教育・文化やスポーツなど、様々な分野で愛媛に貢献した個人や団体をたたえる「テレビ愛媛賞」。愛媛県宇和島市を拠点に創作活動を行っている世界的アーティスト・大竹伸朗さんを紹介する。

「わからない」を理解しようとしてきた軌跡が作品に

道後温泉本館の保存修理工事のために建物を覆っていたカラフルなテント膜。この作品を手掛けたのは、宇和島市を拠点に活動を行う画家・大竹伸朗さんだ。

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大竹さんは、世界で最も古い歴史を持つ国際美術展ヴェネチア・ビエンナーレに参加するなど、その独創性あふれる作品が海外でも高く評価されている。

大竹さんは「僕の場合は、使用するメディアが例えば油絵とか彫刻とか1つに限らないというのがすごく極端なタイプだと思うんですよね」と話す。

大竹さんの作品は、表現技法も用いる素材も様々で、古い写真や印刷物、時には捨てられるはずだった廃品が使われることもある。

≪時憶/フィードバック≫という作品では、鉄やステンレスなどの金属も材料に使われている。下の方に取り付けられた円盤は回転し、作品の中に「動き」も取り入れられている。

大竹さん:
例えば街中の壁のシミとか、廃虚の工場とか、そういうところに出会うと作品が浮かぶっていうことが多いですね。自分がわからないものに出会う瞬間が日常の中にいっぱいあって、わからないことに出会うと作ることでわかろうとするっていう

ジャンルにとらわれない作品の数々は、大竹さん自身が感じる「わからないこと」を理解しようとしてきた軌跡でもあるのだ。

愛媛への移住が作品にも影響

大竹さんは東京都出身だが、1988年に妻のふるさとである宇和島市に移住。

それから約35年、宇和島のアトリエで作品を作り続けている。移住してから作品にも変化が生まれた。
大竹さんは「まずサイズ。あとは音は出せるし」「そういった都会にはない環境の中で何が自分はできるのかとか、そういった方向にどんどん行きました」と語っている。

≪ダブ平&ニューシャネル≫は、空間を利用した大きな立体作品だ。
巨大なステージのような箱の中にギターやベース、ドラムなどの楽器がセットされていて、遠隔操作で演奏も可能となっている。まさに場所と音の制約がないからこそ作ることができた作品だ。

目標は“ない”「作りたい気持ちが起きてくるかどうか」

愛媛での活動が始まって35年。

改修中の道後温泉本館のテント膜の原画を担当したり、2023年には大竹伸朗展を愛媛県美術館で開催したりするなど、愛媛県内の人に作品を触れてもらう機会も多くなった。

「全く見ず知らずの人からいろんな感想がどんどん届くっていうのは初めての経験だったので、すごくうれしかったですね」と話す大竹さん。これからの目標を尋ねると、意外な言葉が返ってきた。

大竹さん:
僕の場合は、目標とか抱負とかないんですよ。自分の場合はこういうものを作ろうって決めても、そのようにならないんですよね。だから朝起きて自分の中に作りたいという心、気持ちが起きてくるかどうかっていうかな。その連続ですね。あしたどうなってるかわからないっていうことの連続です

「作りたい」という思いが湧き上がる限り、大竹さんの創作は続く。

(テレビ愛媛)

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