のフリーキックだったのでは
清水エスパルス・矢島慎也 選手:
基本的に怜音(山原)が蹴ると思っていて近寄ったのだが、キーパーが岡山でやっていた時の同僚で(松原修平)で、蹴りたいなという気持ちになった。今年はフリーキックの調子がいい。「怜音蹴る? 俺ちょっと蹴りたいんだけど…」と話したら山原選手が譲ってくれた。自分はそもそもフリーキックをあまり蹴らないし、任されてもいないのでありがたかった。

フリーキックは自分のとの戦い、命懸けるくらいのものだと思っている。止まっているボールを蹴るのは難しい。セットプレーで直接蹴る機会は自分にはあまりなかったので集中して蹴った。北川選手が壁の左側で構えていたので、マーカーのポジション次第でそちらに出す選択も考えたが、相手が意識しているのが見えたので、直接決めることだけ考えた。

ゴールとの距離があって向かい風にもなっていた。弱かったら入らないなと思い、強めに蹴ることを意識した。スピードを求めると壁に当たる確率が高くなる。それは避けようと思った。

-試合ではどんなことを意識していたのか
清水エスパルス・矢島慎也 選手:
まずは(相手に)蹴らせないという意味では、前半は2トップのディフェンスに対し相手は中盤が下りて、最終ライン3枚で幅を作りボールを回してきたので、後手を踏むことになってしまった。上手くサイドハーフを押し上げて縦のズレを起こしたかったが、相手も立ち位置で対応し阻止してきた。後半は修正ができたので、試合としては手応えを感じられた。

-負け試合の後に勝利した意味は
清水エスパルス・矢島慎也 選手:
連敗しないのは当然大事で、ホームで負けないのも大事。上に行くチームはホームで負けないという印象がある。今年のJ2は拮抗していて、毎回2対0、3対0で勝利できる状況ではない。内容を求めるのは大事だが、苦しい中で引き分けるか、負けるかだと、話が変わってくる。

まずはJ2の立ち位置の中でしっかり勝つというのは、すばらしいことだと思う。そこから、さらに勝った後をどうするかというのが大事なのでは。

-昨季まで山口に所属していたが
清水エスパルス・矢島慎也 選手:
1年間だけなのであまり古巣といった印象はない。だから普通に試合をする、多分。メンバーはだいたい知っているが、監督が代わっているので、どうできるかはわからない。自分にそんな記憶はないが、グラウンドは「芝が悪い」とスタッフから聞いていたので対応したい。

高橋選手「一戦一戦大事に」

-水戸戦に関しての感想
清水エスパルス・高橋祐治 選手:
連敗はできないという中だったが、ホームにはたくさんのサポーターが集まってくれた。追いつかれてはしまったが、最後はこちらが点を獲って勝つことができたので、粘り強くチームとして戦うことができて良かった。

先制点を獲った後すぐに失点してしまったことはチームとして反省しなければならないし、点が動いた後の5分や10分は割り切ったプレーも必要だった。ただ、そこは各々わかっているし、繰り返さないようにしたい。もっと自分たちがボールを持って、コントロールする時間が長ければあれば楽に勝った。2対1で勝ったが、3点目・4点目を獲れるようなゲームにできるように日々練習を頑張りたい。

-初めてセンターバックを一緒に組んだ高木選手の印象は
清水エスパルス・高橋祐治 選手:
高木選手の特長である後ろのカバーリングだったり、ビルドアップのところは力を発揮できていたのではないかと思う。リーグ戦は今季初出場だったが、堂々とプレーをしていて、すごいメンタリティだなと思ったし、大きな選手になっていって欲しいし、これからが楽しみ。

アドバイスは特にしていなくて、「思いっきりやってこい」と言った。毎日一緒に練習をやっていて、とてもいいパフォーマンスをしていたし、意思疎通も取れていたので問題なくできていた。

チームが強くなるためには中でのポジション争いが大事。どこのポジションでも切磋琢磨している、もっと激しい争いができるといい。

-山口戦に対しては
清水エスパルス・高橋祐治 選手:
フィジカルで戦うところなど、やることをしっかりやってくるし、ロングボールを蹴ってくる。後ろのはね返しは重要なポイントとなってくる。そこは意識してやりたいし、アウェイでもあるが一戦一戦大事に勝っていきたい。

白崎選手「やるべきことだけ集中」

-水戸戦での決勝点を振り返って
清水エスパルス・白崎凌兵 選手:
ヘディングはそんなに得意ではないが、試合では割と決めている。原選手からいいボールが来て、枠に飛ばすだけで軌道が良く入った。まだ後半始まって早い時間だったが、勝ち切ることに集中した。ちょっと出来過ぎだが、頑張っていればいいことあるなと思った。

-8試合ぶりの先発はどんな気持ちで試合に入ったのか
清水エスパルス・白崎凌兵 選手:
久しぶりの先発。いろんなことや葛藤があって、これまで試合に出ていた分、出られない選手がどうトレーニングしていたか一歩引いで見ることができたのは久しぶりだった。無駄にしないようと練習も頑張ってきた。練習でいいパフォーマンスを見せていた。そういう苦しい時間を一緒に過ごしてきた仲間や家で支えてくれていた家族に恥じないプレーをしようとピッチに立った。

(試合に出られないことに)最初は納得できない部分もあったが、早い段階で「じゃあトレーニングで見せればいいでしょ」と気持ちを切り替えた。紅白戦でも自分たちが勝つようにやってきたし、それが逆に試合に出ていた選手へのいい刺激になったと思うし、一喜一憂せずに自分がやるべきことだけに集中するように練習をしていた。

-次節・山口戦をどう戦うか
清水エスパルス・白崎凌兵 選手:
水戸戦は最後に押し込まれる時間もあったので課題が残った。そこはまだまだ修正しないといけない。山口戦は勝ち続けることに意味がある。苦しい試合であっても、勝っていくことで目標に通じる、我々はまだ何も勝ち取っていない。

高木選手 先輩からの助言を力に

-改めて試合に出場した実感は
清水エスパルス・高木践 選手:
初先発ということで非常に緊張していたが、こんなに大勢のサポーターの前で試合をするのは初めてだったので、こんなところでプレー出来て、勝ててよかったというのが正直なところ。自分への声援も聞こえてきたし、それを作ってくれたことを含めてうれしかった。

-試合ではどんなプレーを目指したか
清水エスパルス・高木践 選手:
水戸は裏に蹴ってくるボールが多いという分析を聞いていたので、それを警戒して高橋選手と一緒に対応していた。権田選手とはラインコントロールや右左・一歩の足の出し方の修正をやりとりしていた。

身長差があるフォワードをマークしていたが、競り合いでは早く飛ぶことで勝つ自信があった。対人プレーでは近づき過ぎず、トラップした瞬間に飛び込むことを狙っていた。フルタイム出場できなかったことは悔しかった。また、失点したのは自分の弾きが小さかったことを反省している。

-今日の練習ではレギュラー組に入っていたように見えた
清水エスパルス・高木践 選手:
急遽入っただけでレギュラーではないと思う。その中で、先輩からはいろんなアドバイスをいただいた、ありがたい。練習中に1人では修正できないところがあって、先輩からの言葉は助かる。ポジショニング1つとっても、このチームのやり方がある。まだ自分は絡めてないので、まだ合っていないところを確認できた。

-昨季は山口戦に出場した
清水エスパルス・高木践 選手:
Jリーグデビューだったので、試合会場とか鮮明に覚えている。大量リードしていたし、(雷雨による)試合中断時間が長かったことが逆に緊張をほぐしてくれたので、比較的楽な気持ちで出られた。そういった場所で、またプレーできるように頑張りたい。今季は上位にいて状況は違う。そこはきっちりと気を引き締めてやらなければならない。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

テレビ静岡
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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。