教育・文化やスポーツなど、様々な分野で愛媛に貢献した個人や団体をたたえる「テレビ愛媛賞」。アメリカ・アラスカの大自然を撮り続ける松山市出身の写真家・松本紀生さんを紹介する。
アラスカを撮り続けて30年
アラスカの原野に輝く様々な命。時に荒々しく、時に神秘的な姿をカメラはとらえる。
この記事の画像(13枚)松山市出身の写真家・松本紀生さん(52)は1994年からアラスカの大自然を撮影し続けていて、その活動は2024年で30年目を迎える。
アラスカ写真家・松本紀生さん:
アラスカは、僕にとっては人生をかけるに足る対象。残りの人生ここにかけても悔いはないだろうと確信できている、そんなすてきな場所
松本さんは、生まれ育った松山を拠点に夏と冬の年に2回、単身でアラスカへ渡り、キャンプ生活をしながら撮影活動をしている。
夏は、様々な動物との出会いがある。
松本さんは「毎年、カリブーの大群を求めて通い続けていたけど、ようやく出会えた」「とにかくなるべく動かないように心の高揚を抑えながら冷静に撮ったつもり」「楽しかったですね」とカリブーに出会った当時の様子を振り返った。
極寒の世界で狙う“オーロラ”
一転、冬のアラスカは人を寄せ付けない極寒の世界に変わる。標高6000メートルを超える北アメリカの最高峰「デナリ」。その麓の氷河で松本さんはキャンプを張る。
アラスカ写真家・松本紀生さん:
これダウン、羽毛の防寒着なんですけど、僕の体に合わせて作ってもらった特注品です。一番寒い時でマイナス50℃を体験しました。もう体が痛くて怖くて。どうしていいか分からない緊張に全身が包まれている感覚
極限の環境と感覚の中で、松本さんが撮り続けているのがオーロラだ。
松本さんは「多分、僕にしか分からないと思うが、本当に心から腹の底から湧き起こるような、爆発するような喜びなんですよ。マイナス何十度の場所で何十日も待って、ようやく出たオーロラですから。叫びだしたくなるような喜びで全身が震えます」と話す。
そして、「自分は、冬の旅は楽しいとは思っていない。ただやりがいはものすごくあります。自分にとってとても大切な時間ですから、これからも絶対やり続けるつもり」と思いを語った。
アラスカの“声”を伝える
松本さんは長年アラスカを撮影してきた。今、現地では地球温暖化の影響でクジラの減少や村の地盤沈下が進むなど様々な異変が起きていて、松本さんは現地で取材を進めている。
「クジラが夏の南東アラスカにはたくさんいたんですけど、急激に減ってしまって。海水温の上昇が原因なんです。クジラ自体がどこかに行ってしまったのではなく、エサにありつけなくて数自体が減った」と話す松本さん。
「永久凍土が温暖化の影響でとけてしまって、家が傾いたり村が水浸しになったりして住むことができない村が何十もある。アラスカが温暖化の影響を受けて声を発してくれるうちになんとかしないと、地球全体で環境を守れなくなるんじゃないか」と警鐘を鳴らす。
松山市で2023年、松本さんのフォトライブが開かれた。松本さんはアラスカの魅力をフォトライブで伝えていた。
アラスカ写真家・松本さん:
写真をよく見ると左半分が青いでしょ。青いのは海です。そして真ん中あたりに白い部分が所々見えるのは雪とか氷河。アラスカが発している声をできるだけ僕が取材して、それを皆さんに伝えることで「みんなで考えて行動しよう」となれば。僕一人ではどうすることもできないので、いろいろな人に関心を持ってもらって、そのきっかけになればいいなと思っています
動物や自然、様々な命のつながりを通して、松本さんが伝えたいアラスカの今。人生をかけた旅はこれからも続く。
(テレビ愛媛)