教育・文化やスポーツなど、様々な分野で愛媛に貢献した個人や団体をたたえる「テレビ愛媛賞」。伝統和楽器・尺八の継承や製作、演奏活動を行っている尺八奏者の大萩康喜さんを紹介する。

尺八との出会いは大学の邦楽部

その音色は柔らかく、ふくよかに、そして時に激しく…。伝統和楽器・尺八の演奏家、大萩康喜さんが尺八と初めて出会ったのは、大学で入部した邦楽部だ。思う音色を奏でるには、一筋縄ではいかないその奥深さに夢中になっていった。

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尺八の楽器としての魅力について大萩さんは、「この楽器をやっていて吹くのも作るのもそうですが、全く飽きない。どれだけやってもやることがあるというか、奥が深すぎて一生やっても足りないんだろうなと思う」と話す。

尺八のとりことなった大萩さんの情熱は、卒業後就職しても失われることはなく、脱サラして自ら尺八製作を手掛けるために修行に身を投じ、2016年には独立して尺八工房慈庵を開いた。

尺八奏者・大萩康喜さん:
本当に消えていくような小さい音から、ものすごい息を使った大きな音を出せるというのは、楽器として洋楽器と全然対抗できるポイント。

幅広い活動の幹にある思い

2018年には(くまもと)全国邦楽コンクールで、最優秀賞の文部科学大臣賞を受賞。演奏家、指導者、そして尺八制作者としてその活動はますます輝きを放つ中、大萩さんの様々な活動には幹となっている、ある思いがあった。

尺八奏者・大萩康喜さん:
子どもたちが将来、音楽をやりたいという時に、尺八なんかも選択肢の中の一つとして入れてもらえるように、子どもたちに聞いてもらうっていうことはちゃんと取り組んでいきたいなと思う。

未来を担う子どもたちに尺八を知ってほしい

大萩さんは子ども向けに尺八を演奏するイベントに力を入れていて、筝(こと)奏者の妻・絵理さんと保育園を訪ね、子どもたちに和楽器に触れてもらう活動をしている。

イベントでは子どもたちの好きな歌を尺八で演奏したり、実際に本物の楽器を吹いてもらったりと、固い和楽器のイメージからはかけ離れた、楽しい雰囲気を演出するよう工夫している。

イベントに参加した子どもからの「どれくらい練習したら吹けるようになりますか?」という質問に、大萩さんは「先生は20歳の時に始めたので18年練習しました。でもね、一生懸命練習したからこそ、いいこともたくさんあったんよ。ひとつは奥さんと結婚できたということ。尺八吹いてたおかげで出会うことができたし、みんなも好きなことができたら一生懸命頑張ってみてください。そしたらきっといいことが待ってると思います」と答え、楽器を通して自分が得たことも優しく伝える努力をしているという。

尺八奏者・大萩康喜さん:
本当に色んなものをこの楽器に与えられた。日本の楽器なのに、日本人が知らないとかそういったのはすごくもったいないなと感じるし、それほどの楽器がなくなってしまうのは寂しいので、できる範囲で知ってる人を増やしていきたい。

尺八、そして和楽器がなくなってしまわないように

2024年に大萩さんは、妻で筝奏者の絵理さんと和楽器ユニット「悠久」としての演奏活動も始めた。

会場で演奏を聴いていた観客は、「和楽器はすごくおとなしいイメージがあったが、勇ましいというか飛躍的なイメージが伝わってきて、素晴らしかった」と話し、和楽器への印象を新たにしていた。

和楽器という日本古来から受け継いだ宝物。そんな大萩さんの真っすぐな思いは、ますますその音色を魅力的に彩っていく。

(テレビ愛媛)

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