ディズニーリゾートのあの街も…　観光地で宿泊すると税金1人200円熱海市が「宿泊税」導入へ【静岡発】

首都圏からの観光客も多い静岡県熱海市ではホテルや旅館に宿泊した場合、1人1泊200円の「宿泊税」を徴収することを決めた。東京都など9つの自治体で既に導入していて、東京ディズニーリゾートのある千葉県浦安市も検討を始める。自治体は「より魅力的な観光地になるため」というが…。

観光産業への投資は発想の転換で

こうした中で注目されたのが宿泊税だ。宿泊税はホテルや旅館の宿泊客に課税される目的税（税金の使いみちが特定されている税金）で、宿泊客が支払った税金は宿泊施設の事業者を通じて納税され、自治体は観光振興に限って使うことができる。

熱海市は全国の観光地などと同じように、入湯税を徴収している。1950年からだ。入湯税は温泉の入浴客に課せられる税金で、日帰り入浴は1人1回につき、宿泊の場合は1人1泊につき、それぞれ150円だ（利用料金が1000円以下の方や12歳未満は免除）。

入湯税も目的税だが、熱海市の場合2022年の入湯税の税収約3億5800万円のうち観光振興に使われたのは約1億5100万円と4割に留まり、その他はごみ処理や消防に使われた。観光振興の財源を増やしたい熱海市の悲願が「宿泊税」だ。

斉藤市長は導入の理由について、「市民からいただく税金で観光産業の投資をするのではなく、お客様からいただく税金（宿泊税）で観光産業に投資して、お客様に還元する。考え方を変える」と発想の転換を強調する。

全国の9自治体で導入中

宿泊税は2002年に東京都が初めて導入した。東京都の場合、宿泊料金が１泊１万円以上の場合は100円、１万5000円以上の場合は200円が徴収される。
東京都の他、大阪府・京都市・福岡県・福岡市・北九州市・金沢市・長崎市・倶知安町（北海道）の全国で９つの自治体で既に導入している。

スキーリゾートなどで人気の北海道ニセコ町も2024年11月からの導入が決まった。
東京ディズニーリゾートがある千葉県浦安市も2024年４月から具体的な検討を始めると発表していて、導入の動きは全国各地で相次いでいる。

1人1泊200円は高い？安い？

熱海市の宿泊税に関する条例案は2024年3月14日の市議会で、全会一致で可決された。12歳以上の宿泊者に対して、1人1泊200円を徴収する。総務大臣の同意が得られれば2025年4月1日から導入する。

宿泊客に聞くと「いいと思います。熱海は宿泊税を払う価値があります」「熱海を盛り立てていくために必要なら取らざるを得ないのかな。魅力的な街なので払ってでも来たい。（200円なら）缶ジュース1本ちょっとだから、あまり大きな値段じゃないかな」と賛成の声が聞かれた。

一方で「あまり賛成しない。よく来るから（そのたびに徴収される）」と批判的な声もあった。
熱海の温泉旅館やホテルに一泊すれば入湯税150円と宿泊税200円を合わせて、1人350円の税金を徴収されることになる。

宿泊税の導入は2022年11月に市が財政審議会に諮問したが、宿泊税を徴収する宿泊施設などから「使いみちの説明が不足している」などと意見があり、市は1年かけて説明し、ようやく合意を得た。
熱海温泉ホテル旅館協同組合・森田金清理事長は「お客様にプラス200円いただくので、その意味合いはしっかり説明していきたい。“熱海にまた来たい”と思っていただけるようソフト面とハード面の充実を図っていきたい」と話す。

「日本をリードする温泉観光地に」

熱海市が観光にあてる予算はここ数年の平均で年約5億円。1人1泊200円の宿泊税（12歳以上）を徴収すると、年約7億円が得られることになる。
熱海市の税金担当者は「熱海の観光客数はまだコロナ前に戻っていない。マーケティングを強化して観光客のニーズをつかみ、PRを強化する。花火大会など人気のイベントをアップグレードする。雨が降っても楽しめる観光スポットも整備したい。海や山の新しいアクティビティも開発したい」と、使いみちに期待が膨らむ。