好きな芸能人やスポーツ選手・キャラクターなどを愛でたり応援したりする活動いわゆる「推し活」は、応援などを目的にお金を使う消費形態として若い世代を中心に浸透してきている。長崎のプロバスケチームの熱狂的なファンである3歳ブースターの“推し活”に迫った。

保育園帰りに“推し活”

背中にBリーグ所属のプロバスケットボールチーム「長崎ヴェルカ」のマット・ボンズ選手がプリントされた上着を着て、長崎市内の保育園に迎えに訪れた塚本祐生さん、38歳。

この記事の画像(12枚)

父親の迎えを保育園で今か今かと待っていたのは、長男の将丸(ゆきまる)くん、3歳。自宅には帰らず、その足で向かったのは長崎ヴェルカの試合会場だ。

将丸くんは、今シーズンに長崎市で行われたホーム戦20試合をすべて観戦している長崎ヴェルカのブースターだ。

ーー将丸くんはヴェルカの誰が好きですか? 

塚本将丸くん:
ボンちゃん(マット・ボンズ選手)

お父さんお手製のユニフォーム
お父さんお手製のユニフォーム

将丸くんが着ていたヴェルカのユニフォームはお父さんの手作りだ。

父 塚本祐生さん:
息子のサイズがなかったので 自分が手縫いで作った。「アイシテル」の文字と息子の名前、好きな選手(マット・ボンズ選手)の5番を入れた。自分的には特に後ろがお気に入り

将丸くんの帽子には、大好きなボンズ選手からのサインも。

ーーボンちゃんからのサインをもらったとき、どうだった?

将丸くん:
すごい良かった

この日は平日開催のナイトゲーム。午後7時の試合開始から将丸くんは全力で応援した。

全力で応援する将丸くん
全力で応援する将丸くん

さすがに眠たくなる時間帯もあったものの、最後まで力の限りチームやボンズ選手を応援した。将丸くんの自宅を訪ねると、部屋には長崎ヴェルカのグッズがずらり。

自宅にはヴェルカグッズがずらり
自宅にはヴェルカグッズがずらり

父親の祐生さんは将丸くんが生まれた年に発足したヴェルカにはまって以降、好きだったお酒をぴったりやめ、息子との“推し活”を楽しむようになったという。祐生さんは、「息子には自分が体験しているものに対して、全力で楽しむことを忘れずに応援し続けてほしいと思う」と話す。

勢力拡大中「ヴェルカ推し」

ヴェルカのファンクラブ会員はB3時代の2530人から、4倍以上の1万1624人に急増(2024年3月13日時点)。“ヴェルカ推し”は勢力を拡大している。

ブースター:
ヴェルカ推しに使ったのは100万円近く。計算はしていないけど、そこは見ないようにしている

ブースター(小学生):
落ち込んだときにヴェルカのかっこいいプレーを見て、習い事や様々な場面で頑張れている

ほかにも「応援がライフワークの一環になっていて、選手の頑張る姿を見ると、仕事を頑張ろうと思える」と話すブースターもいて、”推し活“が日々の活力になっていることは確かなようだ。

長崎ヴェルカの今季のホーム戦は全ての試合が完売していて、声援を受ける選手たちも熱量の変化を感じている。

B3から在籍【エース】マット・ボンズ選手:
B3からB1を見てきて、ファンの数や声援が毎年大きくなっていると感じている。毎試合エナジーをファンからもらって、3年でここまで成長できたと感謝している

日本代表 馬場雄大選手:
感謝しかない。彼ら(ブースター)がいないと僕らは成り立たない。選手たちは感謝を込めて、当たり前じゃないんだと思いながらやっていかないといけない

推し活からの経済波及効果

好きなものを公言してやまない「推し」文化が長崎にも根付いてきたと経済の専門家は話す。

長崎大学経済学部 山口純哉准教授:
長崎は観光地なので、平和公園やグラバー邸など、景色に対する“推し活”があった。それにいまはヴェルカやサッカーのV・ファーレン長崎ができて、チームや選手への“推し活”が始まっている。長崎が大好き、スポーツチームが大好きという方がSNSでどんどん発信することで、長崎をプロモーションする役割も果たす。短期的にはお金が回るし、長期的に情報発信が行われ、観光客が増えるような効果があると思う

推し活の消費動向については、こんな調査結果もある。

応援グッズ販売やコンサルティングなどの事業を展開し、推し活を応援する「Oshicoco」が推し活女子約8000人を対象に行った調査では、「月に推し活に使う金額」は18~24歳は「3万円以上」が4割、「5万以上」も2割と、推し活にかける金額が大きいことがわかる。

「Oshicoco」では推し活と一言で言っても、単純に“アニメを見る”や“ライブに行く”といった行為そのものだけを指すのではなく、推しに会う日を目的に美容院に行くなどの「自分磨き」、2次創作のイラストを描くなどの「創作活動」など、“推しによって日々の生活がよりよくなる経験すべてが推し活”だと捉えている。

さらに、民間調査会社の矢野経済研究所によると、「推し活」と同意義ではないものの「オタク」文化の市場規模を発表している。例えば、アニメ市場は2023年度に2750億円、スポーツではプロレス市場は130億円などとなっている。長崎ヴェルカも発足して4年。プロスポーツを応援する“推し活”には、今後、経済効果への波及が期待される。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
テレビ長崎

長崎の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。