熱帯夜の寝苦しさから和らげ、快眠を手助けしてくれそうな新たな「アイス枕」が誕生した。
それが、アトム技研株式会社(愛知・名古屋市)が開発した特殊低温保冷剤“アイスエナジー”を使用した「アイスエナジークールピロー」だ。「大人の日常使いにふさわしい、保冷性能、フィット感、寝心地、デザイン性すべてにこだわった」という。
枕は5本のジェル状の保冷剤で構成し、体の形状に合わせて、端を折り畳んだり、曲げたりすることが出来る“ジャバラ構造”が特徴だ。縦横どちらでも使用可能で、横に使えば寝返りを打っても頭がずり落ちず、縦に使えば後頭部から肩までフィットすることができる。
使い方は簡単。5本の保冷剤を冷凍庫に6時間以上入れ、凍ったら付属の枕カバーにしまうだけ。
なお心地よいフィット感を生み出すために、5本の保冷剤は2種類の硬さ(ハードタイプ・ソフトタイプ)と3種類の重量(200g・350g・400g)を組み合わせている。400gのハードタイプ(黒)が2本、350gのソフトタイプ(赤)が 2本。そして、200gのソフトタイプ(黒) が1本だ。
保冷剤の入れる位置を変えるだけで、さまざまな使い方や寝方に合ったフィット感を生み出す事が出来るようになっているとのこと。枕としてだけでなくスポーツの際に体を冷やしたい時に1本で使ったり、巻きつけてフィットさせたりといった使い方もできる。
吸水性と肌触りを追求した付属の枕カバーは、下着にも使われる接触冷感生地を採用。結露が出にくい吸水速乾生地で、薄くても寝具が濡れにくいとのことだ。
また同社のテストでは、室温平均28度の環境下で枕中央部の表面温度は4時間以上10度以下を維持、20度以下を7時間維持できたという。
大きさは38cm×22cmで、一般的なアイス枕の約1.5倍のサイズ。大人の男性が使用するのに十分な大型アイス枕となり、肩まで広範囲に冷却できるという。
一般販売予定価格は1万6500円(税込み)だが、6月30日までは応援購入サービス「Makuake」で割引価格での先行購入が可能となっている。なお、7月からはアトム技研のウェブサイトで販売を行う予定とのことだ。
「いかに快適に睡眠が取れるようになるか」
「アイス枕」といえば熱があった時に使うイメージがある。そんな中で、なぜ日常的に使うアイス枕をという考えになったのだろうか?
アトム技研株式会社の水野博之代表取締役に話を聞いた。
ーーそもそも「アイスエナジー」とはどんな保冷剤?
普通の保冷剤の多くは、水と高吸水ポリマーのみで作られたものです。アイスエナジーは、水と食品添加物(塩類他)のみで作られた安全安心素材で作られたものです。
技術的な特徴は、他の保冷剤と比べ熱交換率が高い商品です。保冷剤は冷たいけれど、モノが冷やされず溶けていることが問題となっていました。熱交換率が高いと、温度が高くなろうとするモノや人から熱を奪い、本来あるべき保冷剤の役割を果たすことになります。モノや人を冷やすことをより冷やすことになります。
技術面での第三者評価、コンセプトデザイン面での第三者評価として、令和3年度名古屋市工業技術グランプリにおいて、公益財団法人名古屋産業振興公社理事長賞を受賞。2020年のグッドデザイン賞も受賞をしております。
ーーなぜアイスエナジーを使って、普段使いのアイス枕を作ろうとなった?
コロナ禍において、アイスエナジーをご購入されたお客様や弊社社員から「アイスエナジーをアイス枕として使ったところ、冷たさが長持ちしてとても良かった」という声を沢山いただきました。そこで、私も以前から感じていたアイス枕に対して改善したい点も多くあったため、アイス枕利用者に対して不満点や改善点、妥協点などをお聞きしました。すると、改善点として「大きさ、形状、硬さ、冷たさ、タオルの利用」などが挙げられました。発熱している時、アイス枕で熱を下げられず寝入るまでが辛いという声も多くありました。
そこで、暑い日や熱が出ている時でも、いかに快適に睡眠が取れるようになるかを第1重要項目として開発を行いました。
ーーこだわった部分を教えて。
「フィット感」にこだわりました。一般的なアイス枕は、1枚の板のような形状となっていて、同じ形が主流です。アイスエナジークールピローは、人はそれぞれ首の高さが違うため、より多くの方にフィットするカスタマイズ可能なまくらに仕上がっています。
縦でも横でも利用できるデザインになっており、縦使いは関係者の中でもとびきり好評で、肩まで冷えてとても気持ち良いという感想が多かったです。
「利便性」にも注目しこだわりました。一般的なアイス枕は、冷凍庫で邪魔者扱いされがちです。私の自宅でもそうでした。アイスエナジークールピローは、冷凍庫の隙間でも凍結できるよう1つ1つを小さなものにし、冷凍庫でも邪魔者扱いされにくい商品に仕上げています。
さらに、一般的なアイス枕は、利用する際にタオルを使い結露対策することが一般で、タオルの厚さで冷たさが伝わらないという声も多かったです。タオルを薄くすると寝具がびしょびしょになるという声もありました。それらを解決するために特殊な専用枕カバーを作りました。
表面は接触冷感素材を利用し、裏面は拡散布と言われる吸水素材生地を採用。これにより結露しても寝具等が濡れにくい状態にしています。表面から伝わる温度も重要項目としていたため、何十種類もの試作を行い、最適だと感じる生地および厚みになっています。
なお他にも、大人の男性がちょうど良いと感じる「大きさ」、硬さを好みの位置に合わせて調整できる「保冷剤の柔らかさ」、アウトドアやスポーツでも利用できるようなデザインにすることでの「利用用途」など、いくつものこだわりを詰め込んでいるという。
何十もの試作品を作った末の構造
ーー自由自在の形にできる“ジャバラ構造”というアイデアはどこから?
弊社は、業務用でも利用されているため、いろいろな要望が多くのお客様から届きます。その中で、酒瓶を冷やす際に複数の保冷剤を巻き付けることがありました。そこからヒントを得て、ジャバラ構造であれば、頭の丸みにフィットし、首の高さにも調整できるようになるというアイデアが生まれました。
ーー保冷剤の本数や硬さはどのように決めたの?
弊社社員が誕生日にオリジナル枕を作りに行くということで一緒について行きました。その際、さまざまな素材を使ってオリジナル枕を作っているのを拝見し、アイス枕でも同じような商品があって良いのではないかと思いました。
そこで、2本、3本、4本、5本、6本といろいろな商品を作り、大きさ、重さ、形、素材など何十もの試作品を作り、5本が良いということになりました。また硬さが異なるのも、硬いまくらが好きな方、柔らかい枕が好きな方がおります。他にも縦使いした際に肩に当たる部分は柔らかい方が良い、また首にフィットするのに程よい高さを出すためなど、柔らかさや内容量を追求した結果となります。
今までのアイス枕にはなかった寝心地
ーー現在、どのような声が届いているの?
今まではタオルを巻いて利用していたが、冷たくなかった。タオルを巻かずに利用でき、冷たさを感じられるというのは画期的。
今までのアイス枕に対して不満をもっていた部分が改善されていて、ユーザー目線で開発していただきありがとうございます。
クーラーが苦手だったため、この商品があれば快適に熱帯夜を過ごせそう。
など、ユーザーが改善してほしいと思っていたところを改善している点が反響を呼んでいます。
そういった反響を素直に嬉しく思います。今後も商品開発を行い、さまざまな方々の意見を聞きながら保冷剤で変えられるライフスタイルを作っています。
ーーどんな人にオススメ?
大人の男性をターゲットとして開発した商品となっていますが、夏場のクーラーが苦手で、寝入ることが辛い方には特にオススメです。
冷たさはもちろん、気持ち良いと感じる“柔らかさ”を体験できるとのことで、水野さんは「今までのアイス枕にはなかった寝心地を体験できます」と話している。
夏の暑い夜を快適に過ごす1つの方法として、自分にフィットした形にできる「アイスエナジークールピロー」を検討してみるのも良いかもしれない。