2024年2月25日。サッカー・Jリーグでは、東京ヴェルディ対横浜F・マリノスのシーズン開幕戦が国立競技場で行われた。

両チームが開幕戦で戦ったのは、Jリーグ発足の1993年に旧国立競技場で行われたJリーグ開幕戦以来。

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31年前の“国立でのJリーグ開幕戦”という歴史的カードの再現に、5万3026人のファンが詰めかけた。

試合は開始7分、東京ヴェルディの山田楓喜がFK(フリーキック)で先制。

長い低迷を乗り越え、16年ぶりにJ1昇格を果たした東京ヴェルディが、この1点を守りきって歴史的勝利かと思われたが、後半44分。横浜F・マリノスのアンデルソン・ロペスがPK(ペナルティキック)で追いつくと、アディショナルタイムには松原健が勝ち越し弾。横浜F・マリノスが2-1で劇的な逆転勝利をおさめた。

さらにこの開幕カードの話題性にけん引されるように、今シーズンのJリーグ開幕期(第1節、第2節)の入場者数総計はロケットスタートを果たす。

その数、68万3587人。2023年の57万6947人に比べて約10万人の増加を記録した。

「新しいJリーグの歴史に名を刻めた」

サッカーファンの注目を集め、スタンドに観客を呼び込んだ歴史的再戦に、選手たちや31年前のピッチに立った男たちは何を感じたのか。東京ヴェルディ主将・森田晃樹(23)はこう振り返る。

東京ヴェルディ主将・森田晃樹(23)
東京ヴェルディ主将・森田晃樹(23)

「きょうは本当に沢山のお客さんが来てくれて、そういう重みは感じていましたし、きょうの盛り上がりを見ても、やっぱりそういう歴史のある一戦なんだと思いました。僕たちは負けてしまいましたが、見ている方にとっては面白い試合だったと思います」

悔しそうな表情を浮かべながらも、森田は振り返った。

また、31年前の開幕戦に出場した元ヴェルディ川崎・北澤豪(55)は、今回はOBとして現地に駆けつけた。

1993年 開幕戦を戦う 北澤豪(ヴェルディ川崎)
1993年 開幕戦を戦う 北澤豪(ヴェルディ川崎)

超満員の試合を見届けたあとの帰宅中、北澤は感慨深げに語った。

「(ヴェルディが負けて)悔しいけど、試合を見ていて楽しかったですね。また次のステージを見ていきたいというか。それを期待させるような内容になっていたと僕は思います」

緑のジャケットで後輩の戦いを見守った
緑のジャケットで後輩の戦いを見守った

「また次の30年に向けてというか、そういった責任を現役の選手たちも持っていたと思う。試合を見ていて、すごく感心しました」

父から子へ継承された”開幕戦”への想い

一方、対戦相手の横浜F・マリノス。スタメン出場の水沼宏太(34)は。

「マリノス対ヴェルディが、また新しいJリーグの歴史に名を刻めたと思います」

横浜F・マリノス 水沼宏太(34)
横浜F・マリノス 水沼宏太(34)

「やっぱりJリーガーである以上、歴史をこうやって刻んで沢山刻んでくださった先輩たちのように、もっともっと盛り上がるJリーグを作っていかないといけないと思いました」

5万人の観客の前で勝利をおさめた水沼が口にしたのは、勝利の喜びよりも、先輩たちから引き継がれた”歴史の重み”だった。

その“先輩たち”の一人が、水沼の父で、元横浜マリノスの水沼貴史(63)。Jリーグ発足当時から、日本サッカー界の人気を支えてきたレジェンドだ。

1993年 開幕戦を戦う 水沼貴史(横浜マリノス)
1993年 開幕戦を戦う 水沼貴史(横浜マリノス)

31年前のJリーグ開幕戦で水沼はスタメン出場をはたし、当時3歳だった息子・宏太はスタンドで観戦。親子ともに、開幕戦には特別な思いを持ってこの日を迎えていた。

父・貴史は、今回の試合を実況中継の解説席から見守っていた。

OBとして 父として解説席から見守った
OBとして 父として解説席から見守った

「試合会場の熱量がやっぱりスゴかったですね。ファンの方々の“待ちわびていた”っていう想いかもしれない。そういう人たちが皆で作り上げた空間の中で、ものすごい試合をやっていたと思います」

元横浜マリノスのレジェンド・水沼貴史(63)
元横浜マリノスのレジェンド・水沼貴史(63)

「もちろん、ピッチで戦っている選手たちは(31年前とは)違うけれど、自分たちがやっていた時のことを本当に思い出して、『すごいことをやってきたんだなぁ、Jリーグの歴史ってここまで積み上がってきたんだな』とか、いろんな感情が出てきましたね」

日本サッカー初のプロリーグである「Jリーグ」。その最初の日のピッチに立った水沼貴史は、リーグ31年分の歩みに思いを馳せた。

1993年 当時の国立競技場
1993年 当時の国立競技場

同じマリノスの選手として国立競技場での開幕戦に臨んだ、“奇跡”ともいえる父と息子。偶然にも、試合の結末は31年前と同じく「マリノスがヴェルディに2-1で逆転勝ち」となった。

現役選手やOB、サッカーファンたちの31年分の熱い思いが詰まったJリーグ。その新たな歴史が、またこの日から始まった。

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