2023年5月に生産者や食品製造業者、大学の関係者が集まり動き出したプロジェクト。宮崎県内産小麦の生産に向けて様々な業種が手を組み、県産小麦の活用に踏み出した。
減少した生産量…認知度も上がらず
2024年1月に宮崎市で開かれたイベントで振る舞われたのは、全て県産の食材で作られたギョーザとパンだ。県のローカルフードプロジェクトの一環で、様々な業種が協力し、新しいビジネスを生み出そうという取り組みである。
この記事の画像(15枚)身近なところでよく使われている小麦はほとんどが外国産で、自給率はわずか15%。県内での小麦の生産量は、1965年には2万4,300トンあったが、この年をピークに激減し、現在は300トン前後で横ばいとなっている。
生産量が少ないため、宮崎で収穫されても製粉される際に他県産のものと共に「九州産」として出荷される。「宮崎県産」の認知度が上がらないのが実情だ。
県産素材でつくる商品開発 難点も
そこで、県産小麦を使った商品を開発しようと立ち上がったのが、食品製造業を営む佐藤友紀さんとベーカリーショップを営む弟・彰洋さんだ。
友紀さんが作るのは、オール県産のギョーザだ。県産素材を追求したギョーザの皮を作るのは難しい中で、小麦と米粉を混ぜ、普通の皮とは少し違うもちもち食感を目指す。
南九州大学・矢野原泰士准教授:
食感という意味では、配合するものを変えることによって改良はできると思う。
ラディッシュ・佐藤友紀専務:
宮崎の素材は魅力的なものがたくさんあるので、それを100%詰め込めたら良いと思う。
彰洋さんはパンを担当する。試食会の日、複数のベーカリーショップが試作品を持ち寄った。県産小麦のパン作りには難しい点があるという。
アシェンテ・佐藤彰洋代表取締役:
(外麦はブレンドされて)品質において安定している。県産は生産者の顔が見える小麦だが、その年の気候などに品質が左右されてぶれやすい。それに合わせた作り方をしないといけない。
試作を重ね、味や食感のバランスをつきつめたパンについて、小麦生産者の井野義美さんは「最高においしい。みんなが食べてくれるとやりがいがある」と評価。
生産者の思いを乗せて消費者へどう広めていくか、プロモーションの方法も模索が続いた。
「事業者が使うことで需給が回転する」
そして1カ月後、試作を重ねてきたギョーザとパンを初めて県民に食べてもらうイベントが開かれた。
ギョーザの皮は小麦と米粉の配分を調整し、少し透き通った特徴のある皮が完成した。具材はもちろん、調味料も全て県産。さらに、たくあんを作る時に出る切れ端も入っている。
イベントに参加していた人たちからは、「(ギョーザの)皮がおいしかった。(いつも食べているものと)違う」「(県産と外国産で作ったパンを食べ比べて)宮崎県産がおいしかった!宮崎県産の方が食べた時に香りがして、とてもおいしかった」などの声が上がった。
アシェンテ・佐藤彰洋代表取締役:
自分たちが食べているものが何で作られているのかをひもといてもらって、その中に小麦粉はすごい量が入っているので、そこを1%でも10%でも代えてもらえると(県産小麦が)広まっていくのかなと思う。
毎年毎年(品質の)違いを楽しんでもらえるような、ボジョレヌーボーのような小麦の楽しみを見いだしてほしい。
ラディッシュ・佐藤友紀専務:
僕ら事業者が積極的に使っていくことで(需給が)回転するし、農家も作る気になるので、そこを進めていきたい。
一歩踏み出した県産小麦活用プロジェクト。
このギョーザとパンは今後、宮崎市内の店舗で販売され、商品数を増やして消費拡大につなげたいとしている。
(テレビ宮崎)