「中年太り」のメカニズムを解明したと名古屋大学の研究チームが発表した。さらに、大正製薬は内臓脂肪を減らす「市販薬」を開発。肥満に悩める人たちの“救世主”となるのだろうか。

■名古屋大学の研究グループが発表した「中年太りのメカニズム」

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世界肥満連合が公表している衝撃的なデータをあなたは知っているだろうか。
今後、対策が行われなかった場合、2035年には、世界人口の実に51パーセントが「肥満・過体重」になるという。そんな中、“救世主”になるかもしれない新たな発見が…。

名古屋大学・中村和弘教授:若い方っていうのはどれだけ食べてもなかなか太りにくいわけじゃないですか。年齢を重ねるとこれまでと同じ量を食べたらどんどん太ってくるわけですね。今回その肥満の非常に重要なメカニズムが明らかになった。

名古屋大学・中村和弘教授らの研究グループが発表したのが「中年太りのメカニズム」。

研究グループは脳内で代謝を促進したり食欲を抑えたりする物質をキャッチする神経細胞に注目。この細胞が加齢によって縮むことで、代謝が悪くなったり食欲が増えたりして、肥満につながることが分かった。中村教授によると、脂肪分が多い食事は神経細胞をより早く縮めて太りやすくなり、逆に食事量を制限すると細胞が再生することも分かったということだ。

名古屋大学・中村和弘教授:肥満とかその先にあるそういう生活習慣病ですよね、そういったものを未然に防ぐ予防医学ですね。予防を促進するような上で非常に重要になんじゃないかな。

京都市内の肥満症外来のあるクリニックでは、患者それぞれにあった薬の処方や栄養指導など、健康的に痩せるための治療を行っている。

患者:運動したいけど雨が続くと…。
先生:ちょっと動けるようになっていく必要があるかな。

50代の患者は体重が増えてから腰や膝に痛みを感じ、肥満症外来を訪れたということで、クリニックの田中院長によると患者は30代から60代ぐらいまでの中年・中高年世代が多いという。

六角田中クリニック・田中紀寛院長:内臓脂肪型肥満になりますと、このように腹壁の中に赤く見えているのが脂肪ですが、内臓脂肪の方がやはりそのいろんな各種疾患を起こしやすいというふうに言われております。高血圧とか糖尿病とか脂質異常症とか睡眠時無呼吸症候群とかですね、あるいは心臓疾患とかもそうですし肥満に伴う肝障害も最近深刻な問題になっていますね。

内臓脂肪型の肥満によって引き起こされる合併症の数々。これを未然に防ぐための「市販薬」が誕生した。

大正製薬の会見:日本初、おなかが太めな方の内臓脂肪減少薬でございます。『アライ』2024年4月8日に全国発売致します。

開発した「大正製薬」によると、新薬「アライ」は食事中の脂肪の吸収を抑制して、便と一緒に排泄することで内臓脂肪を減らす効果があるとされる。

■内臓脂肪を減らす薬 医師の処方箋は必要なく、薬局で購入可

対象は18歳以上の成人で、腹囲が男性は85センチ以上、女性は90センチ以上、生活習慣の改善を行っていることなど購入の条件はあるが、医師の処方箋は必要なく、薬局で購入できるということで、4月に販売が開始される。

街の人たちは:ええがな、ええがな~。せやけど(おなかを触って)88センチメートル以上やったっけ?(Q:85センチメートル以上です)85センチメートル以上!いけるわあ(笑)。

街の人たちは:はずかしい人もいるのではないかと思いますけど。レジのところで腹囲を測られたら女の人はちょっとはずかしい。

街の皆さんも気になることいろいろあるようだ。そこで、肥満の専門医に新薬のメリット・デメリットを聞いてみた。

■「肥満」と「肥満症」は似て非なるもの

2035年には世界人口の半分が太りすぎになるという 衝撃的なデータもあるわけだが、 肥満の専門家に聞く。日本肥満学会の理事で神戸大学大学院・医学研究科教授の小川渉さんだ。

LINEでアンケートを取ったところ、肥満度を表すBMI:25 以上の「肥満」だという人は57%となっている。内臓脂肪を減少させる新薬「アライ」。これまでの薬と何が違うのか、副作用のリスクはどうなのか、この辺りを詳しく聞いていきたい。まずは知っているようで知らない肥満の基礎知識から。

人の肥満度を表すBMIでは、日本では男性の32.6%、女性の19.9%が 肥満に該当するそうだ。これは増加傾向なのだろうか?

神戸大学大学院医学研究科 小川渉教授:成人男性は過去20年以上は増加傾向、女性は横ばいかやや減少。

「肥満」と「肥満症」という言葉があるが 実は似て非なるものなのだ。「肥満症」というのは、肥満による「高血圧」や「糖尿病」など11種の健康障害、または内臓脂肪が蓄積している状態のこと。悪さをしているのは皮下脂肪ではなく内臓脂肪ということだ。

神戸大学大学院医学研究科 小川渉教授:脂肪は2つ種類があります、皮下脂肪は増えてもさほど健康障害につながりませんが、内臓脂肪は増えると皮下脂肪以上に健康障害につながる恐れがあります。

そして、小川教授によりますと日本人は内臓脂肪が蓄積しやすい体質だそうだ。そんな中で注目されているのが薬局で買える大正製薬の「アライ」という薬。発売されるのは4月8日からで、価格は90カプセル30日分で8,800円。摂取した脂質の25%排出が期待され、内臓脂肪面積が21%も減ったというデータもある。

■内臓脂肪を減らす薬 体重減に加えてん糖尿病の発症率が31%も減ったデータも

実は海外では1997年から使用されていて現在100カ国以上で承認・販売されている。スウェーデンのデータでは、 体重減はもちろん糖尿病の発症率が31%も減ったそうだ。「アライ」は これまで販売されている脂肪を減らす薬とは違うのだろうか?

神戸大学大学院医学研究科 小川渉教授:このお薬は、脂肪が吸収される時にはリパーゼという酵素によって一旦分解されて、分解されてから吸収されるんですが、そのリパーゼを阻害することによって、食べても脂肪が吸収されなくなるというメカニズムのお薬です。医薬品として発売されている国もあるぐらいで、医薬品として発売されるためには非常に質の高い医学的検証を受けないといけません。なので、そのような医学的検証を受けているという薬ということで、今までの市販の漢方薬や漢方薬の抽出液みたいなものが入っている薬とは、検証の質が違うことが言えます。

医師の処方箋は必要ないが、薬剤師の対面販売で使用条件にあてはまらないと売ってもらえないということで、なぜ誰でも買えるようにしなかったのだろうか?

神戸大学大学院医学研究科 小川渉教授:1つはこれ、作用もありますが、副作用もあります。そういうお薬ですので、やはりこのお薬は、副作用に上回るメリットのある人が飲んでいただく必要があるということがまず大事ですね。

ただ、副作用などのリスクも気になるところだ。 大正製薬が発表している副作用だが、 服用後は「おならをすると便が漏れる」「気が付かないうちに肛門から油が漏れる」そうだ。臨床試験ではこうした消化器関連の副作用が40.9%みられたという。

副作用を減らすためには、脂肪分の多い食べ物を減らすなどの対策が必要としている。アライの製品説明にも「ビタミン吸収が減るおそれ」という話もあるが、薬のメリット・デメリットどこまで気にした方がいいのだろうか?

神戸大学大学院医学研究科 小川渉教授:食べた脂肪が吸収されなくなる薬ですので当然それは便に出てきます。そういう意味では、便にたくさん油が出ると下痢のような便になったりして、そういう症状は副作用ではありますが、実際に薬が効いてるということの裏返しでもあります。そういう意味でこのお薬は効果が目に見える薬だという風に言われる場合もあります。

視聴者から LINEでこんな質問が届いた。

‐Q:薬の服用をやめた時すぐにリバウンドする可能性は?
神戸大学大学院医学研究科 小川渉教授:これは食べても食べた脂肪が吸収されなくなるということですので、薬をやめると食べた脂肪が、薬を飲む前と同じように吸収されます。そういう意味では、この薬をのむことによって食生活などを変えるキッカケにして頂けたらいいのでは…と思います。

‐ Q:副作用が強い人と弱い人、傾向はあるのか?
神戸大学大学院医学研究科 小川渉教授:体質などもあるかもしれませんが、やはり脂肪をたくさん取られていると、脂肪が便に出て副作用が生じやすくなるという風に考えられてます。そういう意味で、薬を飲むことで脂肪摂取を減らすキッカケになりうる薬ではないかなという風にも思います。

(関西テレビ「newsランナー」3月7日放送)

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