日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町)から打ち上げられた小型ロケット「カイロス」が発射直後に爆発し、打ち上げは失敗に終わった。

ロケットの破片などが周囲に落下し、発射場は一時激しい炎に包まれたが、けが人は確認されていない。

爆発の原因は何が考えられるのか。和歌山大学の秋山演亮教授に聞いた。

電気系のトラブルか

ーー打ち上げの様子は?

6キロほど離れたところで発射を見ましたが、打ち上げからしばらくして機体の中心辺りからオレンジ色の光が出てきたので、「これはダメだな」と思いました。

和歌山大学 秋山演亮教授
和歌山大学 秋山演亮教授
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異常を検知して破壊指令を自動的に出したと言うことかなと考えていました。

民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」(提供:スペースポート紀伊周辺地域協議会)
民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」(提供:スペースポート紀伊周辺地域協議会)

ーー失敗の原因は「軌道の逸れ」?

軌道が逸れた原因はわかりませんが、1つ考えられるのは誤作動です。

ロケットは、いろいろな要因で軌道がずれることがあります。
真っすぐ飛ぶために、カイロスの場合はスラスター(姿勢の制御や長時間・ゆっくり加速するためのエンジン・推進システム)が付いています。

ずれた軌道を修正するために、横方向スラスターなどさまざまな装置があり、それによって軌道を直します。

全長18メートルの小型ロケット「カイロス」(提供:スペースワン)
全長18メートルの小型ロケット「カイロス」(提供:スペースワン)

しかし、「これ以上ずれたら直らない」という限界があります。
自律破壊したということは、おそらく「これ以上頑張っても戻せない」と判断した可能性が考えられます。

そういう意味では燃焼系のトラブルではありません。

誤作動なのか、二段目に火が着いてしまったのか、軌道がずれた原因はわかりませんが、それは電気的、ソフトウェア的なトラブルです。

軌道が戻せないと判断

打ち上げを行ったスペースワンは会見を開き、経路がずれた場合などに自動的に爆発する「自律飛行安全システム」が作動したと説明した。

スペースワン・豊田正和社長
スペースワン・豊田正和社長

ーー軌道が逸れることはよくある?

ロケットを真っすぐ飛ばすことはとても難しいです。

風が吹けば横に行っちゃうので、普通は真っすぐは飛びません。
そのためにいろいろな方法で対策します。

カイロスなどのロケットは、横にずれた時に自分で姿勢を制御する機能を持っています。

発射直後の「カイロス」
発射直後の「カイロス」

軌道がずれることは普通のことなので、ノズルの方向を変えるジンバルや横方向スラスターで飛行中の姿勢を制御しています。

破魔矢みたいに頭を重くして後ろに羽根を付ければ空力安定で真っ直ぐ飛びますが、付けていないとふにゃふにゃと軌道が定まりません。

今回カイロスが自律破壊したのだとすれば、制御装置を使ってもずれが戻せないと判断したのだと思います。

爆発した「カイロス」
爆発した「カイロス」

ーー設計のミス?

以前に、超小型探査機「OMOTENASHI」が月着陸に失敗した時、異常回転を止めるように動かした装置が、プログラムの誤りでむしろ回転をさらに加速させてしまい、壊れたというトラブルがありました。

今回も設計上のミスの可能性もあり、これからの原因究明が待たれます。