クマの出没や人身被害が全国で増える中、長野県は大量出没した際に新たに「警報」を発令する方針を示した。県は原則、人や農作物に被害を与えたクマ以外は、捕獲しても駆除せずに人の怖さなどを学ばせて山に返す「学習放獣」を行っているが、「警報」が出たときは捕獲・駆除を優先させるとしている。
全国で相次ぐクマの被害
2023年度、全国で相次いだクマの目撃や人的被害。長野県内でも1月末までに前の年の倍近い1401件の目撃があった。
人身被害は11件12人に上り、2023年10月には飯山市でわなにかかったクマに襲われ、男性が死亡する事故も起きた。
この記事の画像(5枚)こうした状況を受け、県は専門家などとクマ対策を検討している。
2月13日の会合で県が示したのが、大量出没した際、新たに「警報」を発令すること。発令した場合、捕獲・駆除を優先させる。
「学習放獣」長野県は全国最多
県は原則として、人や農作物に被害を与えたクマ以外は、捕獲しても駆除せずに人の怖さなどを学ばせて山に返す「学習放獣」を行っていて、その数は全国最多となっている。
ただ、県が「警報」を発令した場合は「学習放獣」をいったんやめ、捕獲・駆除を進める。
また、イノシシやシカなどのわなにかかる、いわゆる「錯誤捕獲」されたクマは放獣することになっているが、警報発令の際は駆除の対象にするとしている。
大量出没時は捕獲・駆除優先の方針
県鳥獣対策室長は、「餌付いてしまって再出没を繰り返し、人身被害の恐れが高まってしまうんだろうと。学習放獣は戻る山に餌があって初めて成り立つもの。山に餌がない大量出没時は学習放獣を一時休止するというのはやむを得ない部分がある」と話した。
「警報」を発令する基準はこれから検討するとしているが、出没数や山に木の実がどれだけなっているかなどを総合的に判断するという。
なお、これまで通り、人とクマとのすみ分けの徹底や「学習放獣」は行っていく方針で、2023年度中に対策をまとめる予定だ。
(長野放送)