大谷翔平選手の通訳・水原氏の解雇に際して、一部報道では20日の試合後にドジャースの選手やスタッフの前で“私はギャンブル依存症”と告白したという。
水原氏が約7億円をつぎ込んだという“違法賭博”。 なぜ止められないのか、なぜここまで莫大な金額をかけてしまうのか。
過去にギャンブル依存症に陥った人と、依存症の専門家に話を聞いた。
ギャンブル依存症からの脱却施設
東京・新宿区にあるギャンブル依存症からの回復を助ける施設、一般社団法人「東京グレイス・ロード」。

現在33人が入所していて、依存症から脱却するためにボランティア活動やミーティングを通じて自分と向き合っている。

施設の案内をしてくれた統括施設長・服部善光氏も含めて、スタッフ全員がギャンブル依存症経験者だ。

ーーギャンブルの種類は?
統括施設長・服部善光氏:
僕はパチンコ・スロット・ポーカーゲーム・カジノです。
家族とかからも借金したりとか、友人・知人とかそういうのも含めて2000万円を超えていると思います。(当時は)やっているということを言えなかった。
水原氏は米スポーツ専門チャンネル 「ESPN」の取材の中で、「自分で掘った穴から抜け出すために、もっと大きな賭けをしなくてはならず、負け続けた」と語っている。

統括施設長・服部善光氏:
ギャンブル依存症の当事者でギャンブル真っ最中の時って、ギャンブルで解決をしようとなってしまうんですよ。
ギャンブルが主軸になっているので、全てが。だから家族の関係だったり、人の関係だったり、お金のことだったりも(ギャンブルに)勝ってチャラになれば大丈夫なはずだと。そういう妙な期待が、ずっと頭の中にある感じですね。
水原氏にとって大谷選手は、共に海を渡ったいわば“盟友”。
そんな大切な信頼関係を壊す可能性があっても、なぜギャンブルを続けてしまうのか。
統括施設長・服部善光氏:
僕の近しい人のお金を取ったことが実際にあるので、その時はやってることに悪いという自覚は、ものすごくあるんですよ。
ただ、そこで出てた僕の思考が「これで勝って返せば大丈夫」と。悪い自覚すらも巧妙に入れ替えてしまうというか…。

服部氏は、38歳の時に始めた依存症からの回復治療を52歳の現在も続けている。東京グレイス・ロードでは、5年間で15人がプログラムを終えて退所している。
「LOST」という質問形式の検査も
米スポーツ専門チャンネル 「ESPN」の取材で水原氏は、「自分で墓穴を掘って、その穴がどんどん大きくなった。その穴から抜け出すために、もっと高額を賭けなければいけないことを意味し、ずっと負け続けた。雪だるま式だった」とギャンブル依存症を告白した。

このコメントについて、ギャンブル依存症の治療を行っている昭和大学付属烏山病院・院長で精神科医でもある岩波明氏はこう指摘する。
岩波明氏:
まさにギャンブル依存症の典型だと思います。自分の衝動をコントロールできなくなって、ギャンブルすること自体が生活の中心になっている状態だと思います。
ESPNの記事によると、水原氏のドジャース球団からの年俸が 30万ドルから50万ドル、日本円にして「4500万円から7500万円」と明かしている一方で、違法賭博に使った金額は少なくとも450万ドル、日本円で約7億円にもなる。
水原氏の収入がドジャース球団からだけだったのかは分からない、年俸の約10倍近くが違法賭博に消えていた可能性がある。
ーー高額になっても歯止めがきかなくなってしまう心理については?
岩波明氏:
負けを取り返すために、さらに高額のギャンブルにはまるというのは、依存症の典型ですね。
この背景には、最近オンラインのギャンブルが盛んになってきていることが挙げられるという。
岩波明氏:
オンラインですと、自分が持っている金額以上を容易に賭けることができてしまう。
ワンクリックで賭けられ、金が動いている実感がない。際限なくお金を賭けてしまう土壌があります。
ギャンブル依存症かどうかを判断する際に、「LOST」と呼ばれるスクリーニングテスト、質問形式の検査がある。
L(Limitless)は、予算や時間の制限がなくなる
O(Once again)は、勝ったときに「次のギャンブルに使おう」と考える
S(Secret)は、ギャンブルをしたことを誰かに隠す
T(Take money back)は、負けるとすぐ取り返したいと思う
このうち2つ以上当てはまったら、ギャンブル依存症の可能性があると言われている。
専門家「最終的に賭けること自体が目的に」
この「LOST」に関して、水原氏の発言から当てはまるものはあるのか?
岩波明氏:
O(Once again)についてははっきりしないが、L(Limitless)S(Secret)T(Take money back)については明らかに当てはまる。
ーーギャンブル依存症と言えそうか?
言えると思います。
最終的にはお金を稼ぐことよりも、ギャンブルすること自体が本人にとって目的化してしまう状態になる。
オンラインでの賭博だとしたら、家族や大谷選手をはじめ、周囲の人たちも気づきにくいのかもしれないが、岩波氏によると「なかなか難しいことではあるが、ご本人の様子が普段とどこか違うところが出てくると思う。例えば、殺伐とした感じであるとか、投げやりになっているだとか、昼夜のリズムがおかしいだとか…」という。
そして、ギャンブル依存症に対しての治療や対策については、 「基本的には自分が依存症であることを認識することが大切。アルコールや薬物と同じ」だという。
その上で病院で診断を受けて、グループ療法を受けたり、精神疾患であるならば投薬などの治療が必要」と指摘した。
(「イット!」 3月21日放送より)