掛川市では2026年度から小学1年生から3年生までの通知表を廃止する。これは県内の自治体としては初めての試みだ。その背景には市教委が目指す教育改革がある。

県内の自治体では初の通知表廃止

子供たちの学習成果や生活態度などを記した通知表。

保護者にとっては我が子の学校での様子を知ることができる貴重な手段だ。

インタビューに答える児童(掛川市内)
インタビューに答える児童(掛川市内)
この記事の画像(7枚)

この通知表をめぐり、掛川市教育委員会は2025年9月に大きな決断を下した。

それが1年生から3年生までの”通知表廃止”で、掛川市教育委員会の小関昌典 課長は「代わりに三者面談という形で子供たちの学びの成果を価値づけたい」と話す。

これまで社会状況の変化を踏まえて小学校における教育の在り方について見直しを進めて来た掛川市教育委員会。

その一環として、市内にある21の小学校すべてで2026年度から3年生までの通知表を取り止めることを決めた。

インタビューに答える保護者(掛川市内)
インタビューに答える保護者(掛川市内)

保護者の中には「学校の中の様子があまり分からないので通知表はあった方が本当はいい」といった意見もあるが、なぜこの決断に至ったのだろうか?

通知表の作成は教師の大きな負担に

掛川市立第一小学校。

2学期制を採用しているこの学校ではこの日、通知表の作成事務が行われていた。

職員室の様子(掛川市立第一小学校)
職員室の様子(掛川市立第一小学校)

平野理枝子 教頭は「ひとりひとりの子供の良さをどれだけ成績に表していくか、どの教員も慎重にいろいろ情報交換をしながらやっている」と説明する。

ただ、授業の準備や普段の事務作業に加えて行う通知表の作成は、教師にとって負担となっているのも事実だ。

特に年度末は1年間の学習成果を児童ごとにまとめ次の担任に引き継ぐ必要がある。

教育現場で進むDX化

そこで掛川市の小学校が通知表の代わりに活用するのが4年前から導入している学習支援アプリだ。

アプリには子供たちが解いたドリルやテストなど様々な学習データが蓄積されていて、何が得意で何が苦手なのか教科や単元ごとにAIが分析し、データやグラフとして示してくれる。

このため、理科を専門としていた掛川市教育委員会の佐藤 嘉晃 教育長は「物理は得意だが地学が苦手という子供がいる。1学期間で物理は5だけど地学は2といった時に評価はどうなるかというと真ん中の3をとるようになる」と自らの経験を振り返った上で、「(アプリを使えば)AIカルテで細かく子供たちに『ここができている』としっかり伝えられる。子供や保護者はそれ(AIカルテ)を見て『ここが得意だからもっと伸ばそう』という話になるので、DXを活用して子供の良さや可能性をもっと伸ばす方向に切り替えていく」と強調する。

AIデータをもとに対話を深める

掛川市ではこうしたAIによる分析をもとに、児童や保護者との三者面談を通して子供たちの苦手克服や学習意欲の向上につなげていきたい考えで、保護者も「仕事でAIは使うし、客観的なデータとして見せてもらった方が親としては今後どうするかをいろいろ考えられる」「(通知表の)項目で良く分からないところがあった。面談でしっかり話を聞けるのは分かりやすくなって良い」と好意的に受け止めている。

インタビューに答える保護者(掛川市内)
インタビューに答える保護者(掛川市内)

また、掛川市立第一小学校の菅沼一浩 校長も「この5年ほどで、全国各地の小学校でも(通知表を)無くしている学校も出てきているので私も情報を集めていた。いよいよ掛川市も、その方向に踏み切る。対話をもとにコミュニケーションを深くしていき、子供たちのパフォーマンスをより事細かに保護者や子供本人に返していくことになると思う」と期待を寄せる。

DXを活用した掛川市の教育改革。

この取り組みがどのような成果をもたらすのか、他の自治体からも注目されている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

静岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。