奈良県立美術館の観覧料がSNS上で議論になっている。

美術館によると、常設展示の観覧料は一般個人が400円、大学・高校生250円、中・小学生が150円だ。しかし、外国人観光客は無料となっている。長期滞在者や留学生も無料だ。また特別展の観覧料(現在行われている特別展は一般1200円)も同様に、外国人は無料だ。

父母と小学生の子ども2人の4人で特別展を鑑賞する場合、日本人なら4000円かかるが、外国人なら0円。

豊洲市場では豪華な海鮮丼が話題に
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円安などの影響で相対的に外国人が「豊か」になり、外国人観光客をターゲットとした1万円前後の海鮮「インバウン丼」などが話題になるなか、外国人を優遇する料金体系について、不満の声が上がった。

日本人差別?

7日朝にSNS上にその事実が流れると、「県民ではなく外国人優先!?」「日本人差別」「外国人に媚びすぎ」など、怒りの声が多数寄せられた。

また、「外国では外国人対応に費用がかかるから、自国民より高い値段設定するのは聞いたことがあるけれど、外国人料金を自国民より引き下げるばかりか、無料にするなんて」という驚きや、「無料なのは外国人に来てほしいからやろなあ…大阪や京都に来ても奈良までは行かなさそうやもんね」との声もあった。

16年前から外国人は無料だった

そこで奈良県立美術館に「外国人無料」について聞いてみた。

常設展示の観覧料無料については、奈良県の「減免取り扱い要領」に基づき、2008年に始まり、2014年には特別展の観覧料も無料にしているという。

無料にした理由は、奈良県が当時、外国人観光客の誘致に力を入れていたからと説明した。ただ、無料によってどのくらい外国人観光客が増えたのかは「わからない」としている。

そこで担当する奈良県の文化振興課に聞いてみたが、この無料制度を使って美術館に行った外国人の数は「把握していない」という。無料制度がどの程度外国人観光客を誘引したのかの、その効果検証は、全く行われていなかった。

奈良県を訪問する外国人は増加していた
奈良県を訪問する外国人は増加していた

なお奈良県のホームページによると、2014年には66万4000人だった奈良県の外国人訪問客が、2019年には349万5000人にまで増えている。この時期は日本全体の外国人訪問客が右肩上がりで増えていたので、奈良県でもほぼ同じペースで増加していた。

他の県立施設も…

なお、県の「減免取り扱い要領」に基づく無料措置ということなので、別の県立施設について調べてみると、奈良県立の橿原考古学研究所附属博物館も観覧料は大人400円だが、外国人観光客は無料となっている(永住・定住外国人には適応されない)。

万葉文化館も外国人無料
万葉文化館も外国人無料

さらに、奈良県立民俗博物館も一般200円の観覧料が外国人旅行者・留学生は無料、奈良県立万葉文化館も通常は有料の展覧会観覧料が、外国人観光客は無料となっていた。

県は「外国人無料」見直し検討

今回SNSで取り上げられた事から、美術館や県庁にも意見や問い合わせが寄せられているという。ネット上での「日本人差別ではないか」という声について、県は「日本人と外国人を区別していることについて、ご指摘をいただいた。貴重なご意見として捉える」と話した。

奈良県は外国人無料を続けるのか検討するとしている
奈良県は外国人無料を続けるのか検討するとしている

その上で、無料措置を継続するかについては、「問い合わせやご意見をいただいているので、そこは検討も必要かなと思っている」「変えるつもりはありません、とは言いません。情報を共有し、課内で検討する」と述べ、今後外国人無料措置をどうするか検討するとしている。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。