長泉町にある小さな小さな私設図書館。電子書籍の市場規模が年々拡大している中で、なぜいま図書館なのでしょうか?
“オーナー制” 本棚の小さな図書館
静岡県長泉町納米里に佇む一軒の住宅。
ここは2025年1月に開館した「あみぃ図書館」。
運営しているのは永井博通さん(75)と陽子さん(70)夫妻で館内には書籍や絵本など約800冊が並んでいる。
特徴は本棚のオーナー制度。

誰でも月に1000円支払えばオススメの本を置くことができ、永井博通さんは「本棚にオーナーの個性が現れていて、人柄や空気感が本の背表紙を見たり一緒に話しをする中で深まって嬉しい」と話す。
現在、オーナーは10人。
そのひとりである横山綾香さんのスペースには自らが影響を受けた小説や育児に関する本が置かれている。

横山さんは「自分が伝えたいことや好きなことは発信しようとしても勇気がいるけれど、こういう場所があることで好きなものを置かせてもらって知らない人との交流になればうれしい」とオーナーとなった理由を明かす。
ところで永井さん夫妻はなぜこのような図書館を開いたのだろうか?
コロナ禍により状況が一変
元々はこの場所で着物とブライダルのサロンを営んでいた陽子さん。
着物のすばらしさを国内外に発信するため40年以上にわたって力を尽くしてきた。
「海外公演も何回もして着物は世界に誇る民族衣装で本当に誇らしいと思っている」と話す陽子さんだが、新型コロナウイルスが世界中に蔓延したことで状況が一変した。

当時を「その頃は一切人と会えない状態だった。お客さんにも迷惑をかけてしまうし、スタッフも身を守ってもらわなければいけないので」と振り返る陽子さんは、体調を崩したこともありサロンを5年前に閉店。
偶然目にしたニュースがきっかけに
こうした中、博通さんは本棚のオーナー制度を取り入れた図書館のニュースを偶然目にした。

そして、「誰よりも先に前に向かって歩く人で、僕はそのあとをついていくようなタイプ。妻の活発な生き方が僕を今日まで元気にさせたと思う」と新たな道を歩むことを決意。
図書館を開いて半年。
定期的に開いている朗読会や本の交換会に加え陽子さん手作りのスコーンやこだわりのコーヒーが評判を呼び、今では顔なじみの利用者も増えた。
利用者のひとりは「くつろぎながら絵本を楽しめる、本を楽しめる・選べる、ところが良い。二人の人柄だと思う」と話す。

また、子供と一緒に来ていた女性は「最初に来た時に仕事で疲れていたが『そこまで頑張らなくていいよ』と言ってもらえたような気がして、子供も連れてきてみようと思った。本棚がいっぱいあるから子供がすごく楽しんでいる」と満足げな様子だ。
夫婦二人の思いは…
コロナ禍を通して感じた人と人が触れ合うことの大切さ。
図書館の名前となっている「あみぃ」はフランス語で“友達”という意味を持ち、永井さん夫妻はこの場所を地域の人たちが親交を深められる場所にしたいと願っている。

陽子さんが「憩いの場として皆さんが集まってもらえるような、そんな図書館カフェにしていきたい」と口にすれば、博通さんも「ひとりで来てもいいし友達と誘い合って来てもいい。心に重たいものがあるような場合には一緒に寄り添える環境を目指しているので、若い人から年配の人までバリアフリーで来てもらいたい」と明るい表情を見せた。
(テレビ静岡)