栃木・那須町で夫婦の焼損遺体が発見されてから2週間が経過して、事件が再び動いた。1日未明、実行役とみられる元俳優の男ら2人が、相次いで逮捕された。事件の今後のポイントについて専門家が解説するーー。

現場に行った実行犯逮捕は初

東京・大崎警察署から1日未明に現れた黒ジャケット姿の男は、警察車両に乗り込んでからも視線を上げることはなかった。

そして、もう一人は午後0時45分頃の東京・田園調布警察署で、こちらも実行役とみられている黒いパーカーを着た男が、うつむきながら警察車両から降りてきた。

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栃木・那須町の河川敷で、宝島龍太郎さん(55)と妻の幸子さん(56)の焼けた遺体が、見つかった事件。死体損壊の疑いで、韓国籍の姜光紀(かん・ぐぁんぎ)容疑者(20)と、元俳優の若山耀人(わかやま・きらと)容疑者(20)が、新たに逮捕された。

2人は、4月16日、栃木県・那須町で、宝島さん夫婦の遺体に火をつけた実行役とみられている。現場に行った実行犯が逮捕されるのは、初めてのこと。

事件をめぐっては、合わせて4人が逮捕されたことになるが、捜査の結果、判明した役割はこうみられている。

4月21日に逮捕された、平山綾拳容疑者(25)は、指示役とみられる佐々木光容疑者(28)から指示され、犯行に使用する車や、ガソリンなどを用意。

事件前日の夜9時半ごろ、都内のコンビニを訪れた平山容疑者と、2人の実行役が合流。この2人が姜容疑者と若山容疑者とみられている。

平山容疑者の依頼を受けた2人は、事件当日の午前0時頃、宝島さん夫婦と都内の空き家で接触。何らかの暴行を加え、平山容疑者の車で、那須町の遺棄現場に向かったとみられる。

実行役とみられる2人と宝島さん夫婦に面識はないとみられている。

平山容疑者は、新たに逮捕された2人との関係について、「渋谷のクラブで知り合い、その後何度か酒を飲んだ」と供述している。

捜査本部は、平山容疑者に指示を出したとみられる、佐々木容疑者のさらに上に、別の指示役がいる可能性があるとみて、調べを進めている。

元刑事の佐々木氏の見立ては?

新たに実行役とみられる20歳の男2人が逮捕された事件だが、これまで逮捕された4人の役割分担が取材で見えてきた。

新たに逮捕された若山容疑者と姜容疑者は、宝島さん夫妻の遺体が発見された栃木・那須町の現場に行った“実行役”だという。気になるのはこれまで逮捕された平山容疑者と佐々木容疑者との関係だ。

平山容疑者の供述によると、若山容疑者と姜容疑者は2023年末頃、渋谷のクラブで平山容疑者と知り合いその後「何度か飲んだ」関係だという。

既に逮捕されている佐々木容疑者と平山容疑者は、2024年2月~3月頃に渋谷のクラブで知り合ったという。

佐々木容疑者、姜容疑者、若山容疑者と次々と逮捕されたのはやはり平山容疑者の逮捕が大きかったのだろうか。

埼玉県警捜査一課・元刑事の佐々木成三氏はこう指摘する。

佐々木成三氏:
平山容疑者は佐々木容疑者から指示を受けた後に、姜容疑者と若山容疑者に”死体遺棄”を依頼したわけだが、一般的な考え方であれば2人は断るだろうし、警察に通報する可能性もある。にも関わらず、連絡をしているということは、犯罪を一緒にやろうという意図が感じられる。

では、若山容疑者・姜容疑者2人はどのように事件に関与したのだろうか。

4月15日午後9時半頃、平山容疑者が自分の車で品川区内のコンビニに行き、そこでその車を貸したのが、若山容疑者と姜容疑者だった。

その後、16日午前3時半頃、平山容疑者は、五反田の居酒屋で佐々木容疑者と合流。平山容疑者の供述によると、その際に佐々木容疑者から1000万円以上受け取ったという。

一方、宝島夫妻が暴行されたとされている都内の空き家に行ったのが 若山容疑者と姜容疑者とみられている。そこで、宝島さん夫妻と約2時間、一緒にいたとみられる。

その後、若山容疑者と姜容疑者は、平山容疑者の依頼で、遺体発見現場に向かったという。

若山容疑者と姜容疑者が、暴行現場の空き家と遺体が発見された那須町の、2つの現場に行っていたことが分かったのだが、宝島さん夫妻の死亡にも関与した可能性はあるのだろうか?

佐々木成三氏:
被害者と顔見知りではないと話している2人が、暴行現場の空き家に宝島夫妻がいることをどのように知ったのか?となると夫妻が空き家にいることを知っている人物が、2人をこの場所に誘導した、ということが考えられる。つまりは、この容疑者4人だけでは、この事件は実行できないと思う。

4人以外の別の人物が黒幕か

佐々木容疑者から平山容疑者に1000万円以上、一方で平山容疑者は、姜容疑者に報酬を支払ったとも供述しているが、この逮捕された4人はお金でつながった関係だったのか?

佐々木成三氏:
容疑者4人は金銭で繋がっている。佐々木容疑者と平山容疑者は分からないが、平山容疑者と実行犯の容疑者2人の関係性はあまり深くないと考えられる。犯罪組織としては、関係性が深ければ深いほど、捕まるリスクが高くなる。

ここで気になるのは、宝島さん夫妻がなぜ暴行現場の空き家に行くことになったのか?

宝島さん夫妻の移動経路を見ると、事件前日の4月15日夜、東京・上野で2人の人物に連れられレンタカーに乗り込んでいて、このとき抵抗する様子はなかったという。

その後、東品川で知人らと物件探しをしていたことが分かっているが、死亡した宝島夫妻が、その後 暴行現場となった空き家にどのように行ったかは分かっていない。

佐々木成三氏:
一部報道で言われているように宝島夫妻が品川区の物件を見たいと申し出たとすると、この情報を入手したことで今回の犯罪計画が始まったのだと思う。
(暴行現場の)空き家に2人が自分の足で歩いて行ったという話もあるが、これが事実だとすると、この空き家に行く予定があったのかと思う。その予定を知っている人物が捜査上、とても重要になってくると思う。

事件の構図が見えてきたが、警視庁は指示役とみられる佐々木容疑者の上にさらに指示役がいるとみていて、4人以外の別の人物が黒幕とみている。

その黒幕に関して新たに分かってきたことがある。佐々木容疑者によると、「ある人から4月初旬に非通知で『処理してほしい』と連絡があった」という。

おそらく“処理”とは、死体を処理する仕事だと思われるが、依頼された佐々木容疑者は「やる人を探します」と答えた。

それが今回の事件の始まりだと話しているそうだ。佐々木氏は「計画性」や「ある人」についてこう指摘する。

佐々木成三氏:
非通知電話で「処理をして欲しい」という指示を受けて、実行までする…。
これは、佐々木容疑者がある程度、そういった“闇の仕事”に関係するポジションにいた人物だと思う。「非通知で電話」をかけてきた人物が黒幕の可能性が高い。

宝島夫妻を殺害した実行犯の犯人像は?宝島夫妻を殺害する目的は?まだ多くの謎が残っているが、今後の捜査のポイントについて佐々木氏はこう分析した。

佐々木成三氏:
今回の事件、夫妻を殺害した後の行動がずさんに感じる。逮捕されている4人が殺害にも関与しているとなると、もっと雑になると思われる。なので、被害者を誘導した人物の特定が、捜査の重要なポイントになる。

事件に関与している人物は「まだ数名いる」と佐々木氏は指摘する。今後の捜査はどうなっていくのか、注目が集まっている。
(「イット!」 5月1日放送より)