今年で芸歴50周年を迎える関根勤さん。
「関根さんの悪口を聞いたことがない」「嫌いな人は芸能人にひとりもいない」と言われるほど慕われている。
そんな関根さんが芸人人生を楽しくひもといている著書『関根勤の嫌われない法則』(扶桑社)から、視点を変えて見るべき“劣等感”について、一部抜粋・再編集して紹介する。
劣等感は「幸せをつかむ種」
先生や親、友だちの心ないひと言で、劣等感をこじらせてしまう人も少なくありません。
僕の場合は、モノマネをしたら大爆笑してくれる友だちや、バカなことばっかりやって笑い合える友だち、何より勉強ができなくても叱らない優しい両親がいて、「ここは大丈夫だよ」という場所があったので、幸いにも劣等感をこじらせずに済みました。
そうした「救いの道」とか、「勉強はできないけれど笑いは取れる」といった「別の道」があれば、劣等感がトラウマになってしまうのを防げるのではないでしょうか。
余談になりますが、女性と男性では記憶力に差異があるそうです。

例えば男性なら、恋人と些細なことでケンカになったときに女性から「あなた、3年前もこうだったでしょ!」と言われたことが少なからずあると思います。
男性にとって、昔のことを引っ張りだされて怒られるのは理不尽で、耐えられませんよね。
しかし、医学的な知識がなかったとしても、僕は妻のすべてを受け止められます。
なぜなら彼女は、「モテない末にようやく結ばれた女性」だからです。隣にいてくれるだけで、最高のご褒美。だから理不尽なことも何のその、なのです。
そう考えると劣等感というやつは、こじらせさえしなければ、逆に「幸せをつかむ種」になって、いずれ花を咲かせてくれるのではないかと思うのです。
小さな挫折経験は別の「救いの道」に繋がる
一般的に親というものは、自分の子どもにはなるべく劣等感を持たせたくないと思うあまりに、「転ばぬ先の杖」を用意しがちです。
親心としては理解できます。
しかし、転ばないとわからない痛みもあるし、次はどうしたら転ばないかと自分で考えることもできるわけで、学ぶところはたくさんあると思うのです。
ところが転ぶ前に杖を出してしまうと、そうした絶好の経験や機会を奪ってしまいかねません。
僕は、若い頃に小さな挫折を経験することこそ、必要であると思っています。
小さな挫折を経験することで、自分の長所を発見できればそれが「救いの道」となり得るし、挫折をバネにして「別の道」が開ける可能性だってあるのです。
僕も学生時代は小さな挫折だらけの毎日でした。赤点は取るし、校則を破っていつも昼休みに「キッチン中村」のビーフカレーを食べに行っていたし…。
それでも僕には、バカなことをやって遊べる友だちや、心優しい両親がいたし、何より「笑い」という武器がありました。
「成績が学年トップのヤツより、オレのほうが絶対に面白い!」
そんなふうに思うことで、小さな挫折を乗り越えてきたような気がします。
痛みを乗り越えて、自分なりの道を見つけられるかもしれない。
そして僕のように、想像力と共感力を養えるかもしれない。
それでいいじゃない?
小さな挫折、大歓迎。そんな気持ちでいてほしいなと思います。
