今年で芸歴50周年を迎えた関根勤さん。

関根さんの人生をひもとくと、キーワードの一つが「笑い」だという。

娘・関根麻里さんを育てる上でベースにしてきた関根さんの個性的な育児論を『関根勤の嫌われない法則』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。

たくさんの「笑い」を提供

僕自身の経験からしても、幼少期の影響はとてつもなく大きいと感じます。

子どもの頃の僕はいつも笑っていたし、友だちも笑っていたので、プロになっても「笑ってもらう」ことがすごくうれしくて、頑張ることができたのだと思います。

自分の子どもも、そんな楽しい環境でまっすぐ育ってほしい。そして、周囲を明るくできる人間になってほしい。

そう思った僕は、麻里が生まれる前に、当時流行していたアメリカ発のものから日本のものまで、子育てや幼児教育の本をたくさん読んだものです。

その中に「父親は娘のために何ができるのか」というタイトルの本がありました。

子どもに「辛い」と言われたら、まずは「そうだよね」と共感する。

その上で「でもそれは、これから起こるであろう退屈なことへの準備なのだ」と伝える。この文章には特にピン!ときましたね。

だから僕は、麻里が「授業がつまらない」と言い出したとき、まずは「わかる!」と共感しました。

しかもその共感は、学生の頃に勉強が嫌いだった自分自身の実体験から発せられているので、かなりの説得力を持っていたと思います。

「笑い」は人格や性格に影響を与える

勉強は大事。でももっと大事なのは、社会の荒波に耐えられる精神を養うこと。

そのためには、子どもの頃にたくさんの会話を重ねて、悩みや疑問に対してきちんと説明してあげなくちゃ。

そしてまっすぐな大人になってもらうためには、たくさんの笑いを提供して楽しい思い出を作ってあげなくちゃ。

笑顔と楽しい思い出をつくるという信念で子育てしたという(画像:イメージ)
笑顔と楽しい思い出をつくるという信念で子育てしたという(画像:イメージ)
この記事の画像(3枚)

僕はそういう信念で、子育てをしてきました。

「三つ子の魂百まで」ということわざがあります。

これは「3歳頃までに人格や性格は形成され、100歳までそれは変わらない」という意味です。

幼児教育もいいでしょう。

でも人格や性格によい影響を与えるのは、やっぱり「笑い」ではないかなと僕は思うのです。

笑って不快な感情をリセット

関根家では、冷静沈着でクールなタイプの妻が、母親として基本的なしつけやマナーなどを麻里に教え、父親の僕は「笑い」を提供するという教育方針でした。

それはもう、毎日狂ったように麻里と一緒に遊んで笑わせていました。

例えば、学校で友だちとのイザコザがあった。先生と何となく気まずくなった。

でも家に帰ったらお父さんとお母さんがフォローしてくれて、お父さんはいつも寝る前のルーティーンでバカなことをやってくれたから、すごく楽しかった。

すると、すべての不快な感情がリセットされて、翌日はまた爽やかに登校できるわけです。

ところが、帰宅しても両親との会話もなく、楽しいこともなく、逆にガミガミ言われてもっと気分が落ち込んだり、イラだったりしたら、翌日までその不快な感情を持ち越してしまいます。

そんな状態で、学校に行って誰かと肩がぶつかったら、「何よあんた!」と言ってしまったり、ごめんと言われても「フン!」という態度をとってしまうかもしれない。

すると今度は、その相手が不快になってしまう。

「不快の輪」を広げない人間に

そうしてどんどん「不快の輪」が広がっていく。自分の娘を、その発信源にしたくない、そこで「大丈夫だよ」と笑って返せる子どもになってほしい。

そんな思いで僕は毎日、麻里が持ち帰った不快感を笑いですべて吸収し、リセットすることを心がけました。

無言でも相手を緊張させたり、気を遣わせる人っていますよね。

「麻里ちゃんが来ると、何だか空気が暗くなるんだよね」ではなくて、「麻里ちゃんが来ると、楽しくなるね」と言われる人間に育てたかったんです。

だからもう、バカなことばっかりやって遊んでいました。

とにかく眠る直前まで、僕は全力で麻里を笑わせていたのです。

『関根勤の嫌われない法則』(扶桑社)
関根勤
関根勤

1953年8月21日、東京都港区生まれ。お笑いタレント、コメディアン、俳優、歌手、司会者。1974年、日本大学在学中に出演したTBS『ぎんざNOW!』の「素人コメディアン道場」で5週連続で勝ち抜き、初代チャンピオンとなる。以降、50余年に渡り多くのバラエティ番組や舞台、ラジオ等で活躍。好感度の高い普段の姿とは別に、1989年から主宰する舞台『カンコンキンシアター』ではナンセンスな「裏関根」の顔も見せる。旧芸名はラビット関根。娘はタレントの関根麻里。