13日、和歌山県串本町で、民間ロケット発射場から国内初のロケット発射が行われたが、直後に爆発して失敗に終わった。

■「とにかくびっくり」発射後5秒で爆発したから被害は最小限に済んだ

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ロケット工学が専門の大阪産業大学教授の田原弘一さんに聞く。

‐Q:打ち上げの様子を見たとき、率直にどう思いましたか?
大阪産業大学教授 田原弘一さん:もう、とにかくびっくりしました。もうそれにつきます。

‐Q:周辺が焼け焦げてしまっていますが、発射の設備には影響なさそうでしょうか?
大阪産業大学教授 田原弘一さん:山々が焦げているところもありますが、発射直後、5秒後に爆発モードを起動させたということで、被害は最小限に抑えることができたと思います。

‐Q:ロケットがもっと高い所で爆発していたとしたら、もっと被害が大きくなったということですか?
大阪産業大学教授 田原弘一さん:スペースワンの敷地外まで大きな被害をもたらしていた可能性はあります。だから5秒後ぐらいだったからこそ、まだよかったと。

スペースワンは原因を調査中と発表しているが、どんな原因が考えられるのか、見ていく。

■今回は失敗してしまったが、民間ロケット開発は「期待している」

まずは、小型ロケット「カイロス」について。

カイロスは、民間企業「スペースワン」の全長18メートル、重さは約23トンの小型ロケットだ。
依頼を受けてからの打ち上げ期間、最短1年という世界最短の期間を目指していて、これが達成されれば、世界最高の打ち上げ頻度になるということだ。

今回、打ち上げが成功すれば「日本初づくし」だった。
何が日本初なのかというと…
 ・民間ロケット発射場からの打ち上げ
 ・民間ロケットに政府の人工衛星を搭載しての軌道への投入
などが、日本初の試みであった。

日本の宇宙ビジネスにとっても大きな意義になるということだ。

大阪産業大学教授 田原弘一さん:今回は残念ながら、人工衛星を宇宙に運ぶことができませんでしたけれども、日本の民間企業がロケットを打ち上げるということは当然、日本で初めてのことです。ご存じの通り日本はJAXAのH3ロケットとイプシロンロケットを所有しています。日本は民間のロケットは持っていませんから、今回これが上がることができれば、もちろん日本初であったというのと、2030年には人工衛星を年に30回の頻度で上げようとしています。現在JAXAは種子島で年に6回、鹿児島で2回程度ですので、これが成功すれば、本当に日本の宇宙開発がもっともっと激しく盛んになって、世界中から人工衛星を受注することができ、非常に、日本全体が活発になりえるというところで、非常に期待しています。

今はまだアメリカの背を追っているという段階だ。

大阪産業大学教授 田原弘一さん:イーロンマスクが率いるスペースX社が、本当世界中を席巻している状況ですけども、それに何とか追いつけ、追い越せというところを期待しています。

■『自律飛行安全システム』がはたらいたから被害が最小限にとどまった

「カイロス」の打ち上げは、なぜ失敗してしまったのだろうか。

カイロスを開発した「スペースワン」は、会見でこのように話した。

スペースワン会見:リフトオフ、つまり打ち上げ5秒後に『自律飛行安全システム』が、飛行の中断を行った。一刻も早く原因究明をする。

自律飛行安全システムとは、どういうものなのだろうか?

大阪産業大学教授 田原弘一さん:なかなか聞き慣れない言葉ですけども、今までロケットに直接搭載されたのは、こういった小型のロケットでありません。ロケット自身が、自分の不具合を検知して、もうこのままいっても宇宙に行けない、『人工衛星を宇宙に運ぶことができない』と自分で自動で判断した時点で、すぐに中断するモードに入ります。今回は打ち上げから5秒後に、とにかく早く、自爆したような状況になりました。これで被害を最小限に抑えることができました。

■原因は一段目のロケットエンジンの不具合か?

安全システムがはたらかずに、もし打ち上げがうまくいっていたらどうなっていたのか。

打ち上げ後はこのような予定だった。

まず、第一段階として、約2分10秒後にロケットの下の部分が切り離され、次に約2分50秒後には上の部分が、さらに真ん中の部分が約4分40秒後に離されて、約8分後に真ん中の小さな所がはずされて、最後は約51分40秒後に液体燃料が切り離され、内閣官房の人工衛星1機を軌道に投入する予定だった。

今回は、最初の切り離しを待たずに、自律飛行安全システムが作動して爆発したということだが、その原因は何だと考えられるのか?

大阪産業大学教授 田原弘一さん:一段目のロケットの部分から、飛び上がっていたわけですが、5秒後に、(一段目のロケットの部分の)真ん中あたりで自爆システムを作動させたということです。一段目のロケットエンジンの不具合の可能性が高いと思います。考えられる不具合としては、本当にいろいろ考えることができますが、エンジンシステム部分の燃焼。激しく燃料を燃やしているのですが、その圧力があまり上がらなかったということを検知したと。そうすると推進力が全然出ません。宇宙には届かないと判断した可能性と、もしくは、姿勢を制御している噴射口の装置に何かトラブルがあって、それを検知したという可能性も考えられます。

■今回の失敗で目標の変更はない『失敗なんて、全然。すぐに改良すればいい』

「カイロス」のそもそものミッション計画を見ていく。

ミッション1:2019年11月、にロケット専用射場「スペースポート紀伊」が完成。
ミッション2:民間初の超小型衛星打上げ用ロケット「カイロス」の開発が完了。
ミッション3:カイロス初号機の打ち上げ準備が完了。

ミッション3までは達成していて、今回の打ち上げの位置づけは、カイロスによる人工衛星の軌道投入を目的としたミッション4にあたる。ここで今回は失敗したのだ。

今後、2030年代には年30回の打ち上げを目指している。

‐Q:今回の打ち上げ失敗で、今後のスケジュールにも影響はありそうですか?
大阪産業大学教授 田原弘一さん:当然ながら、数カ月から1年は遅れることになろうかと思いますけれども、ここで、しっかりと原因を究明して、改良を加えて、精度をもっと高めて、安全な打ち上げに次のぞんでほしいと強く期待しています。

‐Q:この失敗に何か蓋をする必要はないですか?
大阪産業大学教授 田原弘一さん:全然ないです。アメリカのスペースX社のファルコン9も、最初は失敗だらけですよね。でもイーロンマスクは『失敗なんて、全然。すぐに改良すればいい』と、まさしく日本もそれで行けばいいかと思います。

次回の打ち上げがいつになるかは分からないが、いつか必ず来るだろう成功の時を期待して待ちたい。

(関西テレビ「newsランナー」2024年3月13日放送)

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