私たちの安全な暮らしや命を守る“真っ赤な車両”がキッチンカーに変身し話題となっている。意外な変身をさせたのは秋田・横手市の居酒屋の店主。ユニークなアイデアの裏には、味へのこだわりと店主の熱い思いが込められている。
幅広い年代の人に自慢の味を
横手市十文字町のスーパーマーケットの店先で、焼き鳥を販売しているキッチンカー。このキッチンカー、実は「消防車」だ。

店を切り盛りするのは、齊藤雄亮さん。高校卒業後、飲食業界に飛び込んだ齊藤さんは、秋田市のイタリア料理店などで腕を振るい、4年前に地元・横手市十文字町に居酒屋をオープンさせた。

夢だった自分の店を営業するうちに、幅広い年代の人に自慢の味を届けたいという思いを抱くようになり、キッチンカーの出店を決意した。
しかし、なぜ「消防車」をキッチンカーにしようと考えたのだろうか。その理由は、齊藤さんが“消防団”に入っているからだ。「目立つ消防車をキッチンカーにした」と話す。
ほぼ当時のままの設備には熱い思いが
齊藤さんはオークションで中古の消防車を落札し、1年ほどかけてキッチンカーとして使えるように改造。2023年12月にようやく営業開始にこぎつけた。

齊藤雄亮さん:
元々あった消防設備を取り出すまでスペースがわからない。その寸法を1cm単位で測りながら備品を決めるのが、ものすごく時間がかかった

営業中のユニホームは消防士の活動服をイメージしたもので、胸元には店の名前からとった部隊名を入れるこだわりようだ。
さらに消防車の設備はほぼ、消火活動に使われていた当時のままだ。そこには、団員の減少が課題となっている消防団に対する齊藤さんの熱い思いが込められている。

齊藤雄亮さん:
消防車両を、小さい子どもたちに触って見てもらって、実際にどういうものを使っているのか触れる体験をしてほしい。未来の消防団につながればという思いで設備はそのまま残している
「消防団に興味を持ってもらいたい」
車両だけでなく、もちろん焼き鳥の味にも妥協はない。

使用する鶏肉は岩手県のもの。鮮度の良いものを厳選し、注文が入ってから焼くことでジューシーに仕上げている。
この日も、香ばしい香りと物珍しさに誘われて、次々と客がやってきた。

初めて利用したという買い物客は「スーパーの店内で食事をしていて『あれ?』と思って来てみた。消防車のキッチンカーはびっくり。でも、ありかなと思う」と話していた。

「今後は子どもたちが集まるイベントに出店し、消防団の仕事に興味を持ってもらいたい」と意気込む齊藤さん。
自慢の味と消防団への思いを乗せたユニークな相棒とともに、走り続ける。
(秋田テレビ)