老朽化によって解体と移築が決まった静岡市清水区にあるカトリック教会の聖堂の解体作業が進められている。解体によって約90年前の建築技術が明らかになり、専門家からは驚きの声もあがった。
保存に向けた解体進む

静岡市清水区の幹線道路沿いにそびえる2つの尖塔(せんとう)。カトリック清水教会の聖堂だ。今から約90年前の1935年、フランス人宣教師の設計のもと、当時の清水の船大工たちが建築に関わったと言われている。

聖堂は、西洋のゴシック様式と日本の木造・漆喰技術の融合が歴史的な価値を高めているとされているが、老朽化は深刻で、2024年7月末までに解体される予定だ。保存を求める市民たちは、聖堂を無償で譲り受け、別の場所への移築を計画している。

聖堂を設計した宣教師の命日である2023年12月8日には解体前の最後のコンサートが開かれ、多くの人が聖堂に響くピアノの音色を楽しんだ。
2024年1月から本格的な解体工事が始まり、4月中旬には内部の半分ほどの漆喰が剥がされ、木造の柱や壁が姿を現していた。
技術の高さに改めて驚嘆

壁には木摺(きずり)と呼ばれる薄い板が均等に漆喰で貼られ、船底をひねったような屋根の3次曲線も明らかになり、建築の専門家たちも当時の建築技術に驚きを隠せない様子だった。

現場を視察した建築士の永田章人さんが「3次曲線、捻ってあるのがよくわかる。すごいね、これは」と感心すると同行した聖堂を活かす会の松永理事も「こう見ると上にあった時と違うね。やっぱり、これはいい!」と間近でみる建築部材の仕上がりの見事さに驚いていた。

カトリック清水教会聖堂を活かす会・松永和廣 理事:
我々はこれ(聖堂)を残しておかないと。昭和の初めの頃の職人さんの技術というのはどんどん建物が壊されてなくなっていますが、これ(聖堂)を残すことによって10年、100年後の人たちが、こういう資料を基に「昔の人はすごかった、こういう技術があった」と伝えるのに重要な建物だと思っています
聖堂の完全な解体は7月末を予定しており、内部は工事現場と化している。
記憶に残していきたい内部の装飾品
ところで、礼拝に使われていた家具や装飾品はどこに行ってしまったのか…。

JR静岡駅前の松坂屋静岡店。こちらでは聖堂の解体作業に伴って保管されている装飾品の展示会が先日まで開かれていた。

松坂屋静岡店・木庭英之さん:
こんなすごいものがあって、今まさに解体を始めているという段階で、皆さんの記憶に残していきたいということで、駅前の立地を活かして展示を企画したいと考えました
会場には祭壇や聖母マリア像、それに職人によって丁寧に剥がされた柱の漆喰の装飾など約40点が展示されていた。
移築への課題も残る

聖堂の内側の木造部分の設計図は存在しておらず、活かす会は移築に向けて天井や壁の木造部分を装飾品とともに慎重に保管している。

解体後、新しい聖堂はいつ、どこに再び姿を現すのか…。
期待は膨らむが、移築費用や場所の選定など課題も多く聖堂を活かす会では多くの人に理解と協力を求めている。
(テレビ静岡)