カンボジアの首都プノンペンは、いま建設ラッシュ。都市化が進められている。その一方、都市部と農村部の経済格差は大きくインフラ整備もこれからとなっている。1970年代はポルポトの独裁政治や内戦で経済が停滞したが、生活が安定してきた今、人々の暮らしは改善されている状況だ。そんな発展途上の国で、壮大なプロジェクトに挑む富山の住宅メーカーがあった。
伸び悩む日本の住宅需要

カンボジアを流れるメコン川にかかる大きな橋。
ベトナムからカンボジア、そしてタイまでつながる交通と物流の大動脈だ。
名前は「スピエン・ツバサ」、つばさ橋。

ODAによる無償協力で、日本が建設したもので、紙幣にはこの橋と日の丸が描かれるなど両国の結びつきは深く、2023年、外交関係樹立70周年を迎えた。

富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター長 鎌田慶昭さん:
「ASEANで50周年、インドネシアで65周年ということで、カンボジアっていうのはインドネシアよりもっと前から国交を結んでいるんですよね。そのくらい日本と関わりの強い国であるにも関わらず、これまであまり注目されてなかったんです」

そんな親日の国で、新たなビジネスに乗り出したのが富山市の住宅メーカー・丸和だ。

もともとは木材加工用の機械メーカーとして創業したが、住宅需要の増加によって、家づくりに舵を切り成長してきた。

丸和の社長、林俊成さん。
日本の少子高齢化が加速し、住宅需要が伸び悩むなかビジネスチャンスを求めたのが東南アジアだ。
丸和 林俊成社長:
「日本市場をターゲットにしたビジネスを展開するのではなく、国際的なビジネス展開が必要なのではと強く思った。」
目をつけたのは、カンボジア。
そこには一人の富山県民の存在があった。
人との出会いで生まれた新ビジネス
首都プノンペンで大使館などが立ち並ぶ、バンケンコンエリア。

なかなか予約が取れない高級和食料理店・雅楽では、シロエビの唐揚げやブリしゃぶなど富山のメニューが味わえる。

この店のオーナー、米陀安弘さんは黒部市の出身。
もともとは富山県内で複数の飲食店を経営していたが、新たな土地で挑戦したいと、9年前、家族でカンボジアに移り住んだ。
雅楽 米陀安弘オーナー:
「富裕層の客はだいたい日本に行ったことがあるので、日本で美味しいものを食べてカンボジアへ戻ってきたら、また日本のおいしいものを食べいたいというニーズがある」

古くから米陀さんと親交のあった丸和の社長、林さん。
どの国に進出するか思い悩むなかで、カンボジアを勧められた。
雅楽 米陀安弘オーナー:
「国も自分たちも成長できているというのは肌で感じることができるので、非常に刺激的で楽しい。もしカンボジア進出を考えている人がいれば、どんどん出てきてもらえればいいと思う」
先輩からのアドバイスもあり、カンボジアで事業を展開しようと決めた。
首都・プノンペンで建設ラッシュが続く中、建築用の機械を販売しようと乗り出したが、予想外の事態が待っていた。
舵を切った人材育成ビジネス
丸和 林俊成社長:
「建築用の機械を一番最初に持ってきて勝負をかけようと思ったけれど、初日でまだこの国には早いと判断できたので諦めました。カンボジアでそのビジネスをするのは。米陀さんがすべて起点になってプノンペン大学の先生を紹介してもらって、『人材のビジネスをやりたい』と言っていたので、会ったその日にやりましょうと始めましたね」
国内の労働力不足を背景に、もともと海外での人材育成にも関心があった林さん。
2019年7月、日本語学校を立ち上げ、人を育てる分野で進出を始めることにした。

学校では、日本で実習生として働きながら技術を学びたいと集まる若者に語学や文化を教えている。

JCHR日本語学校 ホーヴォッナーさん:
「今まで150人を日本に送りました。日本の生活はとても良いので、みなさん行きたがっている」
偶然始まった、ビジネスとしての人材育成。
ひたむきに学び、何事にも一生懸命なカンボジア国民に魅せられ、いつしか、林さんの向き合い方に変化が生じていた。

丸和 林俊成社長:
「自分だけが儲けてやろう、我が社だけを残すためにこの国でやろうという考え方だけでこの国で成功できるとは途中から思わなくなってきて、この国に対してどれだけ貢献できるかということを常に横に置きながらやらないと自分の利にはならない」
現地の人たちに貢献し、ともに歩みたい。
林さんの取り組みが、新たな出会いを生み、家づくり、そして、壮大なプロジェクトへとつながっていくことになる。
11の国がある東南アジア。総人口は6.7億人。ASEAN・東南アジア諸国連合ができた1967年、230億ドルだったGDPは今や約3兆ドルと100倍以上に達している。世界から東南アジアに熱い視線が注がれる中、富山の企業はどのような戦略で挑むのか。発展が著しい東南アジアで奮闘する県内企業を紹介する。
(富山テレビ)