富山市で建築用機械や注文住宅を手掛ける丸和。日本の少子高齢化を理由に、新たな市場としてカンボジアへの進出を決めた。しかし最初に始めたのは、日本語学校の立ち上げ。住宅や建築機械の販売よりも先に人材育成に力を注ぐことにした。住宅メーカーと全く関係のない分野かと思いきやひたむきに頑張るカンボジアの人たちに貢献したいと取り組んでいるうちに家づくりにつながる、壮大なプロジェクトに発展していった。

住宅ではなく“まち”をプロデュース

・カンボジア文化芸術省のエク・ブンタさん。
カンボジア文化芸術省のエク・ブンタさん。
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日本の大学で日本文化を学び、両国の友好の懸け橋として活躍している。​

丸和 林俊成社長(左) エク・ブンタさん(右)
丸和 林俊成社長(左) エク・ブンタさん(右)

カンボジア人と共に歩もうとする丸和の社長、林俊成さんの姿に感銘を受け、あるプロジェクトに推薦した。

カンボジア文化芸術省 エク・ブンタさん:
「丸和は家づくりのノウハウをたくさん持っていて、さらにカンボジアの文化を理解しようとしていた。丸和の利益だけではなく、カンボジア人の暮らしにも有益になると思った」

プロジェクトの舞台は、首都・プノンペンから約100キロ、カンボジア中部にあるコンポンチュナン州。

敷地面積約250ヘクタールとなるこの土地で、まちづくりをプロデュースしてほしいという壮大なプロジェクトが舞い込んできた。

“里山を活かしたまちづくり”をテーマに現地の建設会社から依頼を受け、まち全体の設計を手掛ける。

これまで分譲住宅などを手掛けてきた丸和にとって、これまでにないスケールの大きい挑戦となる。

成功へ 世界的な建築家が協力

暮らしぶりを知ろうと、徹底的な現地調査に取り掛かった。

丸和 河内利成さん
丸和 河内利成さん

丸和 河内利成さん:
「今回のプロジェクトは、何もないところからインフラもつくっていく。地域の人たちも楽しみにしてくれていると思う」

丸和のスタッフは何度も現地を訪れ、時には宿泊させてもらうこともあるほど住民との触れ合いを大事にしてきた。

ここで暮らす人々のために、良い街をつくりたい。成功に向けて、世界的な建築家にも協力を仰いだ。

富山市のTOYAMAキラリなどを手掛け、富山ともゆかりの深い、隈研吾さんだ。

隈研吾さん:
「丸和の林社長から声をかけていただいて、まず富山とつながりがあると思った。富山も里山が美しいし、水もきれい。コンポンチュナンも水と里山の美しい場所。このつながりを生かしたら面白いプロジェクトができると思い、引き受けた」

一年にわたる現地調査を経た、2023年2月。そのプランが完成した。

「水」と「緑」が美しいまちへ

                    

既存の池を利用して湖を作り、寺院や農場、ホテルなどを建設し、観光地としても魅力的なエリアに。

ごみのリサイクルやバイオマス発電施設の建設も盛り込み、持続可能なまちを描いた。

住宅メーカー丸和が得意としてきた機能的な家づくりと自然を生かしたデザインが融合した、独自のアイデアだ。

完成したプランをもとに現地の建設会社が工事を進め、2027年ごろの完成を待つ。

丸和 林俊成社長:
「我々の中で使命をいただいた仕事だと思っている。これからも最後まで走り続けたい」

2023年12月上旬。

カンボジアの首都・プノンペン郊外の農村部に林さんの姿があった。

丸和 林俊成社長:
「ここに住みたい。ここに住んだら楽しい生活ができるというような、そういう街づくりをコンパクトでもしてきたい。決して富裕層に向けるのではなく、いろんな人がチャンスを持てる家づくり、誰もが取得できるような家を作っていきたいと思っています。」

今度はこの場所でまちづくりを行い、設計から施工まですべてを手掛けようとしている。

丸和 林俊成社長:
「その道は険しいからいろんなことがあると思うし、しっかり良いものを作っていきたい」

このほかにも住宅のリフォームや2校目となる日本語学校の立ち上げなど、カンボジアに貢献できるビジネスを加速させている。

11の国がある東南アジア。総人口は6.7億人。ASEAN・東南アジア諸国連合ができた1967年、230億ドルだったGDPは今や約3兆ドルと100倍以上に達している。世界から東南アジアに熱い視線が注がれる中、富山の企業はどのような戦略で挑むのか。発展が著しい東南アジアで奮闘する県内企業を紹介する。

(富山テレビ)

富山テレビ
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