前節、愛媛に勝利し、17年ぶりの開幕2連勝を飾った清水エスパルス。2023シーズンは開幕から7試合連続で未勝利とスタートダッシュに失敗しただけに、チームの成長を感じさせる結果となった。次節はアウェイで長崎との一戦だ。

開幕2連勝に沸いたホーム・アイスタ

2024シーズンを迎えるにあたってエスパルスが掲げたスローガンは「ONE FAMILY」。

首脳陣・選手・チーム関係者・サポーターが一丸となってJ1昇格を目指しているだけに、愛媛戦後の会見で秋葉忠宏 監督はホーム・アイスタでの勝利を大いに喜んだ。

エスパルスがホーム開幕戦に勝利したのは9年ぶり。開幕2連勝は実に17年ぶりのことだ。

2023年の悪夢を払しょくするために

シーズン開幕直後と言われて思い出すのは2023年。前評判はJ1昇格候補の筆頭に挙げられていたものの調子がまったく上がらず、5試合連続で引き分けた後に2連敗を喫し、前任のゼ・リカルド監督が解任されるに至った。振り返ってみれば、この7試合の低迷がシーズンの最後の最後まで尾を引いて自動昇格を逃し、プレーオフも敗退。

それだけにスタートダッシュの重要性はエスパルスが他のチームの誰よりも感じている一方、サポーターの中では同じ過ちが繰り返されないか心配する向きがあったのも事実だ。

しかし、今のところそれは杞憂となっている。

愛媛戦を前にして、秋葉監督は「選手の調子が良く、誰を使うか迷う」と話すなどチームとして好調を維持。

結果としてスタメンは第1節と同じで、控えも白崎凌兵と新加入の矢島慎也が入れ替わったのみとなったが、2023シーズンで計35試合に出場した主力級の白崎がリザーブに入れないほどに、チーム内の競争が激化している。

クラブの象徴・ユース出身選手の躍動

白崎が押し出された要因の1つとして挙げられるのが、新キャプテン・北川航也と同期で同じくユース出身・宮本航汰の活躍だ。自らのプレーについて「地味」と謙そんする宮本だが、運動量と献身性はチーム随一。開幕からの2試合は中村亮太朗とよい距離感を保ちつつ、相手のボールを奪い取る動きや縦へのスルーパスが光った。

一方、育成年代から宮本と苦楽を共にしてきた北川も存在感を十二分に発揮している。

清水エスパルス・北川航也 主将
清水エスパルス・北川航也 主将
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その北川は愛媛戦で先制ゴールをあげた際、2月に現役引退を発表したかつての盟友・ドウグラスのゴールパフォーマンスを披露。北川によれば「自分のサッカー人生に良いものを残してくれた存在」に敬意を表したかったからだという。

この試合、終了間際にもゴールを奪い2得点をあげた北川だが、「結果が出たことは自分にとってもチームにとっても良かった」と喜びつつ、満足することなく先を見すえた。

こうした下部組織出身選手の活躍にキーパーの権田修一は「伝統あるクラブの象徴で、我々にもプラスを与えてくれる」と目を細め、自らの好セーブを振り返りながら「試合後のインタビューを受けるのはこれが最後になれば…」と、キーパーではなく、フィールドプレーヤーの活躍が目立つような、強いチームへの成長を誓った。

清水エスパルス・権田修一 選手
清水エスパルス・権田修一 選手

秋葉監督は「まだ2連勝。開幕ダッシュとは言えない」と話し、浮かれた様子は微塵もない。

特に今後は次節の相手である長崎や大分などJ1の経験を持つチームとの対戦も控えていて、簡単にはいかないだろう。

それでも、攻撃の回数とバリエーションを増やして決定力を高めると同時に、リズムがつかめない時間帯に焦らずにボールを運ぶことなどを徹底すれば、チームが目指す“超攻撃的”“超アグレッシブ”なサッカーが具現化できるはずであるし、その先には2023年に見ることが出来なかった景色が待っているだろう。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

テレビ静岡
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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。