「関根さんの悪口を聞いたことがない」「嫌いな人は芸能人にひとりもいない」と言われるほど慕われている関根勤さん。
今年で芸歴50周年を迎えた関根さんが、これまでの芸人人生をひもとく『関根勤の嫌われない法則』(扶桑社)から“仕事現場で心掛けていること”について、一部抜粋・再編集して紹介する。
みんなで気持ちよく仕事をする
現場で心がけていることがあります。
それは「みんなで一緒に気持ちよく仕事をする」ことです。
出演者だけでなくスタッフも全員、気持ちよく仕事ができればいい番組が作れます。
それがひいては高視聴率に繋がって、番組が長く続いていくと考えているんです。
例えば、メイン司会の人が扱いにくい性格だったり、ゲストが天狗になっている人だったりすると、フロアにいるAD(アシスタントディレクター)さんは非常にストレスフルになりがちです。
そこを強く意識しているわけではないけれど、僕は空き時間にADさんとずっとしゃべって、バカなことばっかりやってきました。
そんなふうに接してきた人の中には、番組のメインプロデューサーにまで上りつめた人もいます。
彼とは今でも仲良く付き合っていますし、僕の劇団の旗揚げから30年以上、毎回観劇してくれています。
でも僕は別に、彼が偉くなりそうだと踏んで仲良くしていたわけではありません。
ただみんなが楽しく、面白く、仕事をしてほしいと思っていただけです。
平成元年に自分の劇団を起ち上げてからは、若手芸人や今ひとつくすぶっている芸人がどうしたらウケるか、どうすれば輝かせられるかということも考えるようになりました。
他を活かして自分を活かす
例えば事務所の後輩、「キャイ〜ン」の場合。
彼らは『いいとも!』でようやく世に出ることができたのですが、そこで僕とタモリさんが話し込んでしまうと、若手だからなかなか入ってきづらくなってしまいますよね。
だからウド君や天野君に話を振るわけです。すると視聴者に彼らの面白さが伝わるだけでなく、番組がバランスよく出来上がるから、視聴者は「また観よう」と思うわけです。
僕はテレビが大好きでいつも観ているので「この人は前に出すぎているな」「つまんない話をしているな」「偉そうだな」など、視聴者として捉えたことを反面教師にしているところがあります。

つまり番組に出演する側でも、常に視聴者の立場を考えるわけです。
そうすると「関根勤のことはもう何年も見ているからわかっている」「あれ?後ろになんか面白い人いるじゃない?もっと見てみたいな」ということが見えてくるのです。
目先のことや、自分がウケることだけを考えるのではなく、番組全体がウケることを常に俯瞰で考えることは、番組の存続という点において重要です。
番組が続いていく中で、数回に1回面白いことをバーンとやって、時々視聴者の印象に残ればそれでいいんです。
要は「他を活かして、自分を活かす」なんですよ。
20代の頃は余裕がなくて、「とにかく何かやらなきゃ生き残れない」と、自分のことしか考えられませんでした。
その考えが変わったのは、今思えば娘の麻里が生まれた頃だと思います。親になると、それまで我慢できなかったことも我慢できるようになるんですよ。
劇団の座長になったことも大きな要因のひとつでしょう。舞台で若手たちをどう活かせば面白さが伝わるのかと考えるようになったことは、かなり刺激になりました。
おかげさまで、「キャイ~ン」も「ずん」も、スターになりました。
ただ「ずん」の飯尾君の場合は、あまりにも地味だったので途中でちょっとあきらめかけたこともありましたが何とか踏みとどまり、粘りに粘ってついにブレイクしたという感じです。
