3月21日からカナダ・モントリオールで行われる世界フィギュアスケート選手権。

今回、女子からは3連覇を狙う坂本花織、今季四大陸選手権で初優勝した千葉百音、ショートとフリーで唯一トリプルアクセルを組み込む予定の吉田陽菜が出場する。

イザボー・レヴィト
イザボー・レヴィト
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そんな日本勢のライバルになってくるのが、アメリカ代表のイザボー・レヴィトだ。

去年の世界選手権で初出場ながら4位と躍動した。

3月3日に17歳の誕生日を迎えた彼女は、2022年世界ジュニアを制覇。その後全米女王に輝いたジュニア時代から満を持してシニアに上がり、2季目を迎える今シーズン。

日本勢との対決で、カギを握る存在を取材した。

器用な完璧主義者

アメリカ合衆国ニュージャージー州出身で、オンラインの学校に通う彼女は、3月3日に17歳の誕生日を迎えた。

プレゼントを渡すと大喜びしてくれたレヴィト
プレゼントを渡すと大喜びしてくれたレヴィト

『美少女戦士セーラームーン』のルナが好きだという彼女にプレゼントを渡すと、目を輝かせて喜ぶ、等身大の姿も見られた。

撮影時に笑顔でポーズを決めてくれた
撮影時に笑顔でポーズを決めてくれた

「初めての人だとシャイになる」と、氷の上では見せないあどけない表情で語る彼女に自身の性格について尋ねると、こう答えた。

「コーチや両親には、『頑固・感情を表に出す』『面白い』と言われるかな。

完璧でないと気が済まないことがあります。クロスオーバーが完璧でないと、自分が思うようにできないとすぐやめてはじめからやり直します」

取材の際、練習にも立ち会うことができた。

練習時、納得のいかない表情をするレヴィト
練習時、納得のいかない表情をするレヴィト

この日は自分が納得のいく滑りができていなかったようで、それを隠すことなくコーチにぶつける姿があった。

うまくいかない様子を隠すことなくコーチにぶつけるレヴィト
うまくいかない様子を隠すことなくコーチにぶつけるレヴィト

しかし練習をやめることはなく、何度もスピンやステップを入念に確認するなど、その姿は自身が語る“頑固さ”をまさに象徴するシーンだった。

さらに彼女の意外な一面を知ることができた。

「おばあちゃんみたいに聞こえるかもだけど」と照れながら、趣味だというクロシェット(かぎ針編み)について教えてくれた。

“速編み”で作ったキーホルダーを見せてくれた
“速編み”で作ったキーホルダーを見せてくれた

YouTubeを見ながら覚えたという“速編み”で作ったキーホルダーたちを見せてくれた。

仕上げたキーホルダーはリンクで販売しリンク代の足しに
仕上げたキーホルダーはリンクで販売しリンク代の足しに

2時間ほどで仕上げるというキーホルダーは、「リンク代の足しになれば」とレヴィトが拠点とするリンクで販売しているという。

レヴィトの素顔に迫ると、すべてが氷上で輝く彼女の魅力につながるようだった。

フィギュアスケートは自分の使命

「私はバレエもやっていました。5〜6歳の頃に母が『どちらかを選ばないと』と言い、私はスケートを選びました。

スケートをしているときは満ち足りた気持ちになります。ただ自分の場所だと感じ、自分の使命のように感じます」

3歳からスケートを始めたレヴィトは、その当時習っていたバレエよりも、フィギュアにのめり込むようになったという。

そんな彼女に自分の強みについて聞くと、「いい滑りができたときに、力まずに自然にやっているように見せられます。私の手足の伸ばし方はとても良く、全体的なスケートの力があると思います」と語る。

レヴィトの武器であるスピンはバレエが活きている
レヴィトの武器であるスピンはバレエが活きている

彼女の魅力である指先まで行き届いた繊細な動きや柔軟性を活かしたスピンは、フィギュアに打ち込みながらも週2、3回続けているというバレエからくるものである。

一方、軽やかで美しいジャンプも武器のひとつであり、高難度ジャンプを次々と決めるのが印象的だ。そんな中自身が一番好きなジャンプは「フリップ」だという。

「やった!という気持ちになるからですね。

なぜかは分からないですが、ただ好きです。うまくやれると満足度が高いです」

拠点でインタビューに応じてくれたレヴィト
拠点でインタビューに応じてくれたレヴィト

納得のいくまで練習し続ける完璧主義者でありながら、器用さをいかした繊細な表現力で氷上を舞うレヴィト。

ジュニア時代から頭角を現した彼女は、昨シーズンに満を持してのシニアデビューとなった。

自分のスタイルを活かすプログラムでリベンジへ

昨季シニアデビューし、そのシーズンのGPシリーズ2戦で2位に。

進出したファイナルでも2位表彰台となると、初出場の世界選手権で4位に食い込むという快進撃を繰り広げた。

しかし今シーズンは、GPシリーズ2戦に出場し、フランス大会で優勝したものの、再び進出したGPファイナルでは5位と低迷してしまう。そこで彼女はある決断に出た。

GPファイナルが行われた中国から帰国して2日後、急遽ショートプログラムを変更。

残りの試合をイタリアのオペラ『Nella fantasia』で挑むことを決意した。

シーズン中に変更したプログラムで世界選手権に挑む
シーズン中に変更したプログラムで世界選手権に挑む

「世界大会や国内大会のことを考えると、前のプログラムはしっくりきませんでした。それで変えようと決めました。

素敵な音楽で自分の世界観でスケートをするような、手足の伸ばし方や音楽の感じ方など、自分の持っているスケートのスタイルがこのプログラムでよく出ています」

その言葉通り、新ショートプログラムで挑んだ全米選手権は、自己ベスト更新の75.38点をマーク。確かな手ごたえをつかんだ。

いよいよ迎える2度目の大舞台。昨季から成長した部分について尋ねると、こう語る。

「自分のスケートがとてもうまくなったと感じています。

1年目の世界選手権で、すごく緊張していました。今は流れに任せられて、ジャンプもずっと楽になりました。

2度目の世界選手権はとても楽しみです。いいプログラムで滑る自分の力を信じています。すごく楽しいだろうし、競うのが楽しみです」

世界選手権の目標は「ミスのない演技と3位以内の入賞」と力強く答えてくれた。

去年からパワーアップした姿でリンクを舞う彼女に注目だ。

世界フィギュアスケート選手権2024
3月22日(金)男女ショートよる7時~
3月24日(日)男女フリーよる7時~
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班