同性同士の結婚を認めていないのは、憲法に定める「婚姻の自由」に違反しているとして、札幌高等裁判所が「違憲」判決を言いわたした。同様の同性婚訴訟で「婚姻の自由」にまで踏み込んだ判断は全国で初めてだ。

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■同性どうしの結婚を認めていない現状は、札幌高裁「憲法違反」と判断

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北海道に住む3組の同性カップルが起こした裁判で、法律上、同性どうしの結婚を認めていない現状について、札幌高裁は「憲法違反」という判断を下した。

「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項に反するとした判決は、全国で初めてだ。

原告 中谷衣里さん:望んでいた、待ちにまった違憲判決が出て、すごくうれしい気持ち。

原告 たかしさん(仮名):5年間やってきたんですけど、続けてきて本当よかった。ありがとうございました。

『同性どうしにも結婚を認めてほしい』
この裁判に込められた当事者たちの思い。

■“家族”なのに、法律上は“赤の他人”

北海道訴訟の原告で、教師として働く国見亮佑さん(仮名・40代)とパートナーのたかしさん(仮名・50代)。 たかしさんが料理を担当し、洗濯や掃除は2人で分担しながら、一緒に暮らすこと20年。

国見亮佑さん(仮名・40代):お互い、温泉とか旅行とかがすごく好きなので、一緒に行ったりはするよね。

“家族”として暮らしていても、直面するのは法律上の”壁”。

国見亮佑さん(仮名):将来的にどちらかが、パートナーが入院して、面会謝絶となった場合、『親族以外のあなたは、関係性がないから』、『法的なものが何もないから』、『あなたは”赤の他人”だから入れませんよ』と言われてしまう。

「法律上の家族」として認められ、安心して好きな人と添いとげられる世の中になってほしいと、裁判にのぞんでいる。

ほかにも…“家族”として認められない同性カップルは、子供がいても、共同親権が認められなかったり、どちらかが亡くなった後、遺産を受け取れなかったりする可能性があるのだ。

■「理解が深まっているが、同じ悩みを抱える若い世代はまだ苦しんでいる」

裁判に期待をよせるのは原告だけではない。
関西出身で12年間一緒に暮らす、平田金重さん(37)と勝山こうへいさん(41)。 同性愛者であることを明かせるようになったのは3年前。

勝山こうへいさん:同性婚という法整備がないことで、異性愛前提の、いわゆる『男女が結婚するのが当然』という空気感の中でずっと過ごしてきた。

2人がいま、気がかりなのは、同じ悩みを抱える若い世代のこと。

平田金重さん:理解は深まってきてはいるでしょうけど、講演会に行ったら、20代や10代の子が『家族から否定的に言われた』とか、『先生には言えない』とか、時代が進んでいるように見えて、子供たちは(同様に)苦しんでいる。

勝山こうへいさん:これ以上、特に若い世代の方たちには、同じような思いをさせたくないと強く思う。

理解を広げるために、法整備を求めている。

■全国初の画期的な判断 札幌高裁「婚姻の自由は同性カップルにも保障される」

「同性間にも結婚の自由を求める裁判」は、いま、全国5カ所で開かれている。

これまでの地裁判決では、“違憲”と“違憲状態”とする判決が2つずつ出されていて、14日、開かれた東京地裁の判決でも新たに”違憲状態”とされた。

そして、初めての2審判決として注目された札幌高裁の判決。

裁判長は、「婚姻するかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべき」として、「婚姻の自由は同性カップルにも保障される」と指摘。

これまでの一連の同性婚訴訟においては、合憲とされてきた「婚姻の自由」について違憲であるという全国初の画期的な判断を下した。

加藤丈晴弁護士:(高裁が)同性間の婚姻の自由というのも、異性間と同じように認められるのだということを明確に認めた。弁護団としても高く評価。

国見亮佑さん(仮名):もしかしたら、それほど進歩がない感じで、(これまでの判決を)踏襲してくるのかなと思ったら、思った以上の判決が出て泣いてしまった。ぜひこの司法の判決を、国会議員の皆さんも見ていただき、賢明な判断をしてほしい。

■菊地幸夫弁護士「『両性』という文字を一つ乗り越えた。そこに大きな意味がある」

判決の中身について見ていく。

今回の判決は法の下の平等や婚姻の自由などを定めた憲法14条、24条いずれも違憲とした。中でも今回の判決のポイントは、「婚姻の自由は同性カップルにも補償される」と初めて名言をしたという点。

札幌高裁の斎藤裁判長は「今の制度が婚姻の自由を定めた憲法24条1項に違反する」と判断した。

「同性間の婚姻の自由は、個人の尊重や重要な法的利益」、それから「人と人との間の、自由な結びつきとして婚姻を定め、異性カップルと同程度、保障される」とした。

今までの判決では「両性」というのは、男女という解釈であって、同性婚は認められていない。そこについて、婚姻の自由にまで踏み込んだ、今回の判断ということだ。

番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士は「憲法24条以外にも、14条は平等、13条は幸福追求が定められていて、平等・幸福追求は結婚についてストレートの規定ではない。結婚についてストレートに定めているは24条になります。24条1項にまさしく『結婚ってこういうもんだよ』って書いてあります。そこには『両性の』と明確に書いてあります。両性というのは、普通に読むと、男と女になります。それがネックになっていました。憲法は男と女の結婚しか認めてないじゃないかという。今回の判決はその『両性』という言葉があったとしても、同性同士もそれに含めると考えていいんですよという、その文字を一つ乗り越えました。そこに大きな意味があります」「今までは地裁の判決が多かったのが、今回、1段上の高裁までということです。今後も高裁の判決がさらに増えてくれば、いよいよ最後の最高裁も動かすことになるのか、その一歩になったということです」と、今回の判断を評価した。

■政府や国会を動かすため、国民は選挙に積極的に参加を

地裁の判決は合わせて6件出ていて、違憲が2件、違憲状態が3件、そして合憲が1件だ。

菊地弁護士によると、「違憲状態というのは、違憲まではいかないけれども、それに近い状態と見ていただければいいです」ということだ。

このように地裁でも判決は出ているが、なかなか政府や国会が動かないという状況だ。

関西テレビ 神崎博報道デスク:これまでの地裁の判決でも、国会にちゃんと法の整備をするように判決に書かれているんですけど、なかなか進んでいません。なぜかと考えると、法律を作る国会議員の意識がどうなのかというところが1つポイントです。実はFNNの世論調査では、同性婚を認めてもいいよという声が実は7割ぐらいあります。でも、なかなか立法措置が進みません。これは国会議員を選ぶのは国民ですから、国民が同性婚を認めてもいいのであれば、次の選挙で自分が投票しようと思っている候補者が、同性婚についてどう思っているのか、自分が進めてほしいと思うなら、同性婚を認める候補者に票を投じて、同性婚を認めるよっていう国会議員が増えれば法律ができてくると思います。選挙でどのように投票するか、そこにかかっていると思います。

今回の判断は司法からの強いメッセージになるのだろうか。立法が動くのか、本格的な議論が求められる。

(関西テレビ「newsランナー」2024年3月14日放送)

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