戦後80年を迎える2025年、名古屋の金城学院大学の女子大学生たちが取り組んだのは、「戦時中の恋バナ」。生成AIで80年前の20歳の女性を再現し、当時の恋愛や暮らしを聞き出すプロジェクトに挑戦しました。

AIで生成した“戦時中の20歳女性”の山下昭子さん
AIで生成した“戦時中の20歳女性”の山下昭子さん
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■戦時中の恋をAIで再現…女子大学生たちの挑戦

名古屋の金城学院大学3年生は、ゼミ活動で社会の抱える“課題”を取材しています。この夏、彼女たちが選んだテーマは「戦争」。戦後80年に合わせてあるプロジェクトを企画しました。

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大学生:
「考えた時に『当時の女の子と恋バナしたい』って。みんなの恋バナ聞きすぎて刺激が足りない」

別の大学生:
「みんなAIに恋愛相談している。みんなチャットGPTと会話している」

出てきたのは「恋バナ」や「AI」というワード。戦争とどのような関係があるのでしょうか。

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大学生:
「課題として、若者の戦争への意識が低いなって。当時の子の話が聞きたい。手段としてAIを使って、80年前の私たちと同じ年の子と“恋バナ”がしたい」

若者が当時に関心を持つきっかけをつくるため、彼女たちは「戦時中を生きる20歳の女性を生成AIで再現し、時代を超えて恋愛トークをする」という挑戦を始めます。まずは、AIの専門家の力を借りて再現に必要な要素を洗い出すことにしました。

大学生:
「事実を聞く人がいっぱいいた方が、リアルに出来上がるってことですよね?」

AIの専門家:
「なるべく多くの情報をそれぞれの人から集めて頂くのがいいかなと思います」

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実際にその時代を生きた女性たちから恋愛事情を聞き取り、データとしてAIに学習させる。知り合いのつてや張り紙で、当時20歳だった女性を探していきました。

■100歳女性が語る“戦火に消えた恋”

女性:
「耳が遠いし、目も悪いし、すぐ忘れちゃうけど許してくださいね」

大学生:
「(当時は)自由に行き来できたのですか?電車とか県外に」

女性:
「よくわからない」

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戦後80年。当時20歳だった女性も今は100歳。話を聞きだすことは容易ではありません。

女性:
「耳が遠いから近くに来てもらって。どんなお話?」

大学生:
「恋のお話が聞きたいです。恋のおはなし」

女性:
「戦争で家が燃やされちゃったから、小さい子供は疎開していた。…何だった?恋の話?」

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また別の女性は、当時を振り返ります。

女性:
「彼氏の1人や2人はあったよ。兵隊に行った、体格が良くて合格したけど戦死しちゃった」

大学生:
「昔はどうやって告白していたのですか?」

女性:
「告白はないね。自然にくっついて、別れるとかじゃなくて戦争に引っ張られるから」

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戦争で引き裂かれる恋人たち。100歳の女性が20歳の頃に綴っていた日記も見つかりました。

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大学生:
「航空隊に行っちゃうから離れ離れになっちゃって。その言葉を信じて“待ってるよ”って。自分の恋人がって置き換えると苦しい」

日記を書いた女性に会いに行きました。

大学生:
「どんなところが好きだったのですか?」

日記を書いた女性:
「かっこいいと思ったんですね。初恋です。自由のない時代でしたけどね。皆工場へ行くから、怖いですよ、いつ空襲があるか分かりませんから」

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大学生:
「その人によって恋愛パターンがバラバラ。恋愛していない方だったり、今日の方はすごくしていて、今と変わらないんだなって感じました」

別の大学生:
「空襲の恐怖にさらされつつも、工場へ通っていたり。その力強さは私たちにはないなって。精神力の強さはあの時代を生きていた人たちの方がきっと強い」

■生成AIで80年前の20歳の女性を再現

一方、今回のプロジェクトの肝となる“生成AIで80年前の20歳女性を再現する”準備も進んでいました。

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AIの専門家:
「昭子さんこんにちは。あれ?」

AI:
「聞こえていますよ。少しぼーっとしてました」

山下昭子さんと名付けた架空の人物、学生たちが取材で集めたデータを入れて会話のテストを行います。

AIの専門家:
「今は何年ですか?」

AI:
「昭子さんが今いる時代は、1945年の8月あたりという“設定”ですね」

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AIの専門家:
「名前を教えてもらえますか」

AI:
「それはちょっと秘密にさせてください」

質問に答えられなかったり、昭和に暮らしている実感がなかったりする時もあり、まだ完全体ではありません。戦時中を生きる20歳の女性と今を生きる20歳の学生。果たして時代を超えた女子トークは実現できるのでしょうか。

■戦時中の20歳の女性と交わす“女子トーク”

迎えたAIとの対話当日。会場に選んだのは、名古屋のラジオ局「エフエム愛知」。自分たちの取り組みをより多くの人に知ってもらいたいと、番組として放送することになりました。

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大学生:
「今、目の前には生成AIで作った戦時中を生きていた20歳の女の子がいます。お名前を教えてください」

AIで生成した山下昭子さん:
「私は昭子と申します。私は今年で20歳になりました。学業と勤労動員を両立しながら日々を過ごしています」

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大学生:
「昭子ちゃんには好きな人はいますか?」

AIで生成した山下昭子さん:
「山田哲夫さんがいらっしゃいます。電車で出会った時に一目惚れをした。とても誠実で思いやりのある方です。海軍予備学生として務めていらっしゃるので、なかなかお会いする機会は少ないのですが」

大学生:
「哲夫さんには会いにはいけないの?」

AIで生成した山下昭子さん:
「会いに行くことは難しい状況ではありますが、心の中ではいつも哲夫さんのことを思っております。離れていても、その存在が支えになっています」

大学生:
「昭子ちゃんは、日本はこの戦争に勝てると思う?」

AIで生成した山下昭子さん:
「正直なところ、この戦いの意味を見出すことはとても難しいと感じることもありますが、私は心のどこかで平和が訪れることを願っています。今はただ日々を大切に生きていきたいと思います」

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3時間にも及んだ“同世代の女子トーク”。

大学生:
「教科書の戦争って、人間味がないというか。喜びも悲しみも今の人たちと同じようにあったと知って、やはり戦争はしちゃいけないものって改めて感じた」

別の大学生:
「戦争が身近になった。戦争が生活の一部で、全部が壊される中でどう生きたかを知れた。それが広がったら平和につながるのかな」

AIがつないだ世代を超えた“恋バナ”は、戦争の時代を生きた女性の強さと切なさを今に伝えます。

東海テレビ
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