娘の関根麻里さんに幼少期からたくさんの「笑い」を届けてきた関根勤さん。
人生において「笑い」「想像力」「共感力」をキーワードにしてきたという。
そんな関根さんの独特な“子育て論”を『関根勤の嫌われない法則』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。
子育て経験はビジネスにも役立つ
僕は麻里が子どもの頃、とにかく毎日全力で一緒に遊んでいました。
自分の時間のほとんどを、麻里に捧げていたといっても過言ではありません。
でも世間の男性はきっと、同じことはできないと思う。
だって皆さん、忙しいでしょ?
麻里が生まれたとき、僕は31歳で、『欽どこ』のクロ子とグレ子の収録が週1回、あとはカックラキンの収録が2週に1回、コサキンのラジオは週1回でしたがスタートが深夜1時。
つまりカックラキンがない週は、『欽どこ』の収録だけなので、すごくヒマだったんです。
だからずっと娘の相手をすることができたし、学校の行事もすべて出席していました。
仕事が忙しくなったのは、40歳くらいから。麻里が中学生になった頃にピークを迎えたので、ちょうど親が要らなくなる頃でした。
中学1年や2年になると、ディズニーランドにも友だちと行くようになって、「やっと解放された!」と思ったものです。
毎日が多忙なサラリーマンは、「育児休暇」なるものを会社に申請するそうですね。
でも「休暇」って、何だか会社をサボっているみたいに聞こえませんか?
だから僕は、「育児研修」という名称に変更すればよいと思っています。
育児経験は人間としても成長できる
育児って、特に最初の1年間は猛烈に大変。でもさまざまな経験を通して、人間的にも大きく成長できる好機でもあります。
それほど大変なことですから、育児研修を終えて会社に復帰したら、地位が上がるくらいにしておけばいいと思います。子育てを経験すれば、部下に対しての扱いもうまくなるはずです。
会社で揉まれるよりも育児を経験したほうが人間的に成長できるだけでなく、子どもとの関係も奥さんとの関係もうまくいくようになります。すると離婚率も少なくなるでしょう。
産んで育てても、愛を知らない子どもになってしまったら、世の中がダメになっちゃう。だから僕は、すべての子どもにまっすぐ育ってほしいと願っているのです。

そのために必要なのは、やはり「三つ子の魂百まで」理論。
子どもが生まれてから1年間は「育児研修」として有給扱い、そこから先の2年間は子育てのために会社を早退しなければならないというルールを作ってほしい。
そうやって3歳まで子どもと一緒にいて愛情を注げばかなり違ってくるでしょうし、そこからは保育園にも行けますからね。
育児休暇を使って資格を取ろうという男性も多いそうですが、その気持ちはわからなくもありません。
要するに自分が出世することによって、家族が経済的に豊かになるだろうという発想ですよね。
確かに子育てはお金がないと始まらないという面もあるので、難しい問題です。国がもっと潤って、子育てにお金を十分割いていただければいいのですが。
僕の理想論を言うと、世界中が武器を捨て、戦争や防衛にかかる軍事費を子育て支援や育成に充てればいいと思っています。将来を担う子どものために、家庭だけは「安全地帯」にしたいものです。
娘の選択に反対したことはない
麻里の人生における選択について、僕は一切反対したことはありません。
インターナショナルスクールに進学した時点で留学は覚悟していたので、心配ではありましたが快く送り出しました。
仕事に関しては、以前から『世界ふしぎ発見!』のリポーターをやりたいと言っていたので、芸能界入りを決めたときも反対などせず、ダメならダメで他にも選択肢があるから好きなことやればいい、という思いでした。
恋愛や結婚についても、インターナショナルスクールの影響で世界中から結婚相手が来る可能性を考えていましたから、ミュージシャンのK君と付き合い始めたときも心から応援していました。
願わくば少しだけでも日本語がしゃべれる相手がいいなと思っていたのですが、K君は日本語がペラペラだったので助かっています。
僕は、麻里が生まれてから中学生になるまでガッツリ遊び、たくさん会話を重ね、性教育まで施してきたので、すべて「やり切った」感がありました。
だからK君にも本当に気持ちよく、「私は育て上げました。やりきりました。次はあなたですよ」と、バトンを渡すことができました。
共に過ごして気持ちよく送り出す
父親として、麻里には普通の女のコみたいに彼氏ができて、デートして…という楽しさを味わって、青春を謳歌してほしいとずっと思っていたので、やっと彼氏ができたときはとてもうれしかったし、結婚式も全然悲しくないし、うれしかったし、楽しかったし、泣かなかったですよ。
愛犬が死んだときは泣きまくりました。
それにすぐ近所に住むことになっていたし、国際結婚なので名前も変わらないし、K君が仕事のときは実家に来るだろうし…むしろ結婚して喜ばしいと思ったものです。
よく娘に「一生結婚しなくていいよ」「彼氏に会ったら殴ってしまうかも」なんて言うお父さん、いますよね。
なぜ世のお父さんは、そんなふうになってしまうのか?
子どもがまだ幼い頃、お父さんたちはおそらく20代30代くらいなので、ちょうど脂が乗り始める超多忙期を迎えているわけです。
朝食を一緒に食べて、日曜日にちょっと出かける…頑張ってもせいぜいそれくらいしかできませんよね。

それから40代50代くらいになってやっと落ち着いてきたところで、「娘との思い出を作ろう」となったときには、もう彼氏にバトンが渡っていたりするわけです。
つまり、共に過ごした時間が少なく、子育てをやり切っていないんですね。
「ちょっと待ってくれ。俺にはまだ娘との思い出がないよ!」という焦りの気持ちが、「嫁に行かなくていい」とか「彼氏を殴る」なんていう言動に表れてしまうのでしょう。
でもきっと、これが世間一般的なことで、僕の場合はかなり特殊なのだと思います。
だからね、やっぱり「育児研修」と「育児早退制度」が必要なんです。せめて3歳まで一緒に過ごしておけば、子どもを気持ちよく送り出すことができると思います。
ちなみに心理学者によると、いわゆる「ダメンズ」ばかり選んでしまう女性は、お父さんがダメ人間なのだそうです。
「ダメな父親だな」と反抗したり拒絶したりしながらも、心のどこかに「ごめんねお父さん」という気持ちがあるから、お父さんと似たような人を選んでしまうのだとか。
僕とK君の顔はまったく違いますが、お互い末っ子で、彼のお父さんが警察官、うちは消防士なので、育った環境が似ているのだと思います。
