国内では初となる6人制バレーとビーチバレーの「二刀流」に挑戦する熊本・鎮西高校出身の水町泰杜選手(22)がVリーグでのシーズンを終え、2024年4月に初めてビーチバレーの練習に臨んだ。水町選手が二刀流に挑戦する理由に迫る。
川合俊一氏も期待 水町「自分らしく」
2023年12月、Vリーグ1部のウルフドッグス名古屋と、ビーチバレーチームトヨタ自動車への同時入団会見に臨んだ水町泰杜。本格的なインドアとビーチとの二刀流挑戦は国内では初のケースとなる。
この記事の画像(10枚)トヨタ自動車ビーチバレーボール部の川合俊一GMは「冬はバレーボール、夏はビーチバレー。初めて日本で本格的な大学のスーパースターが“二刀流”を選んでくれたということで、本当にすごい決断だったと思う」と期待を寄せた。
水町は「初めての挑戦で、どういうふうにやっていくか先は見えないが、自分らしく明るく、自分にできることを精いっぱいやっていきたい」と観客に決意を語った。
高校大学日本一 Vリーグでも鮮烈デビュー
熊本県の名門・鎮西高校で1年の時からエースとして活躍した水町は、夏のインターハイや春高バレーだけでなく、進学した早稲田大学でもチームの日本一に貢献してきた。そして2024年に入ると念願のVリーグデビュー。2月のホーム戦では、強豪パナソニックとの大一番でついにスタメンデビューを飾った。
強烈なスパイクだけではなく、日本代表・西田有志のスパイクをシャットアウトするなど、ルーキーとは思えない堂々としたプレーを披露。観客を幾度となく沸かせた。圧巻だったのは得意とするジャンプサーブ。次々とサービスエースを叩き込み会場からは万雷の拍手が沸き起こり、まさに「水町劇場」だった。
実況が「川合俊一トヨタ自動車ビーチバレー部GMが『2年頑張ればビーチで日の丸を付けられる』と言った」と説明すると、解説者の元日本代表・佐々木太一さんは「6人制を見ている我々からしたら、こっちで全日本に入ってほしい」とインドアでの日本代表入りに期待を寄せた。その後も水町はチームの攻撃の柱として出場を重ね、バレーファンに「Vリーガー水町泰杜」の存在を強く印象付けた。
ビーチバレーボーラー水町泰杜始動
Vリーガーにとってはオフシーズンに入った2024年4月、水町は休む間もなく新たなチャレンジを始めた。水町は「全てが不安。ルールもちゃんと分かっていないし、試合がどう行われていくか分からないし、でもその不安よりも楽しみの方が勝っているかな」と第一歩を踏み出す心境を語った。
全天候型のビーチコートを持つトヨタ自動車。男女8人の選手が所属しているが、世界各国を転戦中の選手が多く、この日は先輩の進藤涼選手とともに練習に励んだ。ネットの高さはインドア競技と同じで、コートの広さは片面で縦・横ともに1メートル短い8メートルずつ。ボールは大きさこそほぼ同じだが、柔らかい素材で空気圧が低く弾きにくくなっている。
水町は砂のコートに苦戦し「力強く踏んでジャンプができない。歩くだけで疲れる」と話すものの、「感覚的にすごく踏めているときと全然踏めていない時もあって、そこの感覚がつかめて自分でコントロールできるようになると面白くなるんじゃないか」とビーチバレーの楽しさも実感した様子だった。
一緒に練習した進藤涼選手は水町の印象について「元気がある大学生って感じ。スパイクのパンチ力はかなりあると思うので期待している」と話し、尾﨑侯コーチも「スパイク一つ、レシーブ一つ、十分世界で戦えるレベル」と太鼓判。「まずはオリンピックを目指して、ビーチでもメダル、インドアでもメダル、そこを目指してサポートしたい」と今後の活躍に期待した。
「6人制とビーチの懸け橋に」
ビーチバレーはインドアとは似て非なる競技。それでも挑戦する理由について水町は「海外ではインドアとアウトドア両方やっている選手も多くて、日本は2つのスポーツに壁というか、同じバレーボールのカテゴリーとしてもう少しつなげられるんじゃないかと思う。二刀流が成功する・失敗するはさておき、自分が納得するまでやりたい。競技的に長く続けられるのは絶対ビーチバレーだと思うので、インドアは最近盛り上がってきているし、僕はどっちかというとビーチを頑張りたい」と話す。
5月1日、水町は1人スロベニアへと旅立った。ビーチバレーのスキルアップはもちろん、今後、水町とペアになりうる海外選手とのマッチングなどを目的に6月中旬まで武者修行を行う。水町は「もっとメジャーなスポーツになってお酒を飲みながら試合見てワイワイ楽しむ。その中で“この人のビーチバレー面白いな“と思ってもらえるように、そこが一番大きい。きついこともあると思うが、僕のキャラだからできると思っているので、きついことには耐える自信があるので、頑張ってやっていこうと思う」と将来像を語った。
ビーチバレーをもっと身近に。インドアとアウトドアの懸け橋になるべく、新たなスタートを切った水町泰杜。現在開催中のジャパンツアーの一つ、9月20~22日に行われる第6戦グランドスラム名古屋大会でのデビューを目指している。
(テレビ熊本)